0060
シグの村を出発し東に向かう。真っ直ぐ東に進めないので、北に行ったり南にいったりと蛇行するように進んで行く。理由は森で、この辺りは森の中に道がある。
盗賊が潜んでそうだが、シュラいわく殆ど無いらしい。当然の事だが、自然の中では圧倒的に魔物の方が有利だからだ。最終的には魔物に殺されてしまう可能性が高い。
生き残れる程に強いなら、傭兵の方が遥かに儲かる。結局は半端者や犯罪者や賞金首ぐらいのもので、そんな奴等は森に潜んでも魔物に駆逐される。だから、村や町の近くにしか居ない。
随分と根性の無い奴等だ。そう言ったら、根性があれば傭兵をやってると言われた。反論の余地も無く、グゥの音も出ない正論を返されてしまったな。そんな事をしていると魔物が来た。
「右からコボルト3匹!」
「分かりました。行きます!」
5人組はコボルトと戦うも、危なげなく勝利した。先を急ぐので、俺が【浄炎】で燃やして処理する。神官の子から【浄炎】の使い方を聞かれたが、【気配察知】が先だと言っておく。
あれもこれもと手を出しても、上手くいく事は滅多に無い。森の道を進んでいると、男6人組が前方からやってきた。奇妙な連中だ。全員が同じ革鎧に同じ剣を装備している。
まるで兵士だな? 妙な統一感のある連中だ。そいつらは立ち止まりこちらを警戒している。なので、こちらも立ち止まり声を掛けた。
「こちらは8人の傭兵だ! そちらは?」
「こちらも傭兵だ! 我々はクラン<ガーディアン>のメンバーだ!」
「<ガーディアン>?」
「クラン<ガーディアン>は、ディムアストで有名なクランですよ」
「ディムアスト?」
「………。領都の名前はディムアストです」
「ああ、領都ね。領都の名前を初めて聞いたよ」
「……そうですか」
「そちらの最高ランクは誰だ!? 本当に傭兵か!?」
「何であんなに疑ってるんだ? 警戒し過ぎだろ? 幾らなんでも」
「アンタ達! 通行の邪魔だから端っこに寄りな!」
「なんだと!? 貴様<ガーディアン>をナメているのか?」
「ナメてるも何も、お前等が道の真ん中で立ち止まってるから邪魔なんだよ」
「貴様等のような低ランクがどけ! 次に下らん事を言ったら覚悟しろ!」
「なぁ、あのゴミども死にたいのか? 自分の命も守れないのに<ガーディアン>とか、笑い話にもならないだろ」
6人組が武器を抜いたので、俺達3人は即座に十手で叩きのめした。簡単に決着がついたが、5人組も予想していたのか落ちついている。ボコッた後、8人でゴミを囲む。
「……で、命も守れない<ガーディアン>さんよ。お前等の中で一番ランクが高いのは誰だ?」
「キサマ……こんな事をして、<ガーディアン>が黙っていると思うなよ!」
「黙ってるか、お前等を切り捨てるか。どっちかだろ?」
「なに!?」
「お前等は剣を抜いたよな? ここに伯爵家の方が居るんだが?」
「「「「「「は?」」」」」」
「……はぁ。私は伯爵家の三女、ルティルです。私の顔を知らない貴方達は、一体どこの誰でしょう?」
これが決め手となり、6人組は土下座謝罪を始めた。3人がルタの顔を知っていた為に、途中から6人全員の顔が真っ青になっていた。伯爵家の方に剣を抜いたら駄目だよねって話だ。
こっちを警戒してたのは3人が新人だったからで、新人を死なせる訳にもいかない為、必要以上に警戒してしまったらしい。1番ランクが高いのは偉そうだった奴で、ランク6だった。
俺はランク5だが、特に馬鹿にされる事も無かった。その話の流れで全員のランクの話になってしまい、ダナとシュラのランクを聞いて6人組全員の顔が真っ白になってる。
伯爵令嬢のルタが許したので、彼等はそそくさと去って行った。クランの名前で偉そうにしていたのを見て、5人組は幻滅した様だ。そろそろ俺達も移動を再開しよう。
順調に森の道を進んで行き、昼前に森を抜ける事が出来た。ゴードの町はここから見えている。町はそれなりの大きさで、町を囲む壁は意外に高い。危険が多い町なんだろうか?。
門番に登録証を見せて中に入る。この町には食堂が数軒あるらしく、1番美味しいと言われている店に行く。8人分注文すると大銅貨16枚だったが、かなり美味かった。
