0584
カマクラに戻ると早速料理を始める。ただ、皆からは米を炊いてほしいというリクエストがあったので、俺は3つの土鍋を駆使してご飯を炊く。
この時代だと保存に適した殻付きの米が当たり前だ。俺もネットで読んで知識だけはあったが、昔は冷蔵庫も無いので、殻と言うか籾のまま保存していたそうだ。
玄米にすると保存性が落ちるらしく、食べる為にいちいち籾摺りをしていたらしい。更に玄米から白米にするのが重労働で、ひたすら玄米を棒で突くぐらいしか方法が無い。
いつかは覚えて無いが、結構経ってから水車で精米をするようになったらしく、昔は玄米が当たり前だったと聞く。白米は超高級品だったみたいだ。赤米とか黒米が主流だったとも聞く。
まあ、俺がそんな時代に合わせる必要などなく、【分離】を使って籾と糠をさっさと剥がしてしまう。糠は糠漬けに使えるのだが、糠床の作り方を俺は知らない。
いや、正確には最初の糠床の作り方が分からないんだ。他の糠床を少し貰ってきて作る方法なら知ってるんだが、最初の糠床がよく分からない。
なので糠漬けは残念ながら選択肢から除外する。でも糠漬けを除外したら、糠の有効な活用方法が無いんだよなー……。
昔は石鹸の代わりに使われていたらしいのは知っているが、【浄化】の権能が使える俺にそんな物が必要か? と言えば終わる話なんだよ。……埋めるか。
【粉砕】した後で、適当に土と混ぜて埋めておけば肥料になるだろう。それよりも、さっさと米を炊こう。
皆の目が厳しくなってきた。土鍋を前にしてジっと考え込んでいる俺が悪いんだが、この調子だと思考が終わらない気がする。
米に聖水を【浸透】させたら、10分掛けて沸騰させる。今回は土鍋3つ同時だ。沸騰したら、弱火の温度にして20分ほど炊く。
後は蒸らして終わりなんだが、ダリア! 触らない! 蓋が開いて圧力が逃げたら美味しい米にならないだろう。
……そうそう、出来上がるまでは静かに待つんだ。今回は土鍋1つで4合炊いたから、全部で12合のご飯だ。流石に満足するよな? おにぎりは全部食われたけど、流石に……。
皆が作ってくれたスープを椀に入れ、残っていた大怪鳥の肉も焼けてきた様だ。大怪鳥の肉は味噌漬けにした後で、【熟成】してから焼き網で焼いていたんだが、丁度焼けたようだな。
大怪鳥の味噌漬けステーキと、竜のかす肉と野菜のスープ、それとご飯だ。それじゃあ、遅い夕食を始めようか。
「うんうん、これ美味しいね! 味噌っていうのに肉を漬け込んでたから大丈夫かと思ってたけど、中まで味が染みてる割には肉の風味も感じられて美味しいよ」
「ええ、これは良いですね。満遍なく味が付いていて美味しいですし、この少し焦げた所が逆に美味しいとは驚きました。匂いが良いですね」
「珍しい調味料だと思うけど、アルドに聞いたら大豆を麹? というので発酵させて出来てるんですって。こんな色だから気になってたんだけど、材料を聞いたら安心したわ」
「私も聞いたけど、出来上がるのに2季節から1年は掛かるらしいから、作るのも大変な調味料だよ。まあ、1度仕込めば後は放っておいて良いそうだけどね」
「それでも1つの樽に100キロ仕込んだりするのだろう? 仕込みの重労働は凄い事になるだろうな。私達の様に身体強化を使わずとなると、その苦労は想像を超えるのかもしれない」
「1つの樽で100キロって凄いね。アルドが買った6キロで銀貨4枚でしょ? 案外ボロ儲けして……いや、材料費を考えると安いのかな?」
「別にどっちでも良いけどな。少なくとも、出来上がるまでに半年は掛かるんだ。それだけ大変なんだから、ある程度の値段がするのは仕方がない。それに材料の量も相当だろうし、作るのに失敗したら大損だ」
「確かにね。沢山作るのはいいけど、長い時間が掛かるって事は結果が出るまでに腐る可能性もある訳だ。特に雨が多いと腐りやすいだろうし、大損というのもよく分かるよ」
古い時代の味噌作りは、大変なんて言葉じゃ言い表せないくらいに大変だろうと思う。温度計とか湿度計がある訳でも無く、職人の勘と経験だけを頼りに作ってるからな。
