0582
出来上がった土鍋は3つ。なかなか上手くいったのではなかろうかと自画自賛していると、大怪鳥の骨を入れた事による効果が気になった。
元の世界には無い、大量の魔力を含んでいた生物の骨だ。何かしらの影響を与える可能性はある。まあ、そんなことを言い始めれば、粘土にだってマナが流れ込んでいるのだからキリがないだろう。今は土鍋が出来た事を喜ぼう。
ここなら大丈夫だろうから試しに米を炊いてみるか。3合分を取り出して殻と糠を【分離】したら、米と聖水を土鍋に入れる。【浸透】を使って多少の聖水を米に浸透させたら、早速【加熱】を使って炊く。
中火~強火で沸騰まで10分、弱火で20分、蒸らし10分と言われるのでゆっくりやっていこう。
【空間把握】を使い10分かけて沸騰するように調整し、沸騰したら弱火の熱量でじっくりと炊いていく。その間に、他の土鍋でも同じ様にご飯を炊く。
土鍋というのは普通、最初におかゆなどを作って細かな穴を塞いだりするんだが、俺の場合は【圧縮】して塞いでしまえばいいので気にしない。そんな事よりも米が先だ。
じっくりと米を炊きながら、ゆっくり待っているとダリアとフヨウがやってきた。どうやらいつまで経っても帰ってこない俺に、業を煮やしたらしい。
ただ、ダリアとフヨウは俺の横に座ると、ボコボコと沸いている土鍋を黙って見続けている。どうやら2匹とも、食べ物を作っているという事は直ぐに分かったらしい。
人間と同じ知能を持っていても、ここら辺は動物と変わらないんだよな。そう思ったんだが、食べ物の前で大人しく待つのは人間も変わらないか。
【空間把握】を使い、最初の土鍋でご飯が炊けたのを確認したので蒸らしていく。ダリアとフヨウには絶対に触らない様にと注意をし、他の2つの土鍋に集中する。
2匹とも、まだ熱い土鍋を触ろうともしないだろうけど、先に注意しておかないと圧力が逃げたら目も当てられない。圧力が掛かる事で芯まで柔らかくなるんだ。
他の2つの土鍋も蒸らしに入ったので、最初の土鍋はほぼ完成と言って良いだろう。早速蓋を開けると、お馴染みの米の香りが”殆どしない”。
……あれ? なんでだ? アイテムバッグに入っていた木をしゃもじに【変形】して混ぜる。下の方におこげが出来ているが、妙に香りが薄い。もしかして古い時代の米だからか? ……困った事に原因が分からない。
少し食べてみると、ちゃんとご飯の味がするので成功だとは思うが、思い出の中のご飯に比べて美味しくない気がする。
米の質が悪いんだろう。よくよく考えてみれば、多くの品種改良を経ての味だったんだから、この時代の米で同じ味を求めても無理か……。それでも十分にお米なんだから文句を言っちゃいけないな。
ダリアとフヨウから「頂戴!」という声が聞こえた気がしたので、多少の塩を混ぜて【念動】でおにぎりを作っていく。2匹の皿に1つずつ乗せてやると、2匹は少しずつ食べ始めた。
初めての食べ物なので警戒してるんだろうが、米の甘みを理解したのか直ぐにムシャムシャ食べている。フヨウは丸々一個を取り込んで、何故かゆっくりと溶かしている。初めて見るが、もしかして気に入ったのか?。
他の土鍋のご飯も全ておにぎりにしてしまい、アイテムバッグに仕舞う。使った土鍋は【浄化】で綺麗にしたものの、何故か内側に御飯が付く事も無く綺麗に取れる。これが大怪鳥の骨の効果だろうか?。
ダリアとフヨウが「もっと寄越せ!」と五月蝿いが、後は夕食だと言って皆の下に戻る。皆はカマクラの前でゆっくりと寛ぎながら、【気配察知】での監視を続けていてくれたらしい。
煮炊きをすると蒸気が出るが、それで盗賊にバレるかどうかは分からない。俺達の料理は薪や炭を使わなくても出来る為、焼かずに煮炊きだけなら蒸気は出るが煙は出ない。
どうしようかと考えていると夕日が照らし始めたので、素直に聞いてみる事にした。
「料理をしても魔法を使えば出るのは蒸気だけなんだが、それで盗賊達がこっちに気付くと思う? 俺は盗賊どもに気付かれると思うが、確率的には五分五分ぐらいかとも思っている」
「うーん……煙ならともかく、蒸気って気づき難いしねぇ……。更に言えば死角となっている場所だから、アタシは七分三分くらいだと思うけど?」