食堂だけで経営が成り立ってるのだから、美味い店じゃないと生き残れないんだろう。全員満足したので、ゴードの町から先へ進む。この先は急ぐ必要がある様だ。
ここから東のロワの村へは、湖を南に迂回する道しかなく、どうしても時間が掛かるらしい。船などは湖の魔物に沈められてしまう為、徒歩しか駄目なのは当たり前の事だそうだ。
直ぐに出発して道なりに進んでいく。荷車を牽く者や馬車などが見える中、のんびりと景色を楽しみながら足を動かす。湖にはカエル系やトカゲ系の魔物がいるようで面白い。
ゆっくり景色を楽しみながら足だけは速い俺に、必死でついて来る7人という奇妙な構図になってしまった。少しペースを落として休憩できる速度にするから、睨むのは止めて。
皆のペースに合わせて進む。どうも俺は勘違いして、少し焦っていたらしい。普通の速度でもロワの村への到着は、夜までには間に合うそうだ。それを聞いて安心した。
夕日が沈んでいく光景の中、ロワの村に到着した。……ギリギリじゃね? とにかく宿に行って寝床を確保しようとしたが、大部屋しか空いてなかった。準備しておいて良かった。
大部屋に5人組を泊まらせ、俺達は村の外に出る。村の外で【土魔法】を使って、直径6メートルの土のカマクラを作る。今日はここに宿泊だ。竈も作ったので料理を始めよう。
猪の肉はまだあるので出してもらい、ステーキにする。後は残ってた野菜と端肉で出汁をとったスープ、そして硬いパンだ。それでも2人いわく、野営では普通以上の食事らしい。
食事の後、のんびり寝転んでいるとカマクラに引っ張り込まれた。ダナだけなんだが? と思っていたら、夜番交代の時にシュラの相手もお願いされた。撃沈して直ぐ夜番できるの?。
朝のリクエスト通りに、ゆっくり優しく撃沈させて浄化して寝た。起こされたら交代の時間だったので、【探知】や【気配察知】で警戒しながら、シュラも同じように撃沈しておいた。
夜番は暇なのでどうしようか悩むな……。そんな事を考えてた時もありました! 俺が夜番になってから、結構な頻度で魔物が襲ってくる。狼だったり、兎だったり、猪だったり。
処理して解体し、肉は凍らせて収納する。何で俺に代わった途端こんなに襲われるんだ? どう考えても、おかしいだろう!? そう思ってたら元凶が姿を現した。
「ゲッゲゲ!! ゲッゲ!!」 「…………!!!!」
カエルとトカゲの邪生だ! 俺にとってはカモだが、魔物にとっては恐怖の象徴だろうか? どちらも体長2メートルほどあり、カエルやトカゲと考えたらデカイ。
「【肉体浄化】【精神浄化】【魂魄浄化】【空間浄化】」
思う所があって、【空間浄化】も使い内部から浄化する。やはり亀と同じで抵抗せず、寧ろ浄化に身を委ねているように見える。安らかな顔で死んだが更に浄化を強めていく。
神界の雰囲気にそれなりに近づいたところで止めたが、邪生の死体に変化は見られなかった。もっと強い浄化でないと駄目なのかもなぁ……。邪生の死体も解体して処理しておく。
まだ夜なのでゆっくりしていると、さっき邪生を倒した所に魔物が居た。そいつは大きな猫だったが、じっとこちらを見るだけで動かない。お互い見つめ合う事になった。
猫を観察していると、どうやら自分を浄化したいらしい。折角なので【浄化】の権能を全力で使ってやると、真っ白な猫になった。灰色っぽかったのは、単なる汚れか?。
「ニャー! ニャニャッ! ……ナー」
自分が浄化された事が分かったのだろう、猫は驚いた後に俺に体を擦り付けてくる。親愛行動だったか? ただのマーキングか? まぁ、可愛いからどっちでもいいか。
そんな可愛い猫と、朝までのんびりする事にした。
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0060終了時点
金貨27枚
大銀貨27枚
銀貨14枚
大銅貨3枚
銅貨5枚
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトの小烏丸
剣熊の爪の斧
風鹿の角の十手
剣熊と銅亀の革鎧
剣熊の革の剣帯
剣熊の革の指貫グローブ
剣熊と銅亀の肘防具
剣熊と銅亀の膝防具
剣熊と銅亀のブーツ