出来も毎年大きく違うだろうし、菌を扱う仕事が大変なのは想像でも分かる。
「しかし、お金を持ってない盗賊だったね。代わりに武具はそれなりだったけど。あの武具を買うためにお金を使ってたんだとしたら、更に手広くやるつもりだったのかねぇ?」
「更に手広くと言っても、商人からすれば避ければいいだけなので限度があると思うのですが……。この地に拠点がある限り、離れるのは難しいでしょう」
「でしょうね。それに防衛には向いていても、打って出るには向いていないわよ? あそこの盗賊は篭っているからこそ強かったのだし……」
「出てきたら、そこらの有象無象と変わらない……か。確かにね。じゃあ、何の為に武具を買っていたんだろうね? ちゃんとした鎧や兜だった以上は、結構な値がしたんじゃないかな」
「それだけではなく、盗賊にちゃんとした武具を売った奴が居るという事も考えるべきだろう。きちんとした武具を装備させる……何処かの戦争に参加するつもりだったのか?」
「名を上げる為……? それとも復讐相手でも居たのかな? まあ、どうでもいいんだけど。結局のところ、盗賊として殲滅されて終わった訳だし」
「仮に何処かの戦に参陣したとして、大したところには配置されないだろう。死にやすいところに配されて終わりだ。もしくは何処かに押し入るつもりだったのかもな。もう分からないし、どうでもいい事だが」
「復讐の為なら盗賊をやっていい訳じゃないしね。盗賊と同じ事をやったら、もう盗賊さ。後は盗賊と同じ末路を辿るだけ。せめて建前ぐらいは整えないといけないって知らないんだろうねぇ」
「ただの盗賊なら、盗賊として恨まれるだけですしね。まあ建前を整えたところで盗賊に変わりはないのですが、それでも印象は違います。そこも怠ったら、どう思われても文句は言えません」
「まあ、もう終わった事だし、奴等の武具も金属以外は燃やしてしまったしな。普通の武具ばかりで、これと言って優秀なのも無かった。持って帰って売ろうとすればバレるかもしれないし、結局あれ以上の儲けを出すのは無理だ」
先程の盗賊との戦いで少しは発散できたと思ったのだが、皆は戦い足りない様だ。もしかしたら移動優先で旅をしてきた所為で、鬱憤が溜まっていたのかもしれない。何処かで更に発散させたいところだが、そんなに都合よく敵が居るだろうか?。
盗賊も魔物が居るこの世界では多くない。むしろ拠点と実力が無いと盗賊なんて出来ないからな。未だに魔物の天下な以上は、人が外で安全を手に入れるのは難しい。俺達だってカマクラで守っているくらいなんだ。そう簡単な事じゃない。
夕食が終わり、さっさとカマクラに入って休むのだが、ふと思い出した事がある。それはトイレの話だ。この寒い季節、カマクラの外に毎回出て用を足すのも大変なので、カマクラから通路を繋げてもう1つ作った。言わばトイレ専用のカマクラだ。
カマクラ、通路、カマクラの順に作ってあり、間の通路には扉を付けた。全て土で作ってあるが意外に密閉性は高い。トイレは掘ってあり、用を足したら上から土をぶっ掛ければいい。これだけでも臭いは随分違うんだ。
手を洗う場所も、尻を拭く紙も無いが、そんなものは【清潔】で終わる話だ。今までもそうだし、これからもそうだが、よくよく考えれば使えない人はどうしてるんだろう? ……これは考えない方がいい気がしてきたな。
直ぐに切り替えた俺は、さっきまでの思考をぶん投げて紅茶を淹れる事にする。皆に聞いたら全員飲むという返事が返ってきたので、多めに煮出して皆のコップに入れる。
ヤバいな、そろそろ茶葉が無くなってきたぞ。金貨1枚分買ったとはいえ、流石に限度があるよな。
いつか無くなるとはいえ、ヤシマの国に売っていれば良いんだが……。
▽▽▽▽▽
0584終了時点
大白金貨3枚
白金貨36枚
大金貨152枚
金貨528枚
大銀貨602枚
銀貨530枚
大銅貨336枚
銅貨285枚
神金の矛
神鉄の太刀
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




