0557
宿の部屋に帰っても中には誰も居なかった。ヴァルド少年の話した様に強襲したらしいが、現在は後片付けを手伝っているらしい。
まあ、結構な被害を周りに出しているので後片付けを手伝うのは当然だろう。そのうえ、第一オアシスとは違い、迷惑料と賠償を貰う事は出来なかったみたいだ。
ただ潰すだけなら良いんだが、ヴァルド少年の身の上を聞くと奪う訳にもいかなくなったってところかな? 踏んだり蹴ったりだけど、諦めるしか無いだろう。自業自得でもある。
【探知】と【空間把握】で皆が居る場所も何をしているかも分かっているので、特に心配はしていない。紅茶でも淹れてゆっくりするかね。
聖水で紅茶を淹れてまったりしながら飲んでいると、ダリアとフヨウが聖水を欲しがったので水皿に入れてやる。1人と2匹で静かに過ごしていると、皆が疲れた表情で帰ってきた。
「おかえり。また随分と派手に暴れたんだって? ヴァルド少年とその仲間から事情は聞いたけど、後片付けを考えずに暴れた所為で大変だったみたいだな」
「ただいま。そもそも馬鹿どもがアタシ達に喧嘩を売ってきたのが悪いのさ! アタシ達を手篭めにして売り飛ばそうって言うんだから、死んだとしても仕方がないだろう?」
「特に暴れたというか被害を出したのは、メルと姉上なんですけどね。姉上は鞭でそこら中を壊しましたし、メルは魔法を乱射しますし……。瓦礫の撤去と、燃えた部分の修繕に時間が掛かりました」
「ごめんなさい。まさか、自分達で片付ける羽目になるとは思わなかったのよ。前のオアシスみたいに放置で良いんだと思ってたし、とっても腹立たしかったし!」
「まあ、私も結構壊したからあんまり強く言えないんだけどね。メルは年増扱いされたし、私はチビ扱いされてね。少々頭にきたんで暴れてしまったんだよ」
「ああ、そういう事か。そりゃ潰されても文句は言えないだろう。俺に喧嘩を売ってきたのも馬鹿だったし、我が物顔で牛耳ってた奴は自身も部下も阿呆だったという事だな」
「裏切って奪った奴は、何と言うか小心者の様な奴だったな。必死に私達を殺せと叫んでいたが、叩き潰された後は恥も外聞も無く命乞いをしていた。その最中に少年達が乱入してきたのだが……」
「そうそう、土下座して命乞いしてる奴を見て何とも言えない顔をしてたよね。気持ちは分かるけど、錯乱したように命乞いしてる奴に止めを刺すっていうのは色々あるんだと思う。物凄く納得出来ないっていう顔をしてたよ」
「仕方ないんじゃないかい? 父親の仇が目の前で無様に命乞いをしてるんだ。挙句、それをやったのは自分達ではない赤の他人だし、奪われた組織は壊滅寸前。色々なものが重なって、どうしていいか分からなくなったんだろうさ」
「一応キチンと止めを刺していましたけどね。私は殴ってただけなので破壊はしていませんし、ダナも蹴りで足を折ってたぐらいです。ディルとフォルは逃がさない様にしていましたから……」
破壊の限りを尽くしたのはメルとアルメアか……。とはいえ、侮辱されたんじゃ治まる訳が無いし、暴れるのも仕方がない。そこに関しては俺も触れたく無いんでスルーさせて貰おう。
皆にはヴァルド少年から聞いた第三オアシスへの道を話し、早めに眠る事にする。
布団に入っていたダリアとフヨウに【昏睡】を使い強制的に眠らせたら、【房中術】と【鋭覚】と【精気】で全員を大満足させる。これでメルとアルメアのストレスも大分減っただろう。
俺も布団に入って早めに寝よう。それじゃあ、おやすみなさい。
<異世界229日目>
おはようございます。相変わらず起きるのは夕方ですが、砂漠は昼夜逆転するので仕方がありません。
今日は第三オアシスへと出発するんだが、徒歩で20日、ディキマで急いで10日と聞いてる。俺達ならどれだけ掛かるのかだが、今までの通りなら2日で着くと思うんだが……。
「「「「「「チュッ! おはよう、皆」」」」」」
「おはよう、皆」 「ニャ」 「………」
皆も起きたので布団などを片付けて、綺麗に浄化してから部屋を出る。食堂に行き大銅貨18枚を支払って食事を食べたら、オアシスの南東に行く。南東と南東南の間くらいの方角を向いている岩が在ったので、その岩の指し示す方角へと出発する。
