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0008




 宿に着いて女将さんから鍵を貰い、部屋に戻って一息吐く。これから鉈作りをするので鉄の斧と鉄の鉈をバックパックから取り出す。


 斧は丁寧に使ったので刃毀れや歪みは無い。鉈は自分で作った方を枝落としに使ったので鉄の鉈の方は使っていない。


 鋼製の物を持っていると槍も鋼にしたくなるから不思議だ。威力も鋼の方が良いし悩む……。斧と鉈でそれなりの量の鉄はある。ガルドルさんの作った物なら良い鉄を使ってそうだ。


 と、なると……よし! 厚めの穂にしよう。斬ってよし、突いてよし、叩いてよしの槍にする。


 大身槍までは要らないがそれなりに長い物を目指す。錬金と練成を駆使すれば、相当いい物が出来る筈だ。


 さっそく鉄の斧と鉈を分解し鉄を一つに纏める。【抽出】と【融合】で纏めるのだが、流石ガルドルさんだ不純物が少ない。


 鉄を2種類の鋼にする。昨日の炭はまだあるので一気に鋼にし、心鉄を皮鉄でサンドして穂の部分を作り上げる。


 その後、石突用の突起部分も作り柄の尻に【融合】する。石の槍から穂を【分離】し鋼の穂を【融合】して完成した。


 鋼の穂先は石の穂先に比べ10センチ伸びて50センチあり幅も厚さも増えた。柄と合わせて210センチになったが、この程度の長さが一番使いやすい。


 短い分リーチは犠牲になっているが取り回しがよく、こちらの方が俺の好みに合っている。戦争に使う訳ではないので6メートルとか8メートルの長さは要らない。


 そもそも6メートルや8メートルの長槍なんて槍としてはまともに使えない物で、構えるか、叩くか、落とすものだ。


 同じ様に鉈も作るのだが、鉈の大きさは石の鉈と同じにする。全て終わったのでゴミを捨てに行こう。


 村を出て直ぐ近くの川に行き、斧の柄や石の鉈の刃や槍の穂などのいらない物を【破砕】した後【粉砕】して粉にして捨てる。


 村に戻ろうと振り返ると、丁度夕焼け空が見えた。夕焼けの光をなんとはなしに見ながらゆっくりと村に帰る。


 屋台に寄り昨日と同じスープとナンっぽいのを買う。今日初めて見たがナンもある様だ。スープに入っているのはウサギの肉で北にいるらしい。


 俺は西の森から来たし、この村は森から真っ直ぐ東だ。川は村の南側を西から東に流れている。東側は途中で東と南に流れが分かれていて、そこで南の森は切れてる。


 北には行ったことがなかったがウサギ等がいて、主にそっちに低ランクの傭兵は行くらしい。まぁ……普通の傭兵と同じ事をしても儲からないし……。


 なんかお前は普通じゃないと言われている気分になるが、気にしないでおく。


 部屋に戻り飯を食って浄化して寝る。決して不貞寝ではない。



 <異世界4日目>



 ピャーーーーッ! フョロロロ…… ピャーーーーッ! フョロロロ……。



 おはようございます。丸鳥の鳴き声で目覚めるのに慣れてきたのかもしれない。爽やかだとは口が裂けても言わないが。


 今日はせっかくなので、宿の食堂で朝食を食べようと思う。たまには違う事をしたくなる日もある。


 浄化して身支度を整えたら食堂へ行く。事前に確認してるが、食堂にはメニューが無かった。古い時代ならこんなものだ。普通の一言で終わる。



 「女将さん朝食をお願い」


 「あいよ、今日の朝は大銅貨1枚と銅貨3枚だよ」


 「あれ? 朝食付きの宿泊よりも高い」


 「そりゃ、事前の予約があれば無駄にならないからね。それに出すのは大銅貨1枚分の量だよ」


 「なるほどね。ここにお金置くよ」


 「まいど、直ぐに持ってくるからね」



 今日の朝食はパンと丸鳥のスープとサラダだ。丸鳥のスープはなかなか美味いし、サラダを食べるのは久しぶりだ。


 初日から宿で朝食を取った方が良かったんじゃないか? まぁいいや、食事に集中しよう。



 「ごちそうさま。美味しかったよ」


 「そうかい? ウチの旦那が聞いたら喜ぶよ」


 「旦那さんによろしく。鍵は今渡しておくよ」



 女将さんに鍵を渡し宿を出て、ギルドへ行かず荷車屋へ行く。大きな荷車を銀貨1枚で借りて森へ。他の傭兵が居ないので穴場だと思うし、槍と鉈の試し斬りもじっくり集中してやれる。


