0552
夕食後、宿へと帰るのだが、まだ尾いてくる気らしい。何処かへ連絡する気配も無いし両方とも魔人であってエルフじゃない。襲ってくる気配も無いし意味が分からないな。いったい何がしたいのやら……。
宿の部屋に戻った俺達は、明日からの予定を話し合う。普通なら砂漠の旅は、何日も昼の間は寝て夜の間に動くのが基本だ。
この世界でも北極星に似た星はあって、北にあって動かない星を目印にして東へと進む。昼夜逆転の生活になるが、コレばっかりは仕方がない。
宿で仮眠をして真夜中に出発する事になるが、宿の従業員にもその話はしてある。それに砂漠を越えようとする旅人は毎年一定数いるらしく、怪しまれたりする事はなかった。
今日は夜の性活も無しで、皆にはなるべく体力を回復してもらう為に【昏睡】を使った。俺は周囲を警戒しながらの仮眠だが、大した問題にはならない。
<異世界226日目>
ふと目が覚めると既に夜中だった。尾行者は外で監視しているらしいが、俺達にとっては知った事じゃない。皆を起こして熊のきぐるみを着させる。ダリアにも防寒具として作った物を着させて準備完了だ。
宿を出る時に従業員にギョっとされたが、防寒具である事を説明して納得してもらった。宿を出て東へと行くと、東門には門番がいなかった。勝手に出ても良いと解釈して、町を勝手に出て行こう。
それにしても、夜中に勝手に侵入されたらどうするんだろうな? 完全な怠慢だと思うが……。
俺達は身体強化をして一気に走り出し、東門を素早く通過する。慌てた奴等が「待て!」とか「止まれ!」とか言ってるが、聞いてやる理由が無い。
実は東門近くには賊のような奴等が20人ほど潜んでいたんだが、皆と【念話】で示し合わせて一気に走り抜ける事にしたんだ。
いちいち始末するのも面倒だし、奴等はおそらく砂漠を抜けようとする者を襲う砂賊なんだろう。つまり、砂漠の入り口である町でさえ砂賊に牛耳られている訳だ。
まあ、賊なんてそんなものと言えばそれまでなんだが、せめて国として町は賊から守ってやれよ。そんな事を考えながら夜の砂漠を走る。
砂に足をとられるものの、そこまで遅くなる訳でも無く、皆も直ぐに慣れていった。夜の内に進めるだけ進まないと、たとえ秋や冬の砂漠といえども日中は容赦なく日差しが降り注ぐ。
その中を走って移動する訳にはいかない。本来は汗をなるべく掻かない為にラクダに乗って移動をするのだが、俺の場合は問題ない。
そもそも水源を把握出来る事に加えて、最悪の場合は上空から水分を降ろす事も可能だからな。水を確保する事は、俺にとってそこまで難しい事ではない。
それに、ラクダに似たディキマに乗って5日ほど掛かるらしいので、俺達の足なら2日で到着するだろう。
商隊が1日20キロから30キロ移動するとして、第一オアシスまでは100キロから150キロほどの距離となる。
普通の土の上ではなく砂の上を移動する上に、商隊を組んで荷物を持っての移動だからここまで遅くなるのであって、俺達なら1日で走破する可能性も否定出来ない距離だ。
そもそも往復に半年だから、行きだけなら80日。つまり1季節だ。総移動距離は1600キロから2400キロ程となるが、間をとって2000キロと仮定しよう。
夜の間走るとしても、1日でどれだけの距離を移動出来るのか分からないので、何日で走破出来るのかはちょっと分からない。まずは安全に着実に進む事を考えて、無理はせずに移動していこう。
移動を続けているのだが、皆早々に暇になったのだろう、【念話】で雑談をしている。あまり気を抜くと危険な怖れもあるんだ、が!。
「皆、止まれ! 前で砂虫と砂トカゲが争っている。両方を叩き潰して進むぞ!」
「「「「「「了解!」」」」」」 「ニャ!」 「………」
砂虫というのは、蟻地獄のような窪みを作る大きなミミズの様な魔物の事だ。先端が4つに割れて、口の中に牙がビッシリ生えているのが【空間把握】で分かる。
漫画に出てくるクリーチャーみたいな感じだ、もしくは寄生○の口の中か? そんな奴だが、砂トカゲ数頭に襲われていて劣勢だ。
砂虫は砂漠の何処にでも居ると言われるほどポピュラーな魔物だが、体の中に水分を溜め込んでいるらしく、砂虫を倒せば十分な量の水が確保できるとディルが言っていた。
