0058
朝食が来たので食事を始める。食べながら今日の予定を考えるが、ギルドに行く以外には特にない。まぁ、こんな日があってもいいだろう。毎日忙しいのもなぁ……日本じゃないんだし。
食事を終えて部屋に戻るも、2人は起きられないようなので置いていく。声は掛けたので怒る事は無い、準備を整えてゆっくりとギルドに向かう。景色も違って見えてくるんだなー。
ギルドに到着し中に入ると、ヴェルさんが数人のベテランと何か話し合っていた。その横を抜けて掲示板の方へ行くと肩をガッシリ掴まれた。どうやら俺の平穏はここまでらしい。
「ダナさんとシュラさんは、どうしました?」
「ダナとシュラは前と同じです」
「……そうですか。依頼したい事がありますので、ダナさんとシュラさんを連れて来て下さい」
「……前回みたいな事は困りますよ。機嫌を直してもらうのに苦労したんですから」
「分かっています。今回の依頼は政治は関係ありません」
「了解です」
ギルドを出て宿に戻る。一体何しにギルドに行ったんだろう? そんな虚しさを感じながら部屋に入ると2人は起きていた。既に防具も着けているようでなによりだ。
「2人とも、準備はもう出来てる?」
「ああ、問題ないよ」
「私も問題ありません」
「ギルドに行ったんだけど、ヴェルさんが依頼があるってさ」
「依頼? いったい何だい?」
「さぁ? ダナとシュラを呼んできてくれって言ってたな」
「また用件を言わないのですね」
「ちょっとお灸を据えてやった方がいいかねぇ?」
2人は朝食を終えていたらしく、そのまま宿を出てギルドに向かう。ギルドに到着して直ぐ、ヴェルさんにアイアンクローを喰らわせた。ギルド内にデカイ悲鳴が響き渡る。
ダナとシュラはそれで満足したのか、椅子に座って話を聞く事にした様だ。ただ、ヴェルさんは床で悶絶している。あれは復帰するのに時間が掛かるだろうなぁ。
多少の時間は掛かったが、復帰したので話を聞く。ちなみにベテラン連中は、アイアンクローからはずっと直立不動だった。よっぽど怖いらしい。
「で、さっさと用件言いな」
「お2人があの」
「用件を言いなさい」
「……。依頼は村長からで、魔銅の出る洞窟の拡張です」
「うん? 拡張? そんなの低ランクでも出来るだろうに、何でアタシ達に依頼するんだい?」
「便利屋として使うつもりですか?」
「違います! そんな命知らずな事しませんよ! 一部に非常に硬い岩盤があって、そこの採掘が止まってるんです」
「土魔法を使えばいいだろう?」
「低ランクの仕事としても、低ランクを鍛えるという意味でも、低ランクにやらせる仕事ですね」
「それが、結構な高ランクでも崩せないんですよ」
「ヴェルさん。その岩盤の色は青緑っぽい色をしてませんか?」
「えっ!? いえ、色までは分かりません。私は見ていないので」
「あの! 自分は見ています! 確かに青緑色でした!」
おーい……。立て続けにコレかよ。何か呪われてないか? あの洞窟は魔銅があったから、それ以上調べてなかったんだよな。希少金属祭りでもやってんのか? 勘弁してくれよ……。
「知っているんですね!? じゃあ何とかして下さい!」
「お断りします!!!」
「えぇっ!? 依頼ですよ!? ちゃんと依頼にして報酬も出しますよ!?」
「あー……。アルド、青緑ってもしかして?」
「私も分かりました。アルドが嫌がるのも良く分かります」
「何ですか? その、嫌がるって……」
「「マナリア」」
「はっ? ……マナリア!? えっ、何でマナリア!?」
「知らないよ、そんな事は」
「ど、どうしましょう!? マナリア何て知られたら!?」
「絶対に面倒なのが絡んで来ますね。頑張って下さい」
「そんな!? 助けて下さいよ!?」
「助けろったって……。王を巻き込んだらどうだい?」
「それが1番いいでしょうね。流石にバカどもでも、王に喧嘩を売ったりは出来ません」
「とにかく、村長に伯爵宛の手紙を書かせな」
「マナリアの報告はするべきでしょうね」
「分かりました!」
ヴェルさんは村長の所へ行ったが、直ぐに戻ってきた。その後は色々な話し合いが行われ、何故か領都の伯爵に手紙を届けるハメに。俺の平穏はドコに飛んでったんだ?。