熊のきぐるみを着ているが、日を追うごとに寒くなっていくな。昨日よりも更に寒い中を次のオアシスへ向けて走っていく。
走っていると体も温まってくるので寒さも感じなくなるが、何もしていないと多少は寒い。水の季節にもなっていないが、やはり砂漠の夜は寒いものなんだと痛感する。
休憩を何度か挟みつつ走っていると、再び魔物同士の殺し合いに遭遇した。ただ、遠くで殺しあっているので今の内に素通りしてしまう事を【念話】で決めた。
一方は砂虫だったが、もう一方は黒い蠍だった。あの黒い蠍は初めて見たが、尻尾に毒針があるらしく刺された砂虫は直ぐに痙攣していた。
こっちに気付いてないといいんだが、【探知】と【空間把握】で確認しておかないと地中から奇襲されたら厄介だ。蠍系は地中に潜るからな。
それは砂虫も一緒だが、危険度が段違いである以上は警戒し過ぎなくらいで丁度良い。どのみち俺達の方が遥かに速いので、追いつけないだろうがね。
そのまま走っているとオアシスも無いのに、植物が生えている所があった。不思議な事に生えているのはサボテンではなく、何故かススキっぽい草だった。
何でこんな物がと思うが、気にせず通り過ぎた。地下水が浅い所まで上がってきている場所だったので、おそらくその所為で植物が生えていたんだろう。
更に走っていると夜が明けてきた。どうやらタイムリミットが来たらしい。近くの砂丘の頂点に床も強固にしたカマクラを作り、前に焼き場を作る。ここは風が強くないので普通に食事が出来そうだ。
小麦と砂麦の全粒粉を作って、いつものメンバーに練ってもらう。その間に最後のかす肉と野菜を使ってスープを作る。
邪生の脂を取り出して全て鍋に入れたら、熱で溶かしていく。肉の匂いが強いが気にせず用意し、練ってもらった生地を薄く円形にして【熟成】を使ったら油で揚げていく。
【念動】で油に沈めながら低温でじっくりと揚げていく。程よく膨らんだら取り出すと、プーリーという揚げパンの完成だ。
肉の匂いがするが気にしたら負けである。揚げたては大きく膨らんでいるのだが、冷えてくると萎んでくる。とはいえ、揚げパンである以上は膨らんでいるし、油でしっとりしていて美味しそうだ。
全員分を揚げ終わった時にはスープも完成していたので、椀に入れて食べ始める。皆は揚げパンは初めてだったのだろう、驚いているが美味しいのか全員が笑顔だ。ダリアのテンションが凄く高くて、ちょっと五月蝿い……。
「まさか生地を油で揚げる料理があるなんてねー……。驚きだけどしっとりしていて美味しいよ! 肉の匂いがするけど、アタシは全く気にならないね。肉の匂いと味がするパンだと思えば、そういうのもアリだしさ」
「肉の匂いと味がするパンって斬新ですね。普通に美味しいから何の問題も無いですが、これって邪生の脂を使ってるから美味しいんですか?」
「どうだろうな? 脂の匂いと味だから、結構な関わりはあると思う。ただ、邪生の脂だというだけではないと思うんだよな。合う、合わないはあるだろうから、本当は癖の無い油を使いたいんだ。けど、癖の無い油ってサラダ油なんだよなぁ……確か菜の花か?」
「なのはな? 植物だから花の事かしら? そういえば祖母が昔、花から取った油は香りが良いから、とっておきの物を”良い男の為に”常に用意しておきなさいって言ってたわね。何だか懐かしいわ」
「伝説の魔女かい? 私も昔一度だけ会って話した事があるけど、本当に男を堕とす為なら全てを懸けるという人物だったよ。とにかく、男、男、男、という人物で、それ以外に何も考えていないんじゃないかと思ったくらいさ。本人曰く、自分は”女”として生きて”女”として死ぬと言っていたね。あれも一つの信念なんだと思うよ」
自分の信念に全てを懸ける人って、元の世界にも居たなぁ……。伝説の魔女って、そういう人物だったのか。ちょっと印象変わったかも?。
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0557終了時点
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銅貨220枚
神金の矛
神鉄の太刀
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




