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0007




 さて、まさか森に再び木を伐りに来るとは思わなかったな。更に言えば、今日の朝に武具屋へ行って鉄の斧を買ったばっかりだし。


 何か運命を感じなくもないが、木や石それに斧や鉈との運命かと思うと笑いが込み上げてくる。


 ダナさんとの運命なら嬉しいんだが。その運命はあるのだろうか? ……あったらいいな、ぐらいで期待はしないでおこう。どうせ色々と嫌な目に遭うんだ、そうに決まってる。


 下らん事を考えながら黙々と木を伐り、木の皮を剥ぎ、【圧縮】と【変形】を使い丸太を作っていく。


 川の近くで足元の石を拾い、【圧縮】と【融合】と【変形】を使ってある程度の大きさにまとめる。


 後は大型の荷車に詰め込み村へと戻る。帰りは身体強化を使わないと牽けなかった。一体何キロぐらいあるんだろうか? もしかしたら200キロ超えてるのかもしれない。


 話は変わるが実はこの世界、長さや重さといった単位が無い。


 <○○の長さ>や<○○の重さ>とかいう、超絶アバウトな単位と言えない単位モドキはある。


 だが、それを俺が使う理由はない。なので元の世界のメートルやグラムを頭の中だけで使っている。俺のメートルやグラムも結構アバウトだが、この世界の超絶アバウトよりはマシだ。


