0591
ヤシマの国では少なくとも寺は無いそうだ。僧侶はおらず、居るのは神官と修験者だけだ。
ただし、神社の神官と神殿の神官の両方の神官が居て、結構ややこしい事になっている。事ある毎に対立するらしく、余計な揉め事を起こされて庶民でさえ辟易しているらしい。
ガイアルム王国でもそうだったが、神殿の奴等は碌な事をしないな。日本の歴史では仏教の宗派が対立したが、ここヤシマの国では神社と神殿で対立するみたいだ。
どっちも神様を祀っているからかね? それか仕事内容が被ってるとかか? 利益の奪い合いは対立の元だからなぁ。
何で争ってるのかは知らないが、いつも被害を受けるのは庶民か。そりゃ辟易して当然だな。
ちなみに修験者はストイックに鍛錬ばっかりしているらしく、山や森などに自分達で里を作ったりしているらしい。一応、ヤシマの国の帝は勝手に里を作る事を許しているそうだが、開拓するのが先って事かもしれない。
うん。さっきの言葉の通りだ。ヤシマの国にも帝、つまり天皇陛下がおられるんだ。ビックリしたのは、この世界でも神武天皇が日本を統一したと言う事だ。
御名が変わらないのはどういう事なんだろうか? 後の世で贈られた名とはいえ、同じ名という事に引っ掛かりを覚えてしまう。たぶん、偶然だと思うんだが……。
それはともかくとして、都に公家がいて朝廷があるという事までは分かっている。ただ政治体制的には、既に武士に実権を奪われている事は間違いない。
その武士も色々あって、源氏は鎌倉に居るし、平氏は関東に居るそうだ。現在の将軍は”足利”なんだと。源氏と平氏が残っているのに足利が征夷大将軍をやってる。
何と言うか、ヤシマの国って闇鍋みたいな状況になってないか? かつて在地で統治を行う紅衆の筆頭は平氏であり、治安を守る白衆の筆頭は源氏だったそうだ。
ただ、足利が台頭した事により権力構造が崩れ、群雄割拠の時代になってしまったらしい。その原因は、朝廷、平氏、源氏の権力闘争らしく、勝ったのが源氏の家臣でしかなかった足利なんだそうだ。
もう200年以上前の話らしく、今では足利を頂点とした権力構造が出来上がっている。気に入らなくても、力がある以上は逆らえない。そういう状況なんだそうだ。
流石に畿内だけあって歴史的な情報は出てくるが、それでも庶民が知れる事には限度がある。これだけ知れたのも金を出した成果だろう。
皆にとっては面白いし、面白くない話だった様だ。ダナやシュラは興味が無さそうだが、アルメアやディルは興味深そうに聞いていた。
メルとフォルは聞いているだけって感じだ。ダリアやフヨウは我関せずと俺の胡坐の中に入り込んだり、首に巻きついたりしてる。まあ、好きにしなさい。
その後、地理の話になったので、都までの道を説明しておく。イタミの町から少し東に行けば川がある筈で、その川を遡っていけば都に着くと言うと安堵している。
やっぱり移動ばかりの状況に飽きていたらしい。気持ちはよく分かるが、もう少しなので頑張ってほしい。
気付けばダリアとフヨウは寝ていたので、【念動】で移動させた後、全員を【喜昇】【極幸】【至天】で完全にキメておいた。これでストレスの多くは解消されたと思う。俺は……さっさと寝れば解消されるだろう。
それじゃあ、おやすみ。
<異世界249日目>
おはようございます。今日は一気に都まで行きたいものです。多分だけどイタミの町は近いと思う。今日は早めにカマクラの外に出て朝食の準備をしよう。
外に出てカマクラを閉じたら、まずは小麦を出して全粒粉にする。そして聖水と塩を混ぜて練っていき、出来たら休ませておく。その間に細かくしたかす肉と野菜を混ぜてタネを作り、小さく丸く伸ばした生地で包んでいく。そう、餃子だ。
横では寸胴鍋に聖水を入れて、根菜を入れたらコトコト煮込む。餃子を作りながらも、野菜が煮えたら竜の肉を薄く切って寸胴鍋に入れ、火が通るまで煮込む。
先に焼いたりしておかなくても竜の肉は臭く無い。正確に言うと独特の匂いはあるが残しておくと風味になる良い匂いなんだ。だから生から煮込む。
