0578
順調なまま進んでいたが、遂に皆は暇になったらしい。魔法をあっちこっちにブッ放したりして遊んでいる。
……まあ、魔物が襲って来ないなら構わないし、むしろ魔物は逃げている様だから良いんだけどさ。【火魔法】だけは危険だから止めてくれないか?。
俺が文句を言うと危険だという事を正しく理解したのか直ぐに止めてくれたが、最初から使わないでほしかった。その後は【水魔法】や【風魔法】の練習をしている。
特に【水魔法】は、近くに海水が山ほどあるので魔力の消費が随分少なくて済む。それは良いのだが、魔法陣が置いていかれてしまって効果が正しく判断出来ない事が多い。
前に発動すると危険なので横か後ろにしか発動できず、横か後ろに発動すると時速60キロで置き去りにされる。微妙な練習状況だが、ストレス解消には良いのかバカスカ撃って楽しそうだ。
昼頃になり、昼食用に買ったサンドイッチを食べながら舟を走らせていると、無人の島があった。……まさかコレが無人島か?。
神様に言われた通り東北東に進んできたが、こんなに早く無人島に着くのか? 怪しいが【探知】や【空間把握】を使っても、ラノベにありがちな巨大な亀だという事も無い。
それなりに大きな島で、ルーデル村が丸々3つ入るくらいに大きい。俺はその無人島の砂浜に【念動】を使ってゆっくり舟を着けると、皆に降りる様に指示した。
皆が降りた後に俺も降りて、舟を【念動】で砂浜の向こうの土の部分まで上げる。これで寝ている間に流されたり、壊されたりする事も無いだろう。舟の近くにカマクラと焼き場を作り、ゆっくりとする事にした。
魔力は大丈夫なんだが、集中力が切れそうだ。流石に【魔術】を使って舟を動かしつつ、【空間把握】で方角を確認し、【探知】で魔物の警戒をするのは大変だ。
正直言って、【念神】が一日では無理だと言ったのは、集中力の問題じゃないかと思っている。ちょっと甘く見ていたかのかもしれないが、単調な中で集中力を維持するのってこんなに大変だったか?。
やっぱり神界と下界では違うんだろう、ここまで維持出来ないとは思わなかった。今の内に分かって良かったのかもしれない。そういう風に前向きに考えよう。
とにかく回復の為にボーっとしていると、皆は島の探検に行った様で居なくなっていた。居ないと言っても【探知】で確認出来るので、特に危険は無い。
精神的に回復する為に瞑想でもするか。座り方なんて何でも良いし、出来るのなら寝転がっていても構わない。瞑想で大事なのは自分の内側に意識を向ける事であり、自分を見つめる事だ。
そんな集中している様な、それでいて散逸している様な。意識が有る様な、無い様な状態になっていると、突然体の上に重さを感じて意識が明確になった。
仰向けになっていた俺の腹の上にダリアが乗ってきたらしい。そのダリアさんは、何も気にせずに俺の腹の上で丸くなると目を閉じてしまった。俺も再び瞑想を始めるものの、先程の深さの瞑想は結局出来なかった。
仕方なく起きあがってダリアと紅茶を飲んでいると、皆が帰ってきた。色々な場所に行ってきたそうだが、食べる物などは無かったそうだ。
ただ、季節的な所為であり、果物が生る種類の木はそれなりにあったらしい。それと、誰かが掘った様な井戸もあったみたいだ。俺達には必要無いが、どうやらここが休む為の無人島で間違い無さそうだな。
夕日が顔を出し始めているので、皆には小麦の全粒粉を出して生地を大量に作ってもらう。俺は竜のかす肉と野菜のスープを作る。聖水と野菜と竜のかす肉を入れて、塩や香辛料を入れたら煮込んでいく。
その間に島の木を2本ほど伐採し、【錬金術】と【練成術】を使って5段の蒸篭を作った。それと蒸し専用の超魔鉄の鍋も作り準備は完了だ。
練ってもらった生地を、ある程度の大きさに丸めたら蒸篭の中に入れていく。一杯になったら次の段へ。そうして5段が一杯になったら蒸していく。
海水から聖水を作り出して蒸しているので、それがどう影響するかは分からない。多分美味しい方向に影響してくれるとは思うが……。
