0559
遠いと思っている根拠だが、仮にディキマが急いで時速5キロだとしよう。この星では1日が28時間ぐらいあるので、今の季節は夜中だけでも15~16時間ある。
つまり、1日での移動距離は75キロから80キロほど。それで10日なんだから750キロから800キロ程ある訳だ。
実際にはもうちょっと少ないかもしれないが、単純な考えでの砂漠の総距離である2000キロの内、3分の1以上を占めてしまう。
ヴァルド少年達は、よく越えられたもんだと感心するレベルの距離だと思う。もしかしたら、お荷物であるヴァルド少年を抱えていたから時間が掛かったのかもしれないが……。
それでも結構な距離を移動する事になるだろう。気合を入れて頑張らないとな。そう思いながら走っていると、不思議な建物が左の方に見えた。
方角的には北東の方向だが、何やらピラミッドの様なものに見えなくもない。とはいえ、そんな物に構っている暇は無いのでスルーして行く。
それに近くに魔物が多い。アレは迂闊に近付くと魔物に殺されるだろうな。気になって近付くと殺されるトラップみたいなものか。皆も特に気にしていないので完全に無視して移動を続ける。途中に休憩を挟みながら、同じ様な景色の中を走り続けた。
俺達の場合は暇なら【念話】を使っているので良いのだが、普通の商隊は大変だろうと思う。それとも慣れていて苦にならないのだろうか?。
走らなきゃいけないからまだマシだとは言えるが、ディキマというラクダの上ではもっと暇だろうと思う。砂漠を越えるって色んな意味で大変だよ。
そんな事を考えていると夜が明けて来たので、今日はココまでだ。カマクラと焼き場を砂丘の頂点に作り、床もしっかりした物にしておく。この辺りも風は強くなく、食べ物に砂が付く事は無さそうだ。
俺はカマクラの中に入り、まずはゴブリンを解体する。綺麗に浄化した後に冷凍しているので、臭味も無い。皮は【乾燥】させて燃やす事にした。残りの肉と内臓をアイテムバッグに入れてカマクラの外に出る。
いつものメンバーに生地作りを頼んで、俺は寸胴鍋に聖水を入れた後、ゴブリンの骨を【破砕】してから鍋に入れる。骨から旨味を【抽出】したら、鍋から【念動】で取り出して遠くに捨てる。
ゴブリンの肉を焼き、ある程度焼けたら鍋に入れて野菜と共に煮込んでいく。そうしていると生地が出来たようなので、平たく円形に伸ばして焼いていく。
チャパティが焼きあがる頃にはスープも出来上がっていたので、ステーキ状にしたゴブリン肉を皆に渡して好きに焼いていく。ダリアとフヨウには浄化した腸を入れてやると、興奮しながら貪り始めた。多分、本能に訴える何かがあるんだろう。
「久しぶりのゴブリン肉だけど、普通に美味しいんだよね。普通に美味しいって、言ってる事がおかしいけどさ、でも普通に美味しいんだよ!」
「まあ、分かりますよ。あのゴブリン肉が普通に美味しいなんて!? って事でしょう? 私も同じで、何度食べても不思議な気分ですよ。とはいえ、美味しい物は美味しいんですよねー……」
「まあ、良いじゃないの。今頃ルーデル村でもゴブリン肉が出ているかもしれないし、驚いている人がいるかもしれないわ。あの不味さを知っている人達からすれば、不思議なのは私達と同じだもの」
「そのうち、ゴブリン肉は当たり前になるんだろうね。かつては不味過ぎて誰も食べられない物だったなんて、誰も覚えていない時代がいつかは来る。哀しい事ではあるけど、楽しみでもあるね。その時代の人は何に驚くんだろう?」
「まあ、そうそう驚く事が転がっているとは思えないが、美味しい物なら何でも良い。安くて美味しいなら誰も文句は言わないし、今後は食べられなかった何かを美味しい物に変えてくれる者も出るだろう」
「ゴブリン肉の話から、自分も何かを探してみようと考えてくれると良いね。そうする人が増えれば、いつかは新しい物が見つかる様な気もするし、古い物も変わっていくかもしれない」
まあ、お金が絡むと調べる者は増えそうだけどな。それはそれで悪い事じゃないから、むしろどんどんやれと言いたいところだ。肉を大量に焼きながら、そんな事を考えていた。
食事後、今日は早めに就寝する事にして、カマクラの中へ皆が入る。出入り口を閉めて入れない様にし、中を綺麗に浄化した。