 他に十手やトンファーやヌンチャク、さらに手裏剣や苦無など作ってみたい武器はあるのだが、持ち運びの邪魔にしかならないので諦めた。


 森に着いた。なんだか妙な感じというか空気に気を引き締めて歩いていく。


 いつもより静かなのが気にかかり【探知】を広げる。結果、遠くの方から複数の魔物が逃げているのが感じ取れた。


 逃げる原因となった何かは足が速いらしく、おまけにこちらに向かって来ている。大きな音をたてながらソイツは現れた。



 「ブルルルルルルル……!!!!」



 身長2メートル50センチぐらいの二足歩行の豚か猪、つまりオークだ。だが普通のオークと違い、灰色のオーラを纏っている。


 神様から邪生は灰色のオーラを纏うと聞いていたので焦りはしないが、初めて見たのでビックリした。



 「ブモゥォーーーーッ!!!」



 どうも俺がビビらないのが気に入らないらしいな。怒りながら威嚇してくるが、俺には焦りも怯えもない。



 「【肉体浄化】【精神浄化】【魂魄浄化】」


 「ブモッ!? ………グググ……」



 オークの動きが止まる。邪生は浄化を受けると体の動きが鈍る。浄神いわく、俺は慣れれば【浄化】の権能だけで邪生を倒せるとの事だ。


 浄化魔法でさえ動きが鈍るのに、【浄化】の権能を喰らえば案山子の様になるのは当然だ。余りの隙だらけな姿に哀れみすら感じる。可哀想なので新しい鉈の餌食にしてやろう。


 身体強化を行い全力で首を斬る。



 「ふんっ!!!!」


 「ウゴ!! ゲグゲカゴボッ!?」



 スパっと綺麗に斬れず首の半分ぐらいで止まる。思っているより筋肉が硬い。みっしりと詰まった筋肉の所為で止まってしまった鉈を無理やり抜いて、槍を構え全力で首を斬る。


 ドシュッ!


 あっさりとオークの首は飛んだ。素早く回収し死体に全力で【浄化】の権能を使う。邪生というのは首を落とすか心臓を潰すのが基本戦術となる。


 邪生は、邪生になった段階で既に死亡している状態だ。邪生は邪気で動いているので、浄化されるとその分動けなくなる。


 つまり邪生が生き物を襲うのは、邪気自体の怨みや憎しみ以外に邪気を吸収するという目的もある。完全浄化すると死体に邪気が入り込めなくなるので、邪生の死亡という事になる訳だ。


 邪生にとって【浄化】の権能を持つ俺は最大の天敵と言える。


 倒したオークの邪生の血抜きを始めよう。いつも通り【冷却】を使って冷やした後【抽出】を使用して血抜きをし、浄化も丁寧に行う。


 ただその時、闘神が言っていた”邪生の心臓を生で食べると、肉体全体の能力が向上する”と言う話を思い出した。


 なんでも、強力な浄化魔法か【浄化】の権能でもなければ食べられる様にはならないらしい。


 下界の者だけではなく、特別な肉体の俺でも多少の効果はあるらしいので折角だから食べようと思う。能力アップの機会なんて滅多にないんだ、ありがたく頂こう。


 胸を開き心臓を取り出す。無理やり心臓を潰して首を落として勝ちました。そう見える様に切って取り出した心臓を、浄化して生のまま食べる。


 最初の一口は抵抗があったが直ぐに無くなった。こういう物だと思えば味も問題ない。食べるのに時間がかかったのは、予想よりも大きかったからだ。


 これ絶対に人間の心臓より大きいぞ。それにしても邪生は死んだ後も灰色なのか、普通のオークは豚か猪と同じだった筈だ。


 邪生になると、あのオーラの色になるみたいだな。死体を荷車に載せ村に帰ろう、流石に邪生が出たのは報告しなきゃダメだ。妙な勘繰りをされない為にキッチリしておかないといけない。


 【探知】と身体強化を使いながら急ぎ足で村に戻る。まだ荷車には半分以上の空きスペースがあるが、魔物と戦う必要はない。


 しかし、こういう急いでいる時に限って襲われるものなんだよ。



 「「「ブモッ! ……ブモゥッ!!」」」



 通常のオーク3匹が襲ってきた。荷車を置いて右端にいるオークに吶喊する。穂先を喉に突き刺し左に斬り裂くと、オークは倒れてもがき苦しむ。


 呼吸が出来ず暴れるオークを放置して、左端のオークに【土魔法】の【土柱】で攻撃する。


 【土柱】は足元から土の柱で突き上げる魔法だ。左端のオークの股の間から【土柱】を使うと、哀しい悲鳴が響き渡った。


 その悲鳴を聞き流しながら中央のオークの喉元に全力で回転突きを放つ。


 ドパァン!!!


 ゴブリン以来久しぶりに聞く音と共にオークの首が飛ぶ。股間を押さえ悶絶しているオークと、喉を必死に押さえているオークに止めを刺して後の処理を行う。


 処理を終えて荷車にオーク3匹を載せ、溜息を吐きながら帰路を急いだ。



 ▽▽▽▽▽


 0008終了時点


 金貨3枚

 大銀貨8枚

 銀貨6枚

 大銅貨10枚

 銅貨1枚


 鋼の短刀

 鋼の鉈

 鋼の槍


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