スープができたので、残りの生地は薄い円形にして竜の脂で揚げていく。良い匂いが漂っているが、これは明日の昼食だ。だからダリア、涎を垂らしてても駄目なものは駄目だ。諦めなさい。
近くに来て甘えてくるダリアに「明日の分だ」と何度も牽制しつつ、夕食と明日の昼食分が完成したので食事にする。皆は早速とばかりに饅頭を手に取って食べたが、あの笑顔を見るに成功だった様だ。
「アルドの作った饅頭の方が美味しいね! ジャリジャリしないし、モッチリしてて柔らかい。それに麦の香りが優しいよ。同じ饅頭でも、こんなに変わるものなんだねぇ」
「本当ですね。ここまで違うと、もう別の料理だと言っても良いのではないでしょうか。そう思える程に美味しいです。あの饅頭を作り出した店のものよりも上ですよ」
「やっぱりキメの細かい粉と、アルドしか作れない聖水の効果が大きいのでしょうね。蒸す時にも聖水を使っているから、外と中からの聖水効果だもの。二重の聖水で美味しくなるのだと思うわ」
「コレだけで食べても美味しいけど、スープに浸けて食べると更に良いね。竜の腸の濃厚な旨味と野菜の旨味が饅頭が吸って、堪らない美味しさになるんだよ」
「うんうん、確かにコレも良いな。しかし饅頭を食べると分かるが、柔らかいが食べ応えはあって意外にお腹に溜まる気がする。そうだとすると、昼食に適しているんじゃないか?」
「それは、どうなんだろうね? アルドも何か考えがあって揚げパンを明日の昼食にしたんだろうし、何か意味があるんじゃないかな」
「深い意味は無いが、明日の昼食は舟の上の可能性が高い。だから、食べ易くて単品で味が有る物にしたかったんだよ。舟を止めて昼食をとる訳にもいかないし、舟を走らせながら寸胴鍋を出す訳にもいかない」
「「「「「「あ~……」」」」」」 「ニャー……」 「………」
どうやら皆が揚げパンを明日に回した理由を理解してくれたらしい。舟の上だと手軽に食べられて味が強い物の方が良いだろうと思ったのは、今日のサンドイッチですら食べ難かったからだ。
揺れる舟の上であり、時速60キロを越える舟の上だ。食べ難さを考えるべきだった。
御蔭でサンドイッチを食べるのでさえ、飛ばされないようにして食べる必要があった。舟自体は海水を操作しているので問題は無いのだが、むしろ風の影響を結構受けている。
海水で舟が傷むのではなく、風圧で舟が傷んでいる有様だ。仕方がないとはいえ何とも言い辛い。やっているのは俺だしな。
食事をしながら明日の予定を話していく。とはいえ、何時頃に博多辺りに着くのか分からないので、結局は着いた後の行動を考える事になる。港に泊めさせてくれるのか、または襲ってくるのか、そんな事から考えなくちゃいけない。
何パターンでも良いので、先にシミュレーションしておく事で咄嗟の対応は可能になる。突然襲われるという事は多分無いだろうが、身包み剥がしにくる可能性はある。
昔の日本って庶民でもそんなものだが、同じ時代だと中国大陸だろうがヨーロッパだろうが同じだからな。隙を見せたら奪われるのは変わらない。特に港は。
食事後、カマクラの中に入り休憩する。この無人島の話を聞くも大した物は無かったらしく、探検自体は直ぐに終わったらしい。
後は食べ物が無いかと探していただけらしく、面白いものは何も無かった様だ。残念そうにしているが、”無人島”に何を期待してるんだか……。
ダナが言うには、この島では陸上の魔物の気配すらなかったらしい。鳥系の魔物は居るかもしれないが、蛇や蜘蛛の魔物ですら居ないという奇妙な島だと言っていた。
俺としては、おそらく鳥系の魔物に喰われたんだと思う。鳥も魔物になると雑食になるのが多いので、蛇や蜘蛛だって普通に喰われてしまうからな。
地球の食物連鎖は、この世界には通じない。
▽▽▽▽▽
0578終了時点
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アダマンタイトの十手
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王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




