0062
領都の入り口で順番待ちをしていると、俺達の順番になった。門番は2人居るが、1人はニヤニヤしており、1人は苦虫を噛み潰した顔をしている。この後の展開が簡単に読めるわー。
「おい! そこの女2人! お前達は怪しいから詰め所に来い!」
「先輩! 止めて下さい! こんな事をしていると……」
「うるせぇ! 新入りは黙って言う事聞いてりゃいいんだよ!」
「そこの君。このアホは、もう終わりだ。だから気にしなくていいぞ?」
「へっ!?」
「あぁ? 何だこのクソガキは? 女の前で調子乗ってんのか?」
「ルタ? これが領都なのか? スゴイナー」
「………。そこの新人兵士、直ぐに兵士長を呼んで来なさい。伯爵家が三女、ルティルが呼んでいると。そう報告しなさい!」
「は、はい!」
新人が飛び出した後、オッサンの方はフリーズしていた。しかし再起動したら逃げ出そうとしたので、逃がさずボッコボコにしておく。しばらくして、慌てたように2人の兵士が来た。
「兵士長の職にある、ザザントでございます!」
「この呻いているゴミが、こちらのお二方を登録証も見ずに詰め所へ連行しようとしました」
「お二方?」
「こちらのお二方は、<剣の踊り子>殿と<血狂い>殿です」
「申し訳御座いません!!!」
兵士長さんは土下座謝罪をしているが、謝罪はそこのゴミがしなきゃね。……という事で、無理矢理に土下座状態にしてゴミに謝罪させた。ゴミは顔面蒼白で必死だが、当然のように死刑宣告がされる。
ルタがこのゴミを伯爵に報告すると言ったからだ。領都の門番は、領都の顔だ。要するに伯爵の顔に泥を塗ったのだ、このゴミは。その事にやっと気付いたらしい。もう遅いが。
この封建社会で貴族の顔に泥を塗るとか、アホ過ぎる。殺してくれと言ってるようなもんだ。ついでに手を出そうとした相手が悪過ぎる。片方は300人斬りで、片方が盗賊殺し。
不良兵士が勝てる相手じゃない。色々全部纏めて”アホ”の一言で終わる。騒ぎになったので、このまま領主館まで行く事になった。領都の中を歩くんだが、メッチャ警備されてるぞ?。
左右に5人の兵士が並んで歩いている。その御蔭で余計な事にはなってないが、目立ち過ぎじゃないか? 周りからジロジロ見られてるんだけど? 気にせず皆は歩いて行く。
領主館に着きルタを確認すると、直ぐに門が開いた。だが、最後尾の俺の前で門が閉まる。
……あれー? なんでだ? 周りの奴等が俺を見下してニヤニヤしてるという事は……。もしかして、これは逃げるチャンスか?。
俺はダリアを抱いて【気配消失】と【誤認】に【幽体】を使ってその場から離脱する。宿を探してフラフラすると、美味しそうな匂いがする小さな宿があった。俺は中に入り1泊頼む。
「1泊大銅貨2枚です。夕食と朝食は大銅貨1枚です」
「じゃあ大銅貨6枚払うから、猫の食事も大丈夫かい?」
店員は12歳くらいの女の子だった。親の手伝いだろうか? 子供が働く、そういう時代なんだなぁ。当の本人は猫を見て嬉しそうにしているが。
「はい、たぶん大丈夫ですよ。ただ、汚さないで下さい。場合によっては弁償してもらう事になります」
「分かった。汚さないし、壊さないよ。部屋でゆっくりしているから、夕食には知らせてほしい」
「分かりました。お部屋は1階の奥です」
俺は鍵を受け取り部屋に入る。あんまり綺麗じゃなかったので部屋を浄化した。自分もダリアも浄化したが、ダリアはやっぱり喜んでいる。ダリアと2人、夕食までゆっくりする。
何で退いたのかって? そんなもん、向こうの不手際にする為に決まってる。何でこっちが頭下げて頼まなきゃなんないんだ? あのアホ門番が悪いのは当然の事だ。
更に上の監督責任も当然ある。要するにあんなアホを雇ってる程度の貴族って事になるんだよ。貴族は醜聞を何より嫌う生き物だ。この部分は、結構武士と似ていると俺は思う。
武士の面目って、結局は面子の事だ。物凄く単純に分かりやすく言うと、ナメられたら負けって事。こっちを甘く見ると、相手は際限なく調子に乗る。それをさせない為に一旦潰す。
面倒臭いが駆け引きって奴だ。何でこんな事をするかと言えば、希少金属の件に関わりがある。
