0648
生地を蒲鉾型にしてアイテムバッグに仕舞い、寸胴鍋で魚や貝のスープを作っていく。貝の出汁で良い匂いがしてきた頃、皆が起きてきた。
「「「「「「チュッ! おはよう、皆」」」」」」
「おはよう、皆」 「ニャー」 「………」 「カー」
皆を待たせてしまうが、これから竜の脂で饅頭を揚げていく。皆は竜の脂の良い匂いを嗅ぎながら待っているが、ガウラだけは初めてだからか頭の上に乗って鍋を覗いている。ちょっと邪魔なんで降りてもらい、竜の脂を使っている事を話す。
すると驚きで嘴が開いたうえ、その状態で固まってしまった。……昨日の今日で、もう人間の言葉を理解してる?。
……もしかして、ダリア達と近い神様が何かしてるのか? 猫神や虎神などは居るだろうから、鳥神も当然居るだろう。スライムは何だろうな?。
まあ、いいや。今はそれより饅頭だ。焦がさない様にしないと、焦げた揚げ饅頭なんて誰も食べたくない。
揚げ上がった饅頭をどんどん皿に盛り、皆には先に食べて貰う。揚げ物は揚げたてが1番美味しいし、その時を逃して待ってもらう意味も無い。
皆には自分でス-プを入れて貰い、先に朝食を始めてもらう。揚げ饅頭を食べているガウラが矢鱈に五月蝿くて、ダリアに怒られている。
そんなBGMを聞きながら、最後の饅頭を揚げきった。俺も朝食を始めよう。
「アルドは今日もダンジョンかい?」
「ああ。ヤシマの国は貨幣も足りてないし、農具も武器も足りてない。戦争の武器なら作る気は無いが、魔物に勝つ為の武器は必要だ。ただ、大陸の西側より庶民が金を持ってないんで、どうしたものかと困ってるんだよ」
「そんなにお金を持ってないんですか? 農具もそれなりに高い物ですから、仕方がないのでしょうね……」
「そうじゃなくて、悪銭ビタ銭ばかりだから貨幣価値が安定してないんだ。その所為で、お金に信用が無い。村の民は普通に物々交換をしている始末だよ。汚い混ぜ物がしてある貨幣よりも、現物の方が価値があると思われてるんだ」
「それは……ちょっと、どうなのかしら。ヤシマの国はいつの時代なの? と聞いてみたくなるわね。アルドが言うにはギリギリまで鉛を混ぜているらしいけれど、そんな事をしているから駄目になっているんでしょうに」
「儲かれば何でもいい。そう考える商人は何処にでも居るけれど、この国の最大の問題は、そういう輩を罰する事が出来ていない事だろうね。だからいつまでも馬鹿がバカな事をし続けるんだよ」
「アルドが前に言っていたな、<悪貨は良貨を駆逐する>と。駆逐されかかっているのが、今のヤシマの国なのかもしれないな。駆逐されると、完全に物々交換の時代に戻ってしまうんだろう」
「そうなると商人は破滅だね。お金を持って売り買いしているから商人なのに、お金が信用ならなくなったら商品を持って歩くのかな? 行商人なんてどうするんだろうね? 買取はどうやってやるんだろうね? そういう事が全く分かってないとしか思えないよ」
「史実の日本では銅貨が駄目になった辺りで、銀や金の取引が増えていた筈だ。確かだけど、金銀は重さで決まっていたと思う。甲州金なんかが有名なのかな? 甲斐の事だけど、あそこは奴隷として民を浚っていって、鉱山で死ぬまで働かせるからなぁ……。ヤシマの国でやってるかは知らないけど」
「鉱山奴隷かい? 普通は重犯罪者が送られる所だけど、そんな所に浚って押し込むって幾らなんでも……」
「戦には強かったらしいけど、知っている人からは悪逆非道とも言われてたよ。越後の謙信だって七尺返しをやったし、信長は麦苗薙をやってるし……あの時代は本当に碌でもない事ばっかりだよ」
皆はよく分からないって顔をしているので、七尺返しと麦苗薙の説明をすると全員が激怒した。まあ、当然の反応だろうなぁ。
「頭がおかしいのかい!? その阿呆どもは!! そんな奴等は飢えて死ね!!」
「碌でもないですね。今すぐ殺しますか?」
「待って、待って。まだやったのかどうか分からないし、何よりこの世界じゃ魔物が居て難しいだろうから落ち着け」