領都の案内役として、何故か5人組もついて来る事になったらしい。今から出発して領都に行くのだが、領都までは3日から5日ほど掛かる様だ。なので、必要な物の買出し等をする。
俺は宿の女将さんに宿泊費を返して貰ったり、部屋の片付けをしたりする為に宿に帰る。宿に戻り事情を説明して、銀貨1枚と大銅貨10枚を受け取った。
元々割引されていたらしく、計算が合わないが気にしない。部屋を片付けてから、限界を超えて浄化した。出て行くからこその最後の実験だ。やれるだけの事をやろう!。
大きな部屋は澄み渡った空気になり、厳粛かつ荘厳となった。その空気は、2度と普通の空気には戻らないんじゃないだろうか? そう思わせる程だった。荷物と共に部屋を後にする。
女将さんにリヤカーをあげる事にした。最近使ってないし、宿の従業員の方が使ってくれるだろう。道具は使われないと意味が無いし、あのまま放置はちょっとなぁ……。
村の入り口で2人と合流し、5人組を待つ。それほど待たずに5人組も来たので、まずは東のサングの町を目指して出発する。
村を出て北に進んで行くのだが、緊張感があるのは何故だ?。
「えっ? 魔物の警戒をするのは当然ですよ?」
「えっ? 警戒する為の技は?」
5人組は【念術】の系統はともかく、【闘気術】の【気配察知】も知らなかった。流石に問題なので【気配察知】を教えておく。ダナとシュラには教えてあるし、基本的には使える。
歩きながら生き物の気配を感じる。最初にしてはハードルが高いが、動きながら使えないと意味が無い。その為、訓練として5人全員にやらせる。
「全く分からない……。本当に気配なんて分かるの?」
「分からないけど、出来る人が居る以上は……」
「とにかく頑張らなきゃ」
魔人、サキュバス、エルフ組は上手くいかないらしい。魔力に寄った種族だから仕方ないのかな? でもシュラは直ぐに出来たしなぁ……。訓練を続けれは大丈夫だろう。
「ん? あそこかな?」
「うん。たぶんあそこ」
「へぇ、中々上手いじゃないか」
「そうですね。その調子で頑張りなさい」
逆に、虎人と狼人の2人は上手くいってる。朧気ながら気配が掴めるようになってきた。やはり獣人は闘気に関するセンスが高いな。神官って浄化魔法を使う仕事なんだけどね。
分かれ道まで来たので東に進む。ここを東に行く事さえ初めてで、若干テンションが上がってる。いい気分のまま先へ進んで行くと、妙な男4人組が出て来た。
「アンタ等サングの町まで行くのか? どうだい、護衛してやろうか?」
「下心がミエミエ過ぎるだろ。せめて、もうちょっと隠せよ」
「ああ? 野郎はお呼びじゃねーんだよ! 死にた」
鬱陶しいので顎を殴って気絶させた。こういうバカが出てくるのは、お約束とはいえ面倒臭い。どうせ騒ぐのは分かっているので他の連中も潰しておく。
「さて、先に進むか」
「そうだね。バカに関わる程アタシ達は暇じゃないんだよ」
「全くです。こういうゴミは本当に居なくなりませんね」
5人組が苦笑いを浮かべているが、気にしなくていいよ。当たり前だが、バカな事をするヤツが悪い。魔物に食い殺されても仕方がない。連中がやろうとした事はそういう事だ。
殴って気絶させたが、お前等成功してたら何をするつもりだった? つまりそういう事だ。被害女性が死ねば、死人に口無しになってしまう。だから先制攻撃をする。
地球でも近代に入るまでは自分の命は自分で守る、その為の先制攻撃は当たり前だった。出会う人間全員にそうするワケじゃないが、さっきのバカどもは完全にアウトだ。
危険な時代というのは、誤解される行動をした方が悪いのだ。誤解されない為に気を付ける、それが当たり前の事なので俺の行動は普通の行動となる。
とにかく町まで進もう。
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0058終了時点
金貨27枚
大銀貨27枚
銀貨15枚
大銅貨16枚
銅貨5枚
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトの小烏丸
剣熊の爪の斧
風鹿の角の十手
剣熊と銅亀の革鎧
剣熊の革の剣帯
剣熊の革の指貫グローブ
剣熊と銅亀の肘防具
剣熊と銅亀の膝防具
剣熊と銅亀のブーツ