0097
王都の近くまで来たのだが、何やら賑わっている場所があった。石の壁と堀に囲まれた場所で、多くの人が出たり入ったりしている。あれは……傭兵と商人か?。
「やっぱりダンジョンは賑わってるねー」
「本当ね。今はどうなってるのかしら?」
「昔とは変わっている筈ですけどね。昔の最高記録は18層だった筈です」
「今も変わってない筈だけど? あの記録もアルドが居たら楽々超えられるねぇ」
「私のチームは14層で限界だったの。懐かしいわ」
「14層まで行ければ十分でしょう。殆どの者は1層から6層ですからね」
「ま、ダンジョンは後回しだ。まずは王都に行こう」
王都の門番に登録証を見せて中に入る。王都は二重のドーナツ型になっていて、中心に王城、内周に貴族街、外周に平民街がある。平民街と貴族街の間にも門がある。
平民街にある良い宿をシュラが知っているらしいので、皆でその宿に行く。何でも変わり者の吸血鬼が宿を経営してるそうだ。変わり者じゃなくて、普通に宿を経営してるだけだろう。
「いらっしゃいませー」
「久しぶりですね、ラーファン。2階の大きな部屋を頼みます」
「これは、シュライア様! 御久しぶりで御座います。2階の大部屋ですね? 少々お待ち下さい」
「大部屋があるのね。これで、皆で楽しめるわ」
「そうですね。個別も良いですが、一緒も良いですからね」
「宿泊は何日ほどになりますか?」
「とりあえず、10日ほどお願いします」
「大部屋に10日ですと、銀貨3枚になります」
「銀貨3枚、ここに置きます」
「ウチは宿だけですから、お食事は隣の食堂でお願いします。これが大部屋の鍵になりますので、無くさないようにして下さい」
「分かりました」
2階の大部屋に行き、鍵を開けて中に入る。掃除はしてあるものの、浄化を強めに掛けておき完全に綺麗にする。この王都には長く居る事になるだろうから、ここが新しい拠点だ。
宿を出て、浄化しながらウロウロする。流石は王都、邪気が多いし濃くて厄介だ。だからシュラは変わり者と言ったんだな。吸血鬼なのに邪気の濃い所に住んでいるから。
それでも【浄化】の権能に勝てる邪気など存在しない。丁寧に平民街を浄化していくが時間が掛かりそうだ。いつも通り色んな店を冷やかしながら浄化していくが、行けない所も多い。
妙に入り組んでいる路地や、周りに目を光らせている連中の居る場所。王都の巡回兵士でも近寄らない危険地帯など、面倒臭そうな所ほど邪気が濃く澱んでいる。あれらは夜だな。
まずは浄化出来る所から少しずつ終わらせていこう。昼前になったので一旦宿に戻るが、半分いかない程度は終わらせる事が出来た。この調子なら平民街は今日で確実に終わるな。
宿まで戻ってきたので隣の食堂に入る。店員に6人分の注文をして大銅貨6枚を支払った後、水を飲みながら待つ。うん? 意外に早く来たな。
昼食は結構美味しかった。この食堂は当たりだったと言えるだろう。良い気分で食堂を出て浄化の続きを始める。夕方までに3分の2を終わらせる事が出来たが、厄介なのはここからだ。
神殿や面倒臭そうな所は手付かずなので、夜に徘徊するしかない。それでも夜の時間を使えば平民街は終わるだろう。貴族街と王城は後回しで問題ない。
食堂に戻り大銅貨6枚を支払って夕食を食べる。食事後はさっさと部屋に戻り、皆に浄化の進捗を報告する。3人と2匹は酒を飲んでいるが、俺はスルーした。
「夜に隠密系の技を使って浄化を終わらせてくるよ」
「頑張り過ぎないようにしなよ?」
「アルドなら見つかる事は無いでしょうから、そこは心配しませんが……」
「急ぎ過ぎても上手くいかないから、注意してね」
「ああ、それは分かってる。ただ、時間を掛けても面倒なだけだからな」
話の最中に2匹は寝てしまった様だ。3人の雰囲気が一変したので分かりやすい。今日は本気の【房中術】と強い【喜昇】だけなんだが、いつもと違うな?。
違う事は分かるんだが……まぁ、いいか。全て浄化して出掛けよう。武器はナイフと十手だけで良い。隠密系の技を使って、夜の王都へ出発だ!。
神殿やスラムなど、人が寝ていたり、人が居ない間に浄化していく。昼間に周りを監視している者が居た所は賭博場だった。昼間に浄化は終わっているのでスルーして進む。