俺は希少金属を加工できるので、絶対面倒な事に巻き込まれてしまう。何故なら、希少金属製の物は各国の国宝レベルの代物だからだ。品質の良くない物でも。
決まっているなら準備するしかない。今回はその為のマウント取りだ。………はぁー、面倒臭い。我慢してやるしかないか……。
「ニャー」
「お、慰めてくれるのか? 愛い奴め」
ダリアをモフって癒されよう。浄化しながらモフっていると、夕食になって呼ばれた。部屋を出て食堂の席に座ると、俺とダリアの夕食が来た。ダリアはテーブルの上に居る。
何かの肉のステーキとサラダ、それとスープとパンだ。ルーデル村の旦那さんの料理と変わらないぐらいに、良い匂いがするな。ダリアはもうガッツいてる。俺も食べよう。
……いやー、美味いわ。ここもプロって言えるぐらいに美味い。ダリアも満足して寝転がっている。ダリアは魔物なので、塩分とか糖分とか気にしなくていい。魔物って雑食で内臓も強いんだよ。
そういえば魔物じゃなくて聖獣か。なんでも、人を襲ったりしない魔物を聖獣とか幻獣とか言うらしい。結局は魔物なんだけどね。部屋に戻りダリアをモフろう。
席から立ち上がると、宿にダナとシュラが来た。……どうやって俺を見つけたんだ? 個別に調べられる技はまだ教えてない筈だが……。その後ろから5人組も来た。
「「アルド!!!」」
ダナとシュラは凄い勢いで抱きついてきた。倒れはしないが結構なパワーだ。それでも気にしないダリアさん、アンタやっぱり大物だよ。お腹見せて余裕だね?。
「急に居なくなられたのでビックリしました」
「その文句は、お宅のアホな門番に言ってくれ」
「………」
「失礼。私はカームと申します」
5人組の後ろから若い男が出て来た。居るのは知ってたけどね。【探知】で見えてるんだよ、コイツが出るタイミング伺ってたの。だから先制したんだ。お前等の所為だってな。
「門の前での事は、お互いに行き違いがあったようですね」
「”お互い”の行き違いねぇ。それで済まそうって事か? 下民は言う事聞けって? お前の頭は湧いてんのか?」
「ほう。伯爵家に対してのお言葉と取りますが、宜しいですね?」
「構わないが? 千でも二千でも、万でも連れて来いよ。潰してやるからさ」
「正気ですか?」
「正気も正気。至って普通の事だ」
「ここまで頭が悪いとは……」
「2人に聞くんだが、伯爵家にはクソ牛より強い奴は居るのか?」
「「居ない!」」
「あの、クソ牛……ですか?」
「ああ。近衛騎士団長のライブルさ」
「アルドを怒らせて顔面蒼白で怯えてましたね。……あのクソ牛」
「「「「「「は?」」」」」」
「は? じゃなくて、ただの事実さ」
「どうやらお二方には、恋は盲目という言葉を……」
鬱陶しいので、このゴミに殺気と殺意を【闘気】と【念力】を込めてピンポイントでぶつける。こいつが気絶出来ないようにゆっくりと強めていき、丁度いい強さで維持する。
「で、勘違いしたゴミが何だって? 死にたいって? 分かった、今すぐ殺してやる」
「お、お待ち下さい! この者にはきちんと教えておきます! どうか、お許しを!」
「うん? 何で丁寧なんだ?」
「ゴメン、アルド。不老長寿なのバレちゃった」
「バレたというか、ムカついて喋ったと言いますか……」
「うん? このゴミは知らないのか? 俺が不老長寿だって事」
「あー。このゴミはその時には居なかったね」
「そうでしたね」
このゴミはその場に居なかったと……。何かドンドンこっちが有利になるなぁ。ちなみに、ゴミは顔面蒼白で失禁してる。弱過ぎるだろうが、あそこまで言ったなら頑張れよ!。
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0062終了時点
金貨27枚
大銀貨27枚
銀貨13枚
大銅貨9枚
銅貨5枚
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトの小烏丸
剣熊の爪の斧
風鹿の角の十手
剣熊と銅亀の革鎧
剣熊の革の剣帯
剣熊の革の指貫グローブ
剣熊と銅亀の肘防具
剣熊と銅亀の膝防具
剣熊と銅亀のブーツ