「私も気付かれる確率はそんなに高くないと思います。そもそも盗賊でしかありませんし、油断もあるでしょう。攻められるという事を考えていないなら、見つからないでしょうね」
「でも今回は私達も戦うんだし、なるべく気付かれないようにするべきじゃないかしら? わざわざ敵にこちらの場所を教えてしまう事も無いと思うけど……」
「何と言うか悩ましいところだね。美味しい物は食べたいけど、見つかりたくは無い。私としては、どちらも正しいと言うしかないと思う」
「それか、今は適当な物を食べておいて、殲滅したら普通の料理を食べれば良いんじゃないか? そんなに時間の掛かる相手だとは思えないしな」
「それは、そうだね。パパッと片付けて、さっさと美味しい物を食べれば良いだけだよ。アルドが居ない時に頑張って数えたけど、全部で70人ぐらいしか居ないから、あんまり時間は掛からないと思う」
「戦うのは俺が偵察してきた後だけど、殴りこみ前の食事は適当な物で済ませるか……」
俺は作ったおにぎりを乗せた皿を出し、皆を浄化したら食べるように言う。皆は白い粒々の三角形に戸惑ったが、ダリアとフヨウにも出して食べさせると理解した様だ。塩おにぎりでしかないが意外にも好評だったのは、皆も米の甘みに気付いたからだろう。
皆と一緒に食べながら【探知】で探ると、おおよそ75人ぐらい盗賊がいる。夕方になってアジトに戻ってきたのかもしれないが、そこまで人数が増えてもいないので大した脅威じゃない。
仮に正しい身体強化が出来ても、感じられる魔力量や闘気量では相手にならないレベルだ。皆が戦っても、特に問題も無く勝利するだろう。紅茶を煮出しながら考えを纏めていた俺は、皆のコップに入れながら人数を話しておく。
ゆっくりと夜に移り変わっていく中で、熊のきぐるみは勘違いされるかもしれないと思い、きぐるみの首から上をフードの様に被っておく事を提案すると、皆も悪い顔で笑っていた。
夜になって辺りが真っ暗になると、俺は隠密の4つの技を駆使して小山の上に近付いていく。今日は新月なのか特に真っ暗だが、【空間把握】で全てが見えている俺には障害にならない。
どんどん小山を登りながらも罠が無いかチェックしているが、何一つとして発見できなかった。罠も無く立て篭もってるのか? ここの盗賊は。何だか意味が分からないが、廃城の防御に物凄い自信でもあるのかね?。
小山を登り頂上にある城に近付いていくと、周りを監視する兵も碌にいないが、【探知】で調べた通りの盗賊だと分かった。分かりやすく言うと、壁からの飛び道具で今まで勝っていたという事だ。
珍しい事に、この廃城の壁は分厚い石壁なんだ。普通の者では魔法でさえ崩せず、矢では弾かれるだけだ。石壁の周りには幅4メートル程とはいえ堀も掘ってある。
あの堅固な石壁と堀で今まで防いできたんだろう。盗賊といえども弓矢ぐらいは持っているかもしれないし、石ぐらいは投げてくるだろう。
75人という人数なら多少の兵が攻めて来ても守れるだろうし、元々は城なんだから防御力が高いのは当然か。【空間把握】で知ってはいたものの、近付いて確認すると実感する。普通の奴等じゃ突破が難しい事を。
壁の一部が空いているが、どうやらあそこが出入り口らしい。昔は門扉でもあったんだろうが今は何も無く、その手前に荒い堀が掘られている。
おそらく門扉の前は向こうの地面と繋がっていたんだろうが、門扉が無いので盗賊が堀を繋げて入れなくしたみたいだ。向こうの内部に木の板が確認出来るので、それを使って出入りしてるんだろう。
ここまで分かれば偵察は終わりで良いな。堀は埋めれば済むし、俺達にとっては何の問題も無い。後は逃がさずに敵を殲滅するだけだ。
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0582終了時点
大白金貨3枚
白金貨36枚
大金貨152枚
金貨528枚
大銀貨591枚
銀貨497枚
大銅貨284枚
銅貨238枚
神金の矛
神鉄の太刀
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




