0596
ツシマから東に進み、途中で南に行く。元の世界では蟹江と呼ばれていた場所に入った。
こっちに来たのは大した事ではなく、蟹江城という城があったと記憶しているからだ。ただ、探しているのだが見つからない。もしかして、まだ作られていない……?。
そうだとすると、単なる俺の勇み足か。そう思い、アツタの方に行こうとすると、ダリアが急に南東に走って行った。俺達は慌てて後を追い駆けて行ったが、ダリアは直ぐに止まる。お座りするダリアの視線の先には、迷宮紋があった。
周りには村も無ければ人も居ない。何で迷宮紋が無造作に放置されてるんだ?。
莫大な資源を得られるダンジョンを放置するという事が信じられず、立ったまま考えていると、20人ぐらいの者がこっちに近付いてきた。馬に乗っているのは武士か?。
「貴様らは何者だ! ここは西部の殿の御領地ぞ! 貴様らの様な怪しき者の居ていい所ではない! さっさと「待て」失せ……」
「そなた等は何者だ? おそらくはヤシマの者ではあるまい。ワシの名は織田弾正小忠信定と言う。そなたの名は?」
「俺の名ですか? アルドゥラムと言います。大陸の西の方から渡ってきまして、今はヤシマの国を色々と見て回っています。ところで、なぜ迷宮紋を放置してるんですか? 莫大な資源を手に入れられるダンジョンを放置する意味が分かりません」
「待て待て、迷宮紋? だんじょん? いったいおぬしは何を言っておるのだ?」
もしかして理解されていないのかと思い、ダンジョンの事を教える。色々と話し合って、ようやく誤解を含めて色んな事が分かった。
まず第一に、ヤシマの国では迷宮紋を<穢門>と呼んでいるらしい。この穢門は穢れの中に入る門と考えられており忌み嫌われている。なので中に入る者は殆ど居ないそうだ。
第二に、力自慢の者なんかが挑む事はあるらしいが、帰ってきたものは僅かしか居ないらしい。その為、怖がって挑戦するものも最早おらず、中の事を含めて誰も知らない。
結局のところ、怖がって誰も入らない所為で詳細が分かっていないという事だ。俺は織田信定に話しながら、今までの誤解とダンジョンの意味を教えていく。
周りの護衛は胡散臭いものを見る様な目で見てくるが、織田信定は目がキラキラしてる。……それもどうなんだよ。
「うーむ……まさか穢門の中がその様なものであり、それ程に儲かるとはな。大陸の方ではそれが分かっておるというのに、我等は穢門と呼んで怯えておるだけか……。武士として恥と思わねばならんな」
「されど殿、古くからの習わしによって決められてきた事。この者が嘘を吐いておるやもしれませぬ」
「ほう、そうやって怖がっておるのが貴様の望みか? だったら屋敷に帰って怯えておれ。我が家に怯え竦む者など要らぬ。ましてや己の目で確かめもせぬ者など、なお要らぬわ」
「い、いえ……そのような事は決して……」
「とりあえずワシと共に入ってくれんか? 入ったところで問題など無いのであろう?」
「ええ、全く問題はありませんね。そもそも俺達は浄化魔法……この国では浄術でしたか、それが使えるので何の問題もありませんよ」
「ほう! 我が家と同じか! 我が織田家も越前は劔神社の出。一通りの浄術は身につけておる。北部の殿はまだしも、南部の殿は碌に使えんらしいがの」
「そういえば織田さんばっかりで分かり難いんで、西部さんと呼んでいいですか?」
「……わははははは! そんな呼ばれ方をしたの初めてだ! 構わん、構わん。我が家は所詮下っ端の家よ。源流は北部の家であり、我が家は分家でしかないからな」
織田信定、改め西部さんと一緒に迷宮紋へと入る。光が治まった頃に見えてきたのは、林が疎らにある平原だった。遠くにウサギの魔物が見えるが、後は魔物の姿は見えない。【探知】を使えば分かるが、今はそこまでする必要が無いしな。
「ふーむ……これが穢門の中か……。遠くにウサギがおる程度で、他には何も無さそうだな。何故こんな所が穢門と言われ怖れられてきたのだ? 再びこの穢門に乗れば出られるのであろう? ますます意味が分からんな」
