0674
勝家君達は「美味い!美味い!」と食べているが、彼らは竜の脂ですら貴重だという事を知らないからなぁ。もちろん教える気は無い。欲しければ教えるが、間違いなく殺される事も教えておかないと駄目だ。それ以前に訓練が先だが……。
俺達はゆっくり食事をした後、麦茶を飲んで休んでいる。そろそろ麦茶も無くなりそうだ、明日大橋さんの所で買うか。
それにしても、今日の事を思い出すと若干気が重い。多分だけど足利義藤はここに来ると思う。面倒な事になりそうなんだよなー。
今回、勝家君達に邪生の心臓を食べさせる気は無い。もちろん、あの2人にもだ。食べるだけでかなりの強さを手に入れられる以上は、権力者に知られるのは危険過ぎる。この中で教えても良いと思うのはコウカの5人だけだ。それ以外は絶対に喋る。
特に勝家君は織田家家臣だからな。西部さんや信秀さんには喋るだろう。知られたら碌な事にならない。ジャン達に教えたのは一般人だったり、狂愛者だったり、女性の美への欲を知っているからだ。殺してでも奪う連中を知っていれば迂闊な事はしない。
カマクラの中でウダウダと考えていたら既に3匹は寝ていて、皆に連れて行かれてます。【鋭覚】と【喜昇】で撃沈し布団に寝かせる。俺も今日は疲れたのでさっさと寝よう。おやすみなさい。
<異世界278日目>
おはようございます。今日は訓練2日目です。さっさと熊のきぐるみを着て外に出よう。カマクラの外に出て入り口を閉じたが、夜中に雨が降ったみたいだ。地面が濡れていて結構寒い。
朝食は暖かい汁物がいいな。さて、どうするか……。普通に熊肉の鍋で良いだろう。土鍋でご飯を炊き、寸胴鍋に聖水と野菜を入れて煮込む。熊肉はスライスして焼いてから鍋に投入する。残っていた大根も入れたので、思っているより野菜が多いな。
仕方ないので干し肉を聖水で戻して入れよう。大根も含め、野菜の水分がそれなりに出そうだ。土鍋のご飯が炊けたら、塩を混ぜて【念動】で握っていく。既に全員起きて挨拶はしたが、目の前の光景に未だ慣れないらしい。勝家君達が呆然としている。
早く慣れてほしいが、こればっかりは時間が掛かりそうだ。そろそろ完成だし食べようか。
「美味いな。昨日もそうだが、本当に米が美味いのだ。このおにぎりだけで贅沢だと言える程に美味い」
「そうですね。そもそも白米なんてアルドさんから貰って初めて食べましたけど……」
「仕方ないわよ。コウカでは父上だって簡単には食べられない物よ? 私達が食べてて良いのかしら?」
「でも食べないのも問題ですし、残すのはもっと問題ですよ?」
「「そうそう、残すぐらいなら全部たべますよ」」
「あっちは置いとくとして、今日はどうするんだい、アルド? 昨日みたいに突発的な事でも起きない限り、あの子達の訓練だろうけど」
「今はな。いずれダンジョンに連れて行って実地で教える事になるが、今は訓練だな。とにかく、身体強化の基本すら出来ていないんじゃ話にならない」
「そうだな。私達も久々に基礎訓練をしてもいいのかもしれない。彼らの指導をしながら、鈍っている部分を矯正しておくとするか……」
食事後、全員を【浄化】したら港を出発する。ダンジョンへ行っていつも通り回収するのだが、新たにアーマーベアを2頭倒して手に入れておく。あの2人組が面倒な事を言い出しかねないという予感があるからだ。
そういえば勝家君達の鎧をどうするかな? きぐるみがアーマーベアだが、革鎧としてもアーマーベアが1番優秀なんだよなぁ……。まあ、アーマーベアで良いか。その時に獲りに来ればいいや。
適当に採取していると「気が抜けている!」と、今日のお供のガウラさんに叱られた。
ダンジョンを出て北に行き、分かれ道を西に行こうと思ったら2人組が居た。俺は隠密の4つの技を使っているのでスルーし、ツシマの大橋さんの所へ向かう。大橋さんの所でいつもの仕事を終えたら、大麦を大銀貨1枚分購入して帰る。
今日は尾行してくる阿呆も居ないので、全力で港に帰ったのだが……何この状況? 塚原さんと義藤がウチの女性陣と睨み合ってるんだけど……。
「ただいまー。……なんで睨み合ってんの?」
