0085
村と田畑の境にある、村長の家までやってきた。他の家より少し大きいかな? というぐらいでしかなく、ここが村長の家だと知っていないと分からないだろう。
ただし、倉庫が沢山あるのと、もう1軒似たような家が建っている。そちらが客を泊める用の家だ。
「すみません! ギルドの依頼で来ました!」
「はーい! 少しお待ちをー!」
中からバタバタと音がするので、直ぐに出てくるだろう。玄関近くから少し離れておく。開けた拍子にぶつかるとかいう、コントじみたのは要らない。
「はい! どちら様でしょう?」
「ギルドから、堀の拡張依頼を請けてきました」
「ああ、あの仕事。やっと請けてくれる人が居たのね」
「依頼内容をお伺いしたいのですが」
「内容はね、堀を広げてほしいのよ。ある程度広げてくれればいいから」
「はあ……分かりました」
「じゃあ、お願いね」
そう言って女性は家に引っ込んで行った。……まさか、さっきのが村長か? 初めて見たけど、村長若過ぎない? 30歳前後にしか見えなかったんだが、種族特性だろうか?。
身長は180センチに届かないくらいで、雰囲気は有閑マダムみたいな人だったな。
「相変わらず見た目の若い村長だねぇ」
「あの女性は魔女族ですか?」
「あぁ、村長は魔女族だよ」
「成る程、それで。確か魔女族の寿命は300年程でしたか?」
「ああ、そうさ。村長は200歳ぐらいだよ。魔女族は寿命が近くならないと、見た目が老けないからねぇ」
「知っていますが、見ると驚きですね。あれで200歳ですか……?」
「いやいや、君等の方が見た目は若いだろうに」
「「まあ、それは……」」
そんな話をしながら、村の入り口まで行って門番に話を通す。門番が了承したので入り口近くから始めよう。いきなりやると不審者扱いをされかねない。
現在の堀は幅3メートル程、深さ3メートル程だ。町と変わらない大きさの村なので、全周囲を囲むのも大変だっただろう。広げてくれと言われたので倍ぐらいで良いか。
俺は【土魔法】を使いながら、堀を倍に広げていく。邪魔な土砂は堀の外側に積んでいき、ドンドンと進める。2人には土砂を一箇所に集めてもらった。
アイテムバッグって、やっぱり便利だよな。そんな事を思いながら昼まで頑張り、4分の1を終わらせた。村の入り口側の1辺だ。村は長方形なので残りは3辺となる。
宿の食堂に戻り、昼食を注文して大銅貨5枚を払う。水を飲んでゆっくりしていると、女将さんがやって来た。
「お昼に居るって事は、今日も部屋に居たのかい?」
「違いますよ。今日は堀を広げる仕事を請けたんですよ」
「ああ、堀の仕事ね。村長が困ってたよ、安いからか誰も請けてくれないって」
「あれ以上高くは出来ないだろうから、仕方がないんだけどねぇ」
「どういう事なんだ?」
「簡単な事さ。あれ以上報酬を上げるなら、村長がやった方が早いんだよ。村長は魔力の多い魔女族だからね」
「たしかに、魔女族なら魔法でやってしまうでしょうね。傭兵の仕事として依頼したのに、結局アルドがやってますけど」
「まあ、そうなんだけど。アルドの評価にはなるさ」
「あの広げ方ですから、ちゃんと評価されるかどうか」
「えっ!? 駄目なのか? 頑張って広げてるんだが……」
「広げ過ぎで、早過ぎなんだよ」
「そんなに広げちゃったのかい?」
「倍に広げただけなんですが」
「それは……どうなんだろうね?」
さあ? 俺にも分からない。後で村を広げる時に困るって事かね? でもなー、広げる幅の指定は無かったんだよな。安全の為には広い方が良いだろうし、気にしなくてもいいか。
昼食後、再び堀を広げる仕事を始める。周りに子供達が居て、歓声を上げたりしている。暇潰しというか娯楽にされてるっぽいな。まぁ、子供達だから腹も立たないし別に良いが。
夕方まで頑張り、もう1辺が終わった。この仕事は明日で終わりそうだな。宿に帰りながら、そんな事を考えていると、2人から土砂の事を言われた。しまった! 忘れてた。
土砂の処分か……壁に使ったりしたら駄目かな? 入り口付近に、森のキャンプ地と同じ狭間を付けた壁。駄目か……入り口だけやってもな。最悪【圧縮】して壁にしよう。
