0556
朝方に目が覚めたので起き上がる。外を確認すると、とっくに日が昇っているらしい。
俺は小さな鍋を出し、聖水を入れて沸騰させて紅茶を煮出していく。部屋の中に紅茶の香りが漂い始めると皆が起きてきたのでコップに淹れていく。
「おはよう。とりあえず眠いのか眠くないのか、よく分からない状態だよ。少しゆっくりしたら何をするんだっけ……ああ、次のオアシスへの情報収集か。あの男が言ってた道で正しいんだろうけど、一応調べた方が良いからね」
「おはようございます。私はちょっと眠いですね。砂漠を渡る間は昼夜が逆転するのは仕方がないとしても、この眠たさは結構厳しいです。ある程度情報を集めてきたら、宿に戻ってきて寝ます。日中は暖かそうですから」
「そこは砂漠だから当然なのかもしれないわね。幾ら寒い時季だからと言って、砂漠だから日中はルーデル村より温かい筈よ。ただ夜の寒さは砂漠の方が遥かに上ね。まさか遮る物が無いだけで、ここまで寒くなるとは思わなかったわ」
「障害物もさる事ながら、風が強いのが大きいんだろうね。一気に地上の暖かさが奪い取られていく感じがするよ。火の季節なら涼しいんだろうけど、土の季節では寒いだけだね」
「それは仕方がないだろうな。そう都合の良い季節に来る事も出来ないし、都合の良い季節まで待つ気も無い。それに商隊だって1年で2往復すると聞く。ならば私達に出来ない道理は無い」
「そう言えば季節が季節だし、そろそろ帰りの商隊とぶつかる事も考えておいた方が良いね。揉め事は起きないと思うけど、宿の部屋に空きが無いとかはあるかもしれないし」
雑談をしながら紅茶を飲んでゆっくりとする。皆も頭が覚醒してきたのか、顔つきもいつも通りになってきたので宿を出る。
宿の従業員に話を聞いたところ、直ぐ隣が食堂をやっているらしいので隣の店に行く。中に入り大銅貨18枚を払って朝食を注文する。砂漠だからか高いな……。
食事は普通というか、パンがパサパサだという以外は普通の食事だった。とはいえ砂麦100パーセントで全粒粉だと、多分こんなパンにしかならないんだろう。
発酵させたりとか色々な手を加えれば違うのだろうが、シンプルなフラットブレッドだと粉の質がハッキリと出てしまうのはしょうがない。ついでに水がね……。
食事を終えて店を出たら、各々で情報収集を始める為に皆と分かれる。小さな店などもあるので話を聞いてみるが、嘘を言ってくる奴か知らない者しかいなかった。
情報料を求めてくる奴も居たが、俺は一切払っていない。そういう奴が本当の事を言うかどうかも分からないし、いちいち【白痴】を使う気にもならなかったからだ。
このオアシスを牛耳っている奴等の所に行くしかないか……。どのみち水を買おうと思っていたので、一度は行くしかない。
オアシスの周りには囲いがしてあり、勝手に水を汲む事が出来ないようにしてある。そこに行って列に並んで待つ。待たされたが俺の順番がきたので、銀貨3枚を払って水を汲む。
アイテムバッグから水を入れる樽を取り出していると、見張りが近付いてきて文句を言い始めた。
「ちょっと待て、キサマ! アイテムバッグを持っているなんて聞いてないぞ! 追加の金を払え! 金貨10枚だ!!!」
「はぁ? 銀貨3枚で持って来た物に汲めるんだろ? 他の奴等だって甕を大量に持ち込んだりしてるじゃないか。何で俺だけ金貨10枚も払わなきゃならん。断る」
「何だと、キサマ! このオアシスを牛耳る<黒蠍>に逆らう気か! ……金貨が無理だと言うなら、そのアイテムバッグを貰おうか。拒否したらお前の命がどうなるか分からんぞ?」
「ほう、そこまで阿呆なのか? なら、その節穴の目は要らんな」
俺は目の前の馬鹿の両目に棒手裏剣を突き込み潰す。馬鹿は悲鳴を上げてのた打ち回っているが、俺の知った事ではない。
アイテムバッグから出していた樽に水を汲んでいると、周りから応援のような奴等が現れて襲ってきたので、全員平等に両目を潰しておいた。この騒ぎで8人か……多いのか少ないのか、微妙なところだな。
待っていても追加が無いので帰ろうとすると、慌てたような連中がこっちに来た。俺を囲んだので新たに来た11人の目をどうやって潰そうかと考えていると、15~16歳ぐらいの少年が慌てたようにこっちにやって来る。
