000(01.5),南の街 前日(没)
南の街に着く1日前。
「金が、、、ない。」
そんなエルフのスオウの声にスオウの右耳についている耳飾りが嘲笑うように問うてきた。
「どうしたんだい、少年?財布の中を見て急に悲嘆的な顔になったが?」
いつもの事なのでスルーして耳飾りの問に答えた。
「金が無いんだよ、お金。」
「お金か〜まあ街に着く前に気がついて良かったね〜」
「ソウダネー。どうしようかー」
スオウの塩対応で飽きたのか、耳飾りは普通に解決案を話してきた。
「今持っているもの売るか、薬草でも取ればどう?ここら辺、魔物なんていないしそれが一番じゃない?」
「薬草を取るか。でも暫く需要とか確認できていないからな。それにここは魔力も少ないから大したものはなさそうだけど。」
「何も無いよりかはマシだろ?」
「それもそうだな。」
正直ひとつ、ひとつ、丁寧に。どんなところにでも生えている売っても大した値段にならない薬草を取るのはめんどくさい。
雑にとったら、質が悪くなったり、必要な部分がなかったりしたら、最初から大した価値がない薬草が、さらに価値が無くなる。
だが、これも路銀の為。
やるしかない。
そこら辺に生えている薬草は、売るなら安いが、旅の途中で怪我をした時に直ぐに摘む事が出来るし、加工をしなくても、ある程度は効果があるので旅人や冒険者には重宝されている。
もちろん、きちんと調合された物よりかは効果が薄いが。
暫く、1人と1つで下らない事を話し、歩きながら摘んでいたら結構な量を取れたようだった。
日も沈み出しており、薬草摘みは辞めることにして、寝床を準備する事にした。
「随分熱中していたねー」
「うん、最初の方はめんどくさかったけど、、、綺麗に取れると、楽しくなってきたよ。」
「そりゃ、良かったね」
ここに魔獣は居ないだろうが、結界を張る。
魔獣は居なくても虫や、通常の野生動物、盗賊なんかも居る。
結界に攻撃されれば気がつくようになっているので、安心して眠ることが出来る。
結界を張らない理由はない。
結界といっても難しい呪文を唱えたり、地面に逐一、魔法陣を書いたりするのではなく、既に魔法陣が書かれたスクロールを広げて、1晩もつ程度の魔力を注げば簡単に張ることが出来る。
勿論唱えたりすることでも張れる。
前に耳飾りに、なんで詠唱で張らないのか聞かれて、時間がかかるから好きじゃないと答えたら、ほぼ無限の時間があるエルフなのにそういうのは嫌いなんだと言われた。
時間があるとはいえ、無駄に使うのは好きじゃない。
スクロールは20回程、使えば効力がなくなってしまうので予備で2枚程、すぐに使える様に魔法陣を書いているスクロールと、白紙のスクロールと専用のインクとペンを持っている。
焚き火を焚いて、適当に手持ちの食料を調理して、食べてしまい、寝ることにした。
明日の朝には街に入れるだろう。もう目と鼻の先に南の街がある。