平民街が終わったが、まだ時間が余っているな? 行ってみるか。そう思い立ったので貴族街に侵入して浄化する。貴族街の大きさは平民街の半分も無い。
その為、帰るまでに3分の1を終わらせる事が出来た。そろそろ部屋に帰って寝るとするか。
<異世界55日目>
おはようございます。平民街の浄化は昨日で終わりましたので、今日はダンジョンに行ってみようと思います。そろそろお金を稼がないといけないんだ、結構減ってるから。
浄化しながら浄水を飲んでいると、2匹が起きてきた。
「おはよう。ダリア、カエデ」
「ニャ~」 「グルゥ~」
2匹は早速じゃれついてきた。体を擦り付けて甘えてくるので、やりたいようにさせてやる。ある程度甘えて満足したのか、直ぐ近くで寝ころんだ。
その2匹をモフっていると、3人が起きたようだ。
「「「チュッ! おはよう。アルド、ダリア、カエデ」」」
「おはよう、3人とも」 「ニャ」 「ガル」
「結局、浄化の方はどうなったんだい?」
「昨夜で平民街の方は終わったよ」
「早いですね。でも終わったなら、今日はどうするんです?」
「今日はダンジョンに行こうと思ってる」
「ダンジョンね。久々だから大丈夫かしら?」
「まぁ、何度か行けば感覚も思い出すんじゃないかね」
「まずは、朝食だな」
全て浄化し最後に強めに浄化を掛けたら、食堂へと行き注文する。大銅貨6枚を支払い朝食を食べたら、部屋に戻って準備を済ませた。初めてのダンジョンだ、気合い入れて行くか。
王都を出て、石壁と堀のある場所の中に入る。登録証を見せたらすんなりと入る事が出来たので見渡すと、中心に魔法陣のような物が地面にあった。……あれが<迷宮紋>と<脱出紋>か。
この世界のダンジョンは迷宮紋から入り、1層事に<転移紋>と<脱出紋>がある。転移紋は次の層に進む物で、脱出紋は迷宮から脱出し地上の脱出紋の上に出てくる。
迷宮では1層戻るといった事が出来なくなっており、進むか脱出するかの2択しかない。迷宮の中の素材は持ち帰っても良いので、素材を持ち帰り売って生計を立てている者も居る。
迷宮の中は邪気だらけなので、当然素材も邪気まみれだ。浄化すれば使えるので神殿は儲けているだろうな、迷宮があれば濡れ手で粟なんじゃないか?。
迷宮内は全て自己責任で、殺されたり奪われたりもする。ダナとシュラが潜ってた時も、メルが潜ってた時もそういう事はあったらしい。胸糞悪い話だな、こっちにきたら殺すか。
「懐かしいね、この感じ」
「ですね。50年振りくらいですかね?」
「私は100年振りくらいね」
「迷宮か……何か良い物でも手に入ればいいんだが……」
「上手くいけば良いけどねぇ」
「まあ、簡単にいくとは思ってないさ」
「迷宮のアイテムを探すの? それとも素材?」
「両方だな。今の装備以上の物は早々手に入らないだろうが……」
「確かに。アタシ達はかなり良い物を装備してるから気をつけないと」
「襲ってきたら、殺すだけですよ」
「そうね、盾で潰してあげなくちゃ」
「さて、そろそろ俺達の番かな?」
「そうだね、あと2組入ったらアタシ達の番さ」
そして俺達の前のチームも迷宮に入っていった。少し待ってから迷宮に入るのがマナーなので、待ってから迷宮紋の上に乗る。周りが光で満たされるのは、いつ以来だろうか?。
そんな事を考えながら、光に呑まれていった。
▽▽▽▽▽
0097終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
金貨30枚
大銀貨35枚
銀貨6枚
大銅貨20枚
銅貨5枚
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトの小烏丸
剣熊の爪のサバイバルナイフ
風鹿の角の十手
二角の角の戦斧
二角の革の帽子
剣熊と銅亀の革鎧
剣熊の骨の半篭手
剣熊の革の指貫グローブ
剣熊の革の剣帯
剣熊の骨の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
剣熊と銅亀のブーツ