その少年を守るように周囲を警戒する11人。いったい何なんだコイツ等は?。
「あぁ……遅かった。申し訳御座いません、この者達は貴方に何かしましたか? 何か呻いている様ですが……」
「銀貨3枚払って水を汲もうとしたら、俺がアイテムバッグ持ちだと分かったからか金貨10枚払うか寄越せと言ってきたんだよ。更に俺を脅してもきたんでな、相手の強さも見抜けない節穴のような目なんぞ要らんだろ? だから潰した」
「え? 潰したんですか、この者達の目を……。とはいえ、脅したりアイテムバッグを奪おうとしたなら当然ですか。あ、済みません、名乗っていませんでした。私はヴァルドと言います」
「ああ、俺はアルドゥラムだ。アルドと呼べばいい。それより君達は、いったい何だ? 俺は水を汲み終わったんで帰りたいんだが……」
「済みません。私はこのオアシスで水を管理していた<砂漠の夜明け>の元跡取りです。父を殺し組織を乗っ取ったネルダムを倒す為に力を蓄えていて、今日ネルダムを倒す為に第二オアシスに帰って来たのですが……」
そんな話をしていると、少年ことヴァルドの護衛をしている11人の内の1人が前に出て来て、話を始めた。
「坊ちゃんが御立ちになり、我等はネルダムのアジトへと攻め入ろうとしていたのですが……。それよりも早く、貴方の仲間だと言う女性達がネルダムどもを潰していまして……」
ん~……。何となく話が見えてきたがどういう事だ? 俺は分からない事が多い為、コイツ等と話をして詳細な情報を聞きだす事にした。その結果分かった事は何とも言い辛い事であり、俺も微妙な気分になってしまった。
簡単に説明すると、3年ほど前に父親を殺害され組織を奪われたヴァルド少年と部下達は、第三オアシスまで逃げて力を蓄えていた。
3年で力も溜まり、これから反撃だと気合を入れて乗り込んで来たら、目の前でネルダムとかいう奴が血祭りにあげられていたと。それをやったのはウチの女性陣で、その理由は襲われたからだった。
……どうもウチの女性陣を攫って売り飛ばそうとしたらしく、ボコボコにされた挙句アジトを聞き出され強襲された様だ。当然チンピラ如きが勝てる様な相手じゃないんで、一方的に潰されたらしい。
で、その状況に慌てたのがヴァルド少年と仲間達だ。彼らは<砂漠の夜明け>を取り戻したいのであって、潰したい訳ではない。
何とかウチの女性陣に話をして潰すのは待って貰ったらしいのだが、もっと潰しかねないのが野放しになっていると聞いて、慌てて俺を探したんだそうだ。
ようやく俺を見つけたと思ったら、水の管理などをしている連中が俺に難癖を付けて両目を潰されていたと。……全ての情報を纏めて考えても、俺には関係ないしどうでもいい。俺には関わりの無い事だ。
「これ以上組織を攻撃しないでくれって事だろ? そもそも俺に喧嘩を売ってこなきゃ、こんな事にはなっていない。俺としては絡んで来なきゃどうでもいいし、今日の夜には第三オアシスに出発するしな。それより第三オアシスへの道を教えてくれないか?」
「えっと、これ以上暴れないのであれば構いません。第三オアシスは南東に向かって真っ直ぐ行くと辿り着けます。このオアシスの南東の端には、南東方向に向いた岩がありますので、その岩の方向に真っ直ぐ進むと第三オアシスです。徒歩なら20日ほど掛かりますし、ディキマで急げば10日ほどです」
「ありがとうな。どうやら聞いていた通りみたいで何よりだ」
ヴァルド少年達と別れた俺は宿へと戻ろうとしたが、周囲に人が多く居るうえ、こっちを見ながら色んな話をしているみたいだ。俺としては何を言われようと気にしないので、全てスルーして宿へと帰った。
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0556終了時点
大白金貨3枚
白金貨9枚
大金貨119枚
金貨388枚
大銀貨544枚
銀貨338枚
大銅貨387枚
銅貨220枚
神金の矛
神鉄の太刀
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