気持ちはよく分かるしキレるのも当然なんだけど、ここでキレたって意味は無いからさ。それに禁止してた武将もいたんだよ、守られていたかは知らないけど。特に農地破壊は農民の恨みがエゲツないから、出来る限りやらなかったという説もあるんだよ。
全部が全部事実かも分からない。実際に記録として残っていたりするが、悪し様に罵る為に嘘が書いてある場合もあるから、本当の事かは分からない。まあ、信長に関しては<信長公記>に書いてあるんだけど、俺は話半分くらいでしか受け止めていない。
何故なら作者の太田牛一は、最後には豊臣家に仕えていた筈だ。信長に関しては、その後の秀吉と家康が相当のイメージダウンを計っているので、本当はどうだったかが分からない。
後世、<信長公記>が真実かの様に言われているけど、怪しいのはルイス・フロイスの本と一緒だ。
当時は権力者の意向に沿わないと殺される様な時代でもあったしな。だからこそ、全てが正しいとは限らない。ただ、可能性としては高そうではあるんだが、当時としては普通の事でもあった。
自分の所の領民以外は人間扱いしない様な時代でもあったからなぁ。それに一揆を起こすし……。
「つまり、やった可能性は高いけど、本当かは分からないと……」
「ああ。それに、当時はこっちに味方したかと思えば、あっちに味方する。そういう事ばかりだったんだよ。すぐに裏切るのが当たり前の時代でな、それは村でさえ変わらない」
「村でも……ですか?」
「そうだ。村が別の奴に味方して一緒に攻めてくる。裏切って城の弱点を教えるとかもあったらしい。村人は村人で、滅茶苦茶されてもしょうがない様な事もしていた」
「権力者が民を裏切り、民が権力者を裏切る。救いの無い世界ね。更に、そこに神殿のような連中も介入していたんでしょ? 民に蜂起させて、自分達は高みの見物をしていた連中も居たのよね?」
「ああ。最後は追い詰められたんで、戦って死んだらしいけどな。それまでは民を言葉巧みに騙して、武士に嗾けていた」
「本当に、いつの時代だと言いたくなるくらいに酷いね。私がまだ40歳~50歳くらいの時にはそんな事もあったけど、それ以降は殆ど無いよ? 今の神殿も、権力者に対して民を嗾けるなんて出来ない」
「色々な勢力が入り乱れていた末期的な状況だったんだよ。最高権力者に力が無いから、そこまで国が乱れたんだ。今のヤシマの国も足利に力が無いだろう? だから皆が好き勝手するんだ」
「頂点にある者に大した力が無いので、言う事を聞かせられないのか……。確かに末期的な状況だな。何の為の最高権力者か分からない」
「ヤシマの国はともかく、日本では200年くらい掛けて足利は弱っていったとも言える。最初から力が無かった訳じゃない。とはいえ、力が無い権力者なんて邪魔でしかないんだ」
「アルドが言ってた、口先だけで介入して場を引っ掻き回すってヤツだね。権力というか名前だけはあるから、皆がそれだけを利用しようとする。だから余計におかしな事になるんだろうね」
「今のヤシマの国も似た様な状況らしいけど、何となく分かってもらえたと思う。ある意味、長く停滞した所為でここまで歪んでしまったと言えるんだ。誰の所為とも言い難い部分はある。誰に聞いても、こんな世は望んでいないって言うだろうさ」
「誰も望んでないけど、皆が生き残りを掛けて戦った結果、そこまで歪んだって事かい。権力者の一族郎党まで滅ぶ様な時代と言えば、それまでか……」
なるべくして国が荒れ、収束する様に織田信長という人物が出て来るんだよ。そして、英傑と呼ばれる3人が纏め上げる。織田家は出自が微妙な国人。秀吉は元農民。徳川こと松平は元々土豪。
三英傑は、誰も立派な出自の者は居ない。今までの日本を根底から覆すには、血筋じゃなくて能力を示す必要があったんだろう。もう家柄や血筋の時代じゃないと。
様々なものが切り替わる時期が、戦国時代なんだろうなぁ……。
▽▽▽▽▽
0648終了時点
大白金貨3枚
白金貨36枚
大金貨159枚
金貨530枚
大銀貨588枚
銀貨517枚
大銅貨154枚
銅貨64枚
神金の矛
神鉄の大太刀
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




