01,真白の街
エルフ、スオウは芝生でおおわれた坂に1本だけある馬車1台が通れる程の地面がむき出しの硬い道を登る足を止めて、自分が歩いていくのであろうと思われた先の景色を見て言った。
「なあ、ここで分かれてないか?」
スオウの右耳についている耳飾りが少し驚いたような、殆ど興味がなさそうな声で答えた。
「ほんとだ、分かれてる。」
すぐそこの地面を見た。
そこには他にも通った人がいたのだろう、周りに生えている芝生は生えておらず道のように、ずっと茶色の、少し湿った土が見えていた地面、、、
だったが、ほんの数メートル先を見ると、いきなり真っ白になっていた。
真っ白のあちら側と、色とりどりのこちら側の境目の場所から肉眼で見る限り、正確に、直線に分かれていた。
正面の白い場所から先に何があるのか気になり目を凝らして見てみたが本来空があるはずの場所も、ずっと見ていると目がチカチカしてきそうな程に、只々、真っ白。
影も形も何も分からない真っ白、それ以外は何も見えなかった。
「なんだろうコレ。先に進もうかな。」
「やめといた方がいいよ」
耳飾りが普段は出さないような真剣な声でスオウに言った。
スオウは危なそうだとは思っているが、行ってみたいのだろう。どんなものか耳飾りに聞いた。そしたら耳飾りは何かを内緒にしている童の様に。
「今は言う気になれないナー。」
「それじゃあ、いつ教えてくれるんだ?」
半ば諦めながらスオウは聞いた。
「ソウダナー、ナニか美味しいものをくれたら話すヨー。」
「食べられないだろ。」
「ナハハっ。頭が固いなぁ、まあ何時か話すよ。」
「何時かって、一体、何時なんだ?」
「そうだねー、君が死ぬまでには話してあげるよ。」
スオウは耳飾りの適当な返事に興が削がれたのとこれ以上話しても無駄だろうと考え、次の行先を話した
「なんだそれ。まあ引き返すか。ここからだったら、南の方に街があったはず。」
そう言って南の方を向いた。今スオウがたっている場所は少し高台のようになっていて遠くに小さく街が見えた。
「まだ昼前だから頑張れば2日で行けるんじゃない?」
「行けたらいいなぁ。」
そんなことを話しながらスオウは芝生の坂道を歩き出した。
暫く歩いてふと真っ白の世界があった場所を見た。
そこにはもうほとんど見えなかったが、真っ白で、ずっと見ていると自分まで白くなりそうな世界が変わらずあった。
真っ白の世界との境界から離れる時、あちら側に小さな街並みと、ヒトカゲのようなものが沢山あったような気がしたが、きっと、それは、気のせいだったのだろう。