「誰かが怖がって怯えて、それを馬鹿にされない為に、適当に穢れがどうとか言い出したんじゃないですか? 古くからの事って、往々にしてそういうものだったりしますよ」
「成る程。往々にしてそんなものか……。しかし、あそこに見えておる木々もウサギも取り放題となれば、話は大きく変わるぞ。穢れを浄化せねばならぬとはいえ、それは元々からして変わらん。普通に伐ってきた木でさえ一度は浄化するのだからな」
「信じられないのであれば獲ってみるかい? ダンジョンは幾ら獲っても時間をおけば復活するから問題ないよ。俺が信用できないんだろう?」
「……ハッキリと申せば信用なぞ無い。それは当たり前であろう。あのウサギを倒す最中に、お前たちが襲って来んとも限らん。下らない挑発には乗らんぞ」
「御託はよいから、さっさとアレを狩ってこい。武士ならば細かい事を言わず、力を見せよ」
西部さんが言ったからか、横に居た俺達をずっと睨んでいた少年は渋々と言った表情でウサギに近付いて行った。
ところがダンジョンを理解していなかったのだろう、突然襲われたので慌てて反撃をしているが上手くいっていない。
西部さんは呆れているし、ウチの女性陣はクスクス笑ってるしで余計に上手くいっていないな。なんとか倒したものの、2度ほど体当たりを受けて噛み付かれそうになっていた。
実際にそれなりの傷は負ってしまっているからか、非常に不機嫌な顔をしている。
「例えウサギといえども殺されそうになれば決死の覚悟で戦うものよ。お前は戦いというものを舐めておるのか? そんな調子で戦場に出れば死ぬぞ?」
「面目次第もございませぬ……」
「何だか気に入らないみたいなんで、俺は向こうの猪を倒してきましょう。ディル、すまないが木を何本か伐ってきてくれ。斧はコレな」
「ああ、分かった。木は適当で良いのだろう?」
「質を見たいんで適当で構わない、というか適当で頼む」
俺は向こうの方に見えている猪に近付きながら矛を右手に持つ。猪がこちらを認識した瞬間一気に突進してきたので、身体強化で避けながら側面に回り首を斬り落とした。
突進してくるのは避けて反撃が基本だからな、それにしてもあっさり終わらせ過ぎたかな、唖然とされてるぞ。
俺は倒した猪を【浄化魔法】で浄化した後に足を持ち上げて宙吊りにし、【抽出】を使って一気に血抜きをする。【冷却】を使って猪の体温を下げたらアイテムバッグに収納した。
【抽出】を使えば強制的に血を抜く事が出来るので、血抜きに無駄な時間が掛かる事は無い。
今までも当然そうだったんだが、それを見た西部さん達が唖然としている。そんなに驚く事か? と思っている皆は、既に毒され過ぎているんだろうな。とはいえ自重する意味も無いしな。ディルが戻ってきたので、一旦外に出る事にした。
「それにしても、猪をああも簡単に狩ってしまうとはのう。アレらは突進してくると面倒なのだが、あっさりと側面に回った速さといい、とんでもない強さだな」
「まあ、俺達はそもそも傭兵ですしね。魔物と戦うのは仕事ですから、ある程度の強さは持っていて当たり前なんですよ」
傭兵の説明をしていなかったので説明し、ついでに俺の登録証をみせると西部さんは考え込み始めた。庶民が傭兵となり魔物を減らすシステムだ。魔物に悩んでいる施政者なら取り入れたいシステムだろう、でも簡単な事じゃない。
誰がバックアップするかとか、資金はどうするんだとか、考える事は山ほどある。元々の始まりが町や村を守る傭兵だったというところからスタートしなければ、同じ組織を作るのは難しいかもしれない。上辺だけ真似ても失敗すると思う。
その辺りの事を詳しく教えると、西部さんは余計に悩み始めてしまった。
▽▽▽▽▽
0596終了時点
大白金貨3枚
白金貨36枚
大金貨152枚
金貨528枚
大銀貨597枚
銀貨527枚
大銅貨176枚
銅貨64枚
神金の矛
神鉄の太刀
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