何でも、町で自慢気に話していた奴がいたらしい。商隊も囲んで倒したりするらしく、貴重な水源だとも言える。
砂虫自体は、多分地下水を飲んで体の中に貯めているんだと思うが、その水分と砂虫自身の肉を狙われたんだろう。
皆は砂トカゲ5頭を倒しに行ったので、俺は長さ2メートル、直径30センチの体をもつ砂虫を【念動】で空中に持ち上げる。先端部分を上に向かせてから自分に近づけて、太刀で斬り落とした。
そして下に向けてみると、綺麗な水がバシャバシャと落ちていく。成る程、ここまで綺麗な水を溜め込むのなら狙われるのも無理ないな。
俺としては必要が無いが、砂漠の者達にとっては貴重な水源になる。綺麗な水は何より重要だろうし、自分達では手に入れられない地下水が元だ。ありがたいだろう。
水を溜め込んでいる部分と、体液がある部分とが綺麗に分かれており、綺麗な水を溜め込んでいる部分からゆっくりと水分補給をする様だ。なかなかに面白い虫だが、砂漠という厳しい環境に適応するというのはこういう事なんだろう。
砂虫も砂トカゲも浄化して捨てて行く。未だ邪生の肉が余っている俺達には必要の無い物だからな。再び走りだした俺達は、砂丘を上ったり下ったりしながら進んで行く。
休憩を挟みつつ、ひたすら進み続けていると、ゆっくりと明るくなり始めてきた。どうやら今日はここまでの様だ。
小さな砂丘の頂点部分に行き、砂を【念動】で集めて【融合】して【圧縮】しカマクラを作る。床の部分も【融合】と【圧縮】を行い、虫などが入って来れない様に作った。
砂漠と言えば蠍が有名だからな。毒を持った虫が入ってくると危険なので、キッチリと作っておかないといけない。
カマクラの前に焼き場を作り、その周りに囲いを作っておく。囲いと言っても小さな壁のような物だ。これを作っておかないと、風で砂が食べ物に付いてしまう。
カマクラの中で小麦と砂麦の全粒粉を練ってチャパティを作ってもらう。そういえば古いパンというかフラットブレッドって、チャパティと殆ど変わらないんだよな。地球では違うんだろうけど、この世界では殆ど変わらない。
違いは窯で焼くかどうかぐらいで、別にフライパンで焼いても、焼き網で焼いても良いらしい。麦の粉を塩と水で練って、その生地を寝かせた後に焼く。
シンプルだがそれだけだ。一応チャパティだと言ったりパンだと言ったりしているが、コレに関してはあんまり深い意味は無い。かなり適当だ。
寸胴鍋を出し、かす肉と干し肉と野菜を入れて煮込む。スープもチャパティも多めに作っているので満足してくれるだろう。
夜中に食べる訳にもいかなかったし、砂漠では1日2食の生活になりそうだな。とはいえ、元々この世界の農民は1日2食が普通の生活であり、傭兵などは3食を食べるというだけだ。
でもなー……。いきなり減らすとお腹が空くんだよ。まぁ、皆には砂漠を渡るまで諦めて貰うか。おっと、そろそろスープの煮込みも終わりだな。食事にしよう。
「砂漠の1日目が終わった訳だが、皆はどうだ? 体がおかしいとか、体調が悪い場合は直ぐに言う様にな。気付いたら手遅れだった、何て事になるかもしれないからさ。早め早めに言う様にしてくれ」
「分かってるよ、小さな事を見逃して命取りになるなんて御免だからね。砂漠に関しては、想像してた通りだったってところか……。変わらない景色の中をひたすら進む事になるのは、分かりきってた事さ」
「そうですね。私としては見た事の無い景色を見る為には仕方がないとはいえ、1年前は想像もしていなかった事をしていると思います。砂漠というものが在るとは知っていましたけど、それはダンジョンの中だけですからね」
人生なんて、何が起こるか分からないもんだ。俺がこの世界に複製されたみたいにな。
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0552終了時点
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銅貨220枚
神金の矛
神鉄の太刀
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