「おかえり、アルド。この女が、この子達に教えている事を自分にも教えろと言ってきてね。そっちの年寄りは最初ニコニコしてたけど、少し前に殺気を放ちやがったのさ」
「私達に喧嘩を売るという事が、どういう事なのかを教えてやらなければいけませんね!」
ボッ! ボッ! とジャブを打つのを止めてくれませんかね? 毎度そうですが、それジャブの音じゃないから。君の背筋エゲツないんだからさ、本気で殴ったら人が死ぬよ? ……ったく、しょうがないな。
「あー……もうバラすぞ? そこに居る爺さんは塚原卜伝で、そっちの女性は足利義藤だ」
「誰かしら? 塚原という名前に聞き覚えは無いけど、足利って……どこかで聞いた様な?」
「ほら、この国の歪な権力構造の片割れだよ。主様が仰っていた、ナントカ将軍の家だね」
「「「「「「えぇーーーーーっ!?!?」」」」」」
勝家君達がパニックの後に直ぐに土下座をし始めたので、無理矢理立たせる。誰が見ているか分からないんだから、将軍家の者だってバレる様な事をするな。そう言うと、理解したのか直ぐに立ち上がった。
「で、あんたら何しに来たんだよ。いきなりココに来て”教えろ”って意味不明過ぎるぞ。他人の知識や技術が、言葉一つで簡単に手に入る訳が無いだろう」
「あー、うむ。そんな事は分かっとるのじゃがのぉ……。いきなりでの。しかも剣呑な気配がした以上は、ワシは命を懸けて守らねばならん。それをせねば、仙女の方にお叱りを受けるでな」
「「「「「「仙女?」」」」」」
「ふふん。私の母は仙女族なのだ。父は人間族ゆえ、私は半仙族にしかなれなんだが……。それでも比叡山に関わりある者なのだぞ?」
「何を言ってるんだろう、この人? 僕ちょっと理解出来ないんだけど……。仙女族って珍しい種族だよね? 確か」
「そうですね、一応仙丹を作れる唯一の種族と言われてます。アルドいわく、仙丹を作るのに種族は全く関係無いそうですが……」
「そんなバカな!? そんな筈は無い! 父の病気を治した薬を作ったのが母上なんだぞ!!」
「仙丹は闘気を操作出来たら誰にでも作れる。もちろん材料や知識や技術は必要だが、仙女族しか作れないという事は無い。単に仙女族しか作り方を知らないだけだ」
「前に言ってたからね、正しい作り方が失われたって。簡単な作り方をする様に堕落したら、神様も怒って当然だろうさ」
「ダナ、ちょっと違う。作り方を変える事に神様は嘆いているんじゃない。元の作り方が失われた事に嘆いているんだ。神様も、まさか元のレシピまで失われるとは思ってなかったって事だ」
「えっ!? どういう事なの?」
「変えちゃいけないと言うほど神様は狭量じゃない。問題は元のレシピまで失われている事なんだ。下界の者が研鑽する事はむしろ良い事だ。ただ、元の作り方が残ってないと比べられないんだよ」
「要するに本当に正しいのか、それとも間違っているのかが分からないという事ね。何度も見比べて、間違っていないか、効能が悪化していないかを調べる。そうやって研鑽をする様に誘導したかったのね、神様方は」
「そういう事。元のレシピが失われたら比較が出来ないからな。だから神様達は嘆いた訳だ」
「成る程、そういう事だったんですね。とはいえ、残っていない以上は……うん? アルドは神様から正しい作り方を習ってるんですよね? だったら……」
「ああ、それなー。後で念神が教えてくれたんだが、薬の神である薬神は別に気にしていない様なんだ。どっちでも良いんじゃない? って感じらしい。下界の者が苦労すればいいだけで、神である自分達が手を貸してやる必要は無いって考えてるそうだ」
「それは、また……」
ある意味、見捨ててるよなー。別にいいと思うけど。
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神石の勾玉
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王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
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