 村に戻り一旦ギルドの近くで荷車を置く。ギルドに行ってダナさんに武器を作る場所として、訓練場の一部を借してもらえる様に頼む。



 「別に訓練場を使うのは構わないけど、大丈夫かい?」


 「??? ……どういう事です?」


 「うん? ……いや、錬金や練成をする奴は集中を乱されるのを嫌うからね」


 「あぁ、そういう……たぶん問題ありませんよ」


 「そうかい。それなら訓練場は好きに使っていいよ」



 とりあえず荷車をギルドの裏へ持って行こうと、ギルドの外へ出る。荷車の方を見ると荷車の近くに背の低い人が居て、荷車に載っている丸太を見ながらブツブツと呟いていた。



 「あの、俺の荷物が載った荷車に何か用ですか?」


 「これ、お前さんの荷物か?」



 この人ドワーフだ! もしかしてガルドルというドワーフなのか? 一体何の用があって荷車を見ているんだろう。



 「えぇ……そうですが。失礼ですが、もしかしてガルドルさんですか?」


 「む? ……そうじゃが。そんなことより、この丸太ワシに売ってくれんか?」


 「あー……それは無理です。これから訓練場に運んで、武器を作るので」


 「武器じゃと? ……お前がか?」



 俺の体をジロジロ見ながら、お前が武器を作れるのか? とあからさまな疑惑の目を向けてくる。ドワーフは錬金や練成を嫌うかもしれないが、説明しないと納得しなさそうだ。



 「俺は【錬金魔法】と【練成魔法】が使えるので、問題なく作れます」


 「錬金や練成ができるのは分かっとる。丸太を見れば分かる」


 「じゃあ何故あんな目を……」


 「魔力が多そうに見えなかっただけだ。それより、もし木が余ったらワシの所に持って来い。高く買うてやる」


 「わかりました。余ったら持って行きます」


 「頼むぞ!」



 何か妙に強く念を押してきたが理由があるのかな? だがなぁ……、俺が作った丸太は圧縮してあって密度が高く燃え難いんだが……。一体何に使うんだろう?。


 考えても分からない事を考えていたら、訓練場に到着した。今日は訓練している人はほとんど居ない。都合がいいのでこのまま始める。


 まずは剣の作成から行う。と言っても、丸太を【変形】を使って木剣の形にして【分離】、それを10本作る。


 剣の形はスタンダードな両刃のショートソードなので【融合】と【変形】で石を被覆していく。【変形】で刃を作ったら鞘を作り納刀していく。


 次は槍だが、これは既に作った物と同じ工程なのでさっさと作る。


 3つ目は斧だが、片手斧の見本は武具屋にあったので木と石で同じ様な物を作るだけで済む。


 4つ目はメイスだ。さっき訓練場を借りるついでに聞いた話しだと、棒の先に球体がついている物がいいらしい。


 それだと簡単なのでさっさと木で作る。先の球体だけ石で被覆すれば完成だ。持ち手に革を巻いたりするのは使う人に任せよう。



 「随分、簡単に作るもんだねぇ……」


 「うわっ!? ビックリした」


 「あぁ、すまないね。【錬金魔法】や【練成魔法】はあんまり見ないから、つい見たくなってさ」


 「えっ!? ……そうなんですか?」


 「町や都市だとそれなりには居るだろうけど、こんな田舎だとあんまり見ないよ」


 「そうなんですか………。とりあえず注文通りに出来ましたよ」


 「それは見てたから分かってる。依頼完了の手続きをカウンターに行ってしてきな。お~い、この武器片付けるの手伝って~」


 「了解です」



 やっべー、田舎じゃあんまり見ないのか……。こういう時、自分の常識の無さが露呈するなぁ。取り返しのつかない失敗に繋がらないといいんだが。


 こう考えるのもフラグか? あ~やめやめ、考えるのやめよう。



 「依頼完了の手続きに来ました」


 「もう終わったんですか? まだお昼前ですよ?」


 「もう終わりました。ダナさんから、カウンターで依頼完了の手続きをしてこいと言われまして」


 「はい……はい、完了の木札がありますね。では手続きをします」


 「お願いします」



 今日も”まだ昼前”という言葉を使う事になるとは……。お昼どこで食べよう? 水筒があるから外で食べなくても水の言い訳はできる。まぁ、どこでもいいか。



 「報酬の大銀貨3枚と登録証です。お疲れ様でした」



 登録証を受け取って訓練場へ行き荷車を牽いてギルドを出る。石は上手く使いきったが、丸太が余っていて荷車に載ったままだ。とりあえず荷車を牽き宿に行く。


 報酬が随分高かったが、あれだけの武器の納品と考えたら適正なんだろう。昨日より遥かに収入が多いな。錬金や練成の方が稼げるのかもしれない。


 荷車を宿の横に置き中に入る。



 「女将さん、食堂で昼食を食べてもいいかい?」


 「汚さないなら構わないよ」


 「ありがとう」



 宿の食堂には多少の客がいて昼飯を食っていた。そんな中、俺も屋台で買った昼飯を食う。



 「大の男がそんな量で足りるのかい?」


 「昔から食事の量は多くないんだ」



 この肉体は食べる量が少なくても全く問題が無い。流石は神が下界に降臨する際の依代だ。本当にそう思う。だからこそ、普通の人達とズレてしまうのは仕方ないんだろう。


 水筒の水を飲み、口や体や水筒を浄化しながら昼からの事を考える。まずはガルドルさんの所へ行き丸太を売ろう。


 その後はどうしようか? 部屋で鉈作りでもするか。なんだか今日はもう村の外へ出る気にならない。


 女将さんに、ガルドルさんが丸太を売ってくれと言っていた事を伝える。鍛冶屋の場所を聞くと村の一番端だと言われた。ハブられてるのか? と思ったがそうではなく、単に騒音の問題だった。


 リアルに考えてみれば、鍛冶屋って騒音を撒き散らす建築物と言っていい代物だ。夢も希望も無いな。勇者の剣は騒音の中で生まれる……。ホントに夢が無いな!。


 それなりに鍛冶屋は遠かった。村の端だからか近くには田畑や家畜小屋が多く見える。



 「すみませーん、丸太を持ってきましたー」



 ドタドタドタドタ……バタン!。



 「丸太はどこだ!」


 「荷車に載ってますよ」


 「……ウーム、この量なら銀貨2枚だな。ちょっと待っとれ」



 ドタドタドタドタ……。



 俺まだその値段で売るって言ってないよな……?。



 ドタドタドタドタ……。



 「ホレ、銀貨2枚じゃ受け取れ。丸太は持ってゆくぞ!」


 「あ、はい……。ところで丸太を何に使うんです?」


 「これから窯で炭にする! この丸太だと良質な炭が出来そうだからの!」


 「あぁ、なるほどそれで……。じゃあ俺はこれで」



 聞いてない……。ガルドルさんは丸太を抱えて急いで戻って行った。密度の高い木で炭を作ると上質な炭が出来るのは俺も知っている。


 確か備長炭とかがそんな感じだったはず。よく見るとガルドルさんの家の裏には小さいながらも登り窯があった。


 なるほど、あれで炭を作るのか。疑問が無くなってスッキリした。このスッキリした気持ちのまま、荷車を返して宿に帰ろう。



 ▽▽▽▽▽


 0007終了時点


 金貨3枚

 大銀貨8枚

 銀貨7枚

 大銅貨11枚

 銅貨4枚


 鋼の短刀

 石の鉈

 石の槍

 鉄の斧

 鉄の鉈


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