宿の食堂で夕食を注文して、大銅貨5枚を支払い部屋に戻る。浄化した後ゆっくり2匹と遊んでいると、2人が混ざってきた。なので、全員でイチャイチャしてから食堂に下りる。
食堂で夕食をとっていると、村長がやってきてカウンターの席に座る。村長はこちらを見ながら、溜息を吐いて話し始めた。
「はぁ……。誰があんなに広げろと言いましたか?」
「広げる幅の指定はありませんでしたよ?」
「指定しなくとも常識で分かるでしょう!?」
「それは常識の違いというものです。俺は村を守れる幅に広げただけですよ?」
「む……。確かにあそこまで広ければ、村を守る事はできるでしょう。ですが依頼料の事を」
「報酬はあれで良いですよ」
「えっ!? 良いのですか? 幾ら何でも安すぎるでしょう」
「別に構いませんよ。村の安全の為ですしね」
「ん~……いや、しかし……。そうだ! お礼を致しましょう」
「何だか嫌な予感がするんだけどねぇ?」
「私もです。夜のお礼とか言い出しそうです……」
「もちろん、そういうお礼ですよ。御二人にも、祖母の”閨の技”を教えてあげます!」
「「祖母?」」
「アルドとシュラは知らないだろうね。村長の祖母は、避妊薬を作った<伝説の魔女>だよ」
「「えーーーっ!!!」」
「おや、2人とも知らなかったのかい?」
「村では有名でも、知らない人は結構居るもんさ。それに伝説の魔女の子供は20人以上居るし」
「「20人……」」
「祖母はお盛んだったので仕方がないんです。私以上の見た目で、亡くなる半季節前まで20歳ぐらいの見た目だったんですよ」
「それはまさか、肌の張りや艶もですか?」
「えぇ。祖母は本当に美しい方でしたし、男を堕とす努力”だけ”は凄かったんです」
「つまり村長の報酬は、”伝説の魔女の閨の技”という事ですか?」
「そうなります。貴方はともかく、御二人は欲しいのではありませんか?」
「「もちろん!!」」
この瞬間、報酬が決まってしまった。要らないとは言ったが、ケチだと思われるのも困るんだろうな。しかし、報酬がオカシイ気がするのは……俺だけなんですね。
夕食後、村長を交えて部屋に戻る。2人は不思議な事に、浮気だとか言う気はないらしい。普通は言うと思うんだが? ダナだって5人組に嫉妬してた事があるんだし。
「村長は長く生きてるからね。一人寝の寂しさは良く分かるんだよ」
「私達の方が長いですけどね。だからこそ、女の一人寝の寂しさは良く分かります」
「ありがとう御座います。御二人の許しが出たので、今日は寂しくありません」
「村長は一人暮らしですか?」
「いえ。今は玄孫と一緒に暮らしていますよ。あの子が次の村長です」
「へー。次の村長がもう居るんですね」
「居るって言うより、既に副村長として働いてるよ。いつでも変われるんじゃないかね?」
「そうですね。ここ数年で、あの子もやっと慣れてきたみたいで」
3人は酒を飲みながら、そんな話をしている。俺はその横でダリアとカエデと一緒に遊んでいた。2匹とも今日は土砂で遊んでいた為、暇では無かったようだ。
狩りだと問題ないんだが、依頼だと放っておく事になる場合もある。2匹の機嫌が心配だったんだが、機嫌は良いらしい。そのまま遊んでいると、2匹はウトウトし始めた。
浄化して綺麗にしてやると、最早眠る寸前だ。目がトロンとはしなくなってるが、浄化されると眠気が加速するらしい。2匹は電池が切れるように眠ってしまった。
横に居る3人の気配が一気に怪しくなり始める。……せめて今飲んでいる酒ぐらい、ゆっくり飲みなさい。焦らなくても夜は長いよ?。
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0085終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
金貨30枚
大銀貨36枚
銀貨19枚
大銅貨17枚
銅貨5枚
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトの小烏丸
剣熊の爪のグラディウス
二角の角のククリ
二角の角の戦斧
風鹿の角の十手
槍木の弓
二角の革の帽子
剣熊と銅亀の革鎧
剣熊の革の剣帯
剣熊の革の指貫グローブ
剣熊と銅亀の肘防具
剣熊と銅亀の膝防具
剣熊と銅亀のブーツ