砂漠の移動中も変わらずに魔道具で浄化しているが、砂漠って思っているよりも邪気が無いんだよな。正確に言うなら澱んでいないと言うべきなんだろう。だからなのか、ここまでの移動で邪生を感知した事は1度も無い。
不思議ではあるが、人にとっても魔物にとっても厳しい環境が、かえって邪気を少なくしているんだろうと思う。邪気が少なく澱まないなら、邪生になる事も滅多に無いのかもしれない。
良い事かもしれないが、生きていくのは厳しい環境だからな。邪気の事を考えても、他の国よりはマイナスと言える。
少し早いが寝なければいけない為、皆に【昏睡】を使って強制的に眠らせる。自分自身にも使って……と。それじゃあ、おやすみなさい。
<異世界231日目>
おはようございます。今日も第三オアシスへの移動ですが、今日には到着したいと思っています。というか、一昨日、昨日とかなりの距離を進んできているので、第三オアシスはそんなに遠くないと思っている。
仮に俺達の速さが時速20キロでも、1日で300キロぐらいは進んでいる。2日で600キロだと考えると、そこまで遠くない筈なんだよな。
そもそも砂漠で距離を測るなんて、現在の技術では不可能だろう。どれだけ頑張っても、誤差は相当大きなものになるだろうから、あんまり意味は無い。
それでも最初のオアシスまで1日ちょっとだから400キロほど、第二オアシスまで1日半だから500キロぐらい、そして第三オアシスが850キロと仮定すれば、総移動距離は1750キロになる。
オアシスは、もしかしたら3つしか無いのかもしれないな。2000キロだと仮定したら、第三オアシスからは250キロだ。砂漠を越えるのは直ぐそこだと言えるので、そんなに遠くない。
そろそろ砂ばっかりの景色にも飽きてきたから丁度良い。そんな事をカマクラを出て料理しながら考えていた。今日は普通にパンを作ってみたが、多分コレで大丈夫な筈だ。
スープは魚と貝の干物と野菜のスープだ。とても砂漠で食べる料理じゃないが、海産物も冷凍しているとはいえ食べて減らさないと傷んでしまう。
後は真っ白なゴブリンの腸や内臓を焼いて食べるくらいなので、準備はとっくに終わっている。紅茶でも淹れようかと立ち上がったタイミングで皆が起きてきた。
「「「「「「チュッ! おはよう、皆」」」」」」
「おはよう、皆」 「ニャー」 「………」
「あれ? 今日はもう食事が出来てるのかい? 手伝えなくてゴメンね。もっと早く起きれば良かったんだろうけど、ビックリするほど良く眠れたよ。スープかい? ありがとう」
「ありがとうございます。昨夜というか、朝は【昏睡】を使ってもらいましたからね。あれを使われると意識が無くなるんですよ。気付いたら朝という事が当たり前なので、眠れない時には助かりますけど、ちょっと怖いところもありますね」
俺は皆に食事を配り、内臓類を焼き網で焼きながら距離の事を話す。時速とか時間とか距離とか、元の世界だと小学校で習う事だが、伝わるのに結構な言葉と時間を要した。仕方がない事ではあるんだけど、知識の無い他人に伝えるって本当に大変だよ。
「つまり、第三オアシスから砂漠の終わりまでは近いと言う事と、ここから第三オアシスまでは遠くないって事ね」
「そういう計算方法があるんだろうけど、主様も仰る通り砂漠では目印になるものが無いから正しい距離は分からない。それでも、ある程度は分かるんだろうけど……」
「アルドが言った総距離が不明という点だな。一応2000キロ? と考えているらしいが、かなり適当だとも言っていたしな……。ただ、私もそこまで遠くはないと思う。年に2度往復できるくらいだ、流石にそこまで遠くはないだろう」
「そうだね、年に2度だもんね。商隊もディキマを使うとはいえ、遅いのに2度という事は砂漠の終わりは近いんじゃないかな?」
そういう期待もあっての数字だけどな。
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0559終了時点
大白金貨3枚
白金貨9枚
大金貨119枚
金貨388枚
大銀貨544枚
銀貨338枚
大銅貨369枚
銅貨220枚
神金の矛
神鉄の太刀
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




