0571
「さて、夕食を食べながらでいいから聞いてほしい。俺が情報を聞いた村人の1人が、近日中にチャンニの町を反乱軍が襲うらしいと言ったんだ。当然【白痴】を使って聞き出しているんで嘘は無い。あくまでも”らしい”という事だが、皆はどう思う?」
「どうって……もしかして反乱軍が襲う場合、アタシ達の到着とかち合う可能性があるって事かい? んー……仮に反乱軍に襲われている時に近付けば、間違い無く双方から敵扱いされるよね?」
「そうですね。実際に大規模な暴動の様なものでしょうから、とにかく近くに居る知らない者は敵扱いするでしょう。攻める反乱軍は大義とやらを振り翳すのでしょうが、暴れて略奪したいだけの者も多いでしょうし、襲われていたら近付かないのが1番ですよ」
「こういう事は、多くはないけど実際にある事よ。私腹を肥やす領主に対して民衆が蜂起する。聞こえは良いけど、略奪の嵐になって多くの人が不幸になるわ。結局、領主が不正をやっていた頃以上に貧しくなってしまうのよね」
「本当にね。私も似た様な事を嫌になるほど見てきたよ。そんな事をしたって誰も得をしないのに、後先考えずに暴れて破壊の限りを尽くすんだ。結果的に多くの人が死に、食べる物も失われて飢える者が大量に出る。碌な事じゃないよ」
「それでも怒りのやり場が無く、事に及んでしまうのだろうな。善政を敷いていても、凶作で飢えれば暴れる事もあるらしいのだから、領主にとっては堪ったものではないだろう」
「かつての時代にはそういう事もあったと聞いた事はあるけど、アルメアにとっては見てきた事なんだね……。僕は見たくないけど、見せられた方は辛いだろうと思うよ」
「話が横に逸れたが、町が襲われていたら絶対に近付かない。これを結論としたいがいいか?」
「いいよ。特に反論する事も無いしね。ただ、アタシ達が町に居る時に攻め込まれたらどうするんだい? 最悪の形だけどあり得ないとは言い切れないから、先に考えておかないと困る事になるよ」
「そうだな……最悪の場合は、全力の身体強化を使って逃走しよう。誰に見られても構わないから、町の門や壁を跳び越えてでも逃げる。そう決めておけば大丈夫だろう。どのみち攻められたなら、俺達に構っている暇なんて無いだろうし……」
「主様の仰る通り、その状況なら既に町の中はパニックだろうから有耶無耶になると思うよ。それに緊急時だし、私達の実力を見せてはいけない訳でもないしね。私達が全力で逃げれば、逃げられない事なんて無いさ」
「チャンニの町は結構離れてるが、本来は北の方にある村を経由していくのが正しい道順らしい。俺達にとってはそこまで遠くない距離だが、同じぐらいの距離でチャンニの東の町に着くそうだ。東の町の名前はアイウェンで、その向こうに王都ウェロンがあるそうだ」
「本来の経由地を無視して進めるのは私達の強みだが、それでも結構な時間が掛かりそうだな。急ぐ旅ではないが、変な所に寄って妙な揉め事に巻き込まれるのも困る。出来得る限り戦争の様な揉め事は避けたい」
夕食を食べた後に、紅茶を淹れて皆でゆっくりする。まだカマクラに入ってはいないが、今日は妙に夜空が綺麗だ。
寒くなってきたのと、あまり夜空なんて見なかったから気付いて無かったんだろう。大気汚染なんて殆ど無い世界であり文明だ、夜空が綺麗なのは当たり前なのかもしれないな。
皆も夜空を見ているものの、そこまで感動はしていない感じだ。綺麗な景色もずっと見ていたら飽きるし、首が痛いので見上げるのは止めよう。
紅茶も飲み終わったので、そろそろカマクラに入るか。加熱機を設置してカマクラ内を温めると、ゆっくりと室温が上がっていく。使い続けても一定以上には上がらないので便利だ。
熊のきぐるみを綺麗に浄化してから脱いでアイテムバッグに収納すると、女性陣は酒を飲んでいた。
昨日ウイスキーを作ったからか早速飲んでるな。水の季節は酒の原料が少ないので皆はチビチビ飲んでいるが、次のチャンニの町が大丈夫なら酒の原料を買いに行きそうだ。