十分に火が通ったら、【加熱】を止めて味噌を溶いたら出来上がりだ。豚汁ならぬ竜汁が完成したので、アイテムバッグに寸胴鍋を仕舞ったら作った餃子を焼いていく。
1人20個の計180個だから焼くのも大変だ。何とか苦労して焼き切った時、ちょうど皆が起きて来た。
「「「「「「チュッ! おはよう、皆」」」」」」
「おはよう、皆」 「ニャ」 「………」
「今日の朝は餃子かい? 久しぶりに食べられるけど、作るの面倒臭そうだからねぇ。贅沢は言わないけど、ちょっと少ないんだよね。今度はアタシも作るのに参加して沢山作ろうっと」
「私も料理が出来たら参加するんですが……。とはいえ、私は20個ぐらいで良いですけどね。こっちにスープもありますし……って、この匂いは竜の肉ですか?」
「あらー……お味噌のスープに竜の肉が入ってるわね。でも合わさると更に良い匂いになってる気がするわ、ちょっと不思議」
「まあ、元々竜の肉は良い匂いがするけど、確かに香りが柔らかくなっているね。もっとガツンとくる良い匂いだったのが、柔らかく、でも食欲を誘う匂いに変わってる。私も食べるとしよう」
ディルやフォルはとっくに食べているし無言だ。美味しそうに食べているから良いんだが、無言はちょっと怖いよ。どうも竜の肉と味噌は相性が良いみたいで、更に美味しくなっているんだ。
竜の肉を食べ慣れている2人が無言な事から、どれくらい相性が良いかは察してほしい。多分スープ系にした事が成功した理由だと思う。味噌に漬け込んでも美味しくはならない気がする。煮込むからこそ、ここまで美味しくなったんだろう。
大変満足する朝食だったようで何よりだが、完全に餃子がどっかに飛んでったな。仕方がないとはいえ、あれも竜のかす肉なんだけど可哀想に……。
朝食後、片づけを終えたらフォルにカマクラと焼き場を壊させて出発する。30分ほど移動するとイタミの町が【探知】の範囲に入った。俺達は町の中に入り浄化をすると直ぐに出発する。目指すはイタミの東にある、北東に続いている川だ。
なに川か名前は知らないが、都から川を下れば海に出られるとか聞いた事がある。本当かどうかは知らないが、それほど川が続いていたらしいのは事実だ。
それから1時間ほど東へ行くと、目的の川を発見した。小舟が下ったり上ったりしているので間違いないだろう。俺達は川の側を遡るように進んで行く。昼近くまで走ると【探知】に沢山の人を感知した。間違いなく京の都だろう。
俺は皆にその事を告げると、皆の足取りも一気に軽くなった。目的地がすぐそこにあるとなればテンションが上がるのも当然か。一気に加速して進み、ついに俺達は京の都に辿り着いた。
……そこで目にしたのは、荒れ果てた家屋や残骸と、飢え死にしそうな程に痩せこけた人々の姿だった。
これが都かと思うほど酷い。唖然とする皆とは対照的に、俺の心は「やっぱりな」という思いしかなかった。これで室町末期の都である事が、ほぼ確定した。
応仁の乱と法華一揆で荒れ果てた都は、そこかしこが死体だらけだったと読んだ事がある。
野良犬が人間の死体を喰っているのが当たり前の光景だったらしく、日本の歴史において都が1番酷い時期だったそうだ。ヤシマの国では死体は見当たらないが、これは室町末期の酷さで間違い無いと思う。
これより酷い状況がこの後やってくるとか、考えたくもない。生気の無い痩せこけた人々、壊されたまま放置してある家屋。燃やされたのか、真っ黒になった家の残骸。
……ここは世紀末か? と問いたくなる光景だな。盗賊もいるみたいだし、普通に「ヒャッハー」してそうだ。
日本の歴史にも、こういう時代があったんだと思うと言葉が出ないな。悪臭も漂う所為で、ここが都だとは全く思えない。
何と言うか、コレを見たら日本人を蛮族呼ばわりしても仕方がないと思う。
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0591終了時点
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神金の矛
神鉄の太刀
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