別にエールでも良いんだが、アイテムバッグに収納できる量にも限度があるのでエールよりはウイスキーで持っておきたいんだと思う。
気持ちは分からなくもないが、アルコール度数で決めるのはどうなんだろうな。俺は飲まないからか理解出来ない。ディルに指導をしながら過ごしていると、どうやら全員撃沈していた。
【念動】を使って移動させ、ディルを【房中術】と【鋭覚】で満足させたら寝かせる。全て綺麗に浄化したら、おやすみなさい。
<異世界237日目>
おはようございます。今日の朝は多分寒くないと思います。どうも昨日の朝と随分外の雰囲気が違うので、やはり昨日の朝の異常な寒さは大河の近くだった所為だろう。
熊のきぐるみを着て外に出てみるが、昨日の朝の様な寒さは無い。直ぐにカマクラを閉じたが、そこまで急ぐ必要は無かったかもな。
チャパティの生地を作りアイテムバッグに収納する。次に魚を捌いてから塩を振り焼いていく。焼けたら皿に盛ってアイテムバッグに収納しておく。
鍋に焼いた骨と聖水を入れて出汁を作り、その中に魚醤などを入れて味を整える。後は出汁の入った魚醤を塗りながらチャパティを焼き、最後に解した魚の身と野菜を乗せて2つ折りにすれば完成。
魚のタコスみたいな物を量産していき、作り終わった頃に皆が起きてきた。
「「「「「「チュッ! おはよう、皆」」」」」」
「おはよう、皆」 「ニャ」 「………」
「今日の寒さは随分マシだね。やっぱり昨日は大河の近くだった所為で、あんなに寒かったんだろう。まだ土の季節だから昨日は偶然寒くなっただけかもしれないけど、昨日の寒さは水の季節でも珍しいぐらいの寒さだったからね」
「そうですね。おや、もう朝食が出来てたんですか? 頂きます。これは魚の身が入っているんですか……うん、これはこれで有りですね。思っているよりも美味しいです」
「そうね。内側に塗ってある魚醤の御蔭で美味しいのかしら。珍しいとはいえ、なかなか美味しいものね」
全員それなりには納得してくれたらしいが、そこまででは無かったみたいだ。残っていた魚を使い切りたくて使ったんだが、無理に使わなかった方が良かったかもしれない。
スープ類が無かったのも失敗だったんだろう。どうしようか悩んだんだが、結局止めたんだよな。
そんな朝食後、フォルにカマクラと焼き場を壊させて先へと進む。壊し方がまた一つ上手くなった様だ。そんな事を考えながら走って行き、昼前ぐらいにチャンニの町に着いた。
特に荒らされているでもない様子に安堵の息を吐きながら、門番に話しかける。それなり以上に怪しまれたが、それでも反乱軍とは関わり無しとして町に入る事が出来た。
皆には食料店に行って買う物を買ってから情報収集しようと言い、真っ先に食料店へと行く。皆は大麦などを見て回っているが、俺とディルは珍しい物を探す。
朝食で草原の国で手に入れた小麦は無くなったのを思い出し、小麦を購入しておくのと、冬場の野菜を買っておく。この国は雪が殆ど降らないと聞いていたので冬場の野菜があると思っていたが、俺の予想は当たりだった様だ。
他にも、こっちの国々でも使われている胡椒モドキの様な香辛料も買ったりしたので、結果的に全部で金貨1枚分も購入してしまった。皆も大麦を多めに買って食料店を後にする。
食料店を出た直後、門の方から大きな音がして一気に騒がしくなった。予想はしていたが、本当に俺達が居るタイミングで町が襲われたらしい。
【探知】と【空間把握】で確認すると、結構な数の反乱軍が町の門に襲い掛かっているのが分かる。
この町の門は東西南北に1つずつあり、それぞれに対して同時に襲い掛かっている。反乱軍の数は思っているより多く、このままだと町が陥ちる可能性は高いと思う。どこか1つでも門が突破されたら終わりだろう。
それまでに脱出しないとな。
▽▽▽▽▽
0571終了時点
大白金貨3枚
白金貨36枚
大金貨152枚
金貨528枚
大銀貨599枚
銀貨501枚
大銅貨388枚
銅貨253枚
神金の矛
神鉄の太刀
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




