0551
町の門番に話したものの、入るなら好きにしろと言わんばかりに通された。問答も何も無く通されたので、不思議に思いながら町の中に入る。
町の中は普通で、活気が無い訳ではないが賑わってもいない。ここから先は砂漠だから賑わいはしないのは分かるが、その割には住民は多くいる。
そういう意味では不思議な町ではあるなぁ。半年に1度の商隊が帰ってくるまでは、活気が無い筈なのだが住んでいる人が多い。内陸だから周りは荒地か砂漠だ。当然、農業には適していない。
いったいこの町の住民は、何を仕事として生計を立てているんだろうか? 活気が無いのに住民が多いというのは本当に不思議だ。
そんな事を【念話】で話しながら町の中を散策していると、砂漠の方にポツポツと人の反応がするので見に行ってみる。すると砂の上に麦が生えている光景が広がっていた。
【空間把握】で調べると小麦ではなく大麦の1種だという事が分かるが、砂地で育つ大麦なんてあったっけ? 元の世界では聞いた事が無いような気がする。もしかしたら在ったのかもしれないが、俺は知らない。
近くの人に聞くと砂麦というそのままな名前が返ってきた。何でも、この近くには昔から生えている物で、多少パサパサするものの十分に食べられるそうだ。
この砂麦は、水分をあまり必要とせず砂地や荒地でも育つ為、砂漠の近くでは沢山作っているらしい。
南でも作れば良いと思ったのだが、砂漠に隣接している荒地なら育つものの、砂漠から離れると碌に育たなくなるそうだ。不思議な作物だと農家の人は笑っているが、気候が合わないんじゃないかと思う。
乾燥気味の気候じゃないと育たないとか、特定の害虫が居ると育たないとか。砂漠に近いと害虫も少なそうだしな。
実ってくると重さで倒れてくるらしく、完全に倒れたら収穫するそうだ。普通の大麦などと違って生育に時間が掛かるのも砂麦の特徴らしい。まだ倒れていない砂麦が畑に残っているのも、それが理由だろう。
俺達はお礼を言って農地を後にする。町の北の砂麦の農場は作られていたが、誰の畑が何処にあるとか良く分かるもんだ。一見しただけじゃサッパリ分からなかったな。
俺達は宿を探していたのを思い出し、再び宿探しを始めたら直ぐに見つかった。大銅貨8枚で6人部屋をとったら、情報収集の為に一旦皆と別れる。
宿代が高いがここから砂漠なので仕方がない。砂漠のオアシスなんて更にボッタクリだろうしな。砂漠を越える為の道筋をここである程度は聞いておかないと、砂漠に闇雲に突入する訳にはいかない。
俺は砂漠を越える商人の店に行って話しを聞いたりする事にした。知ってそうな者に話しかけながら【忘我】と【白痴】を使って聞き出していく。本来なら秘匿する情報だが、俺相手に喋らずにいる事は不可能だ。
何軒か砂漠を越える商人の店に行き、そこを任されている責任者に聞いてきた。すると、全員が同じ事を言っていたので間違い無いだろう。
十分に情報を聞き出せたので宿に戻る事にし、帰り道を歩いていると尾けてくる者がいる様だ。男女1名ずつが恋人を装って尾けてくるが目線が怪しすぎる。
いや、鋭すぎると言うべきかもしれないが、まともな一般人と思えない目つきをして尾行するなよな。幾らなんでも下手過ぎるだろう! 王国でもそうだったが下手なヤツばっかりだな。もう少し上手い奴にやらせろよ。
何処の誰の差し金かは知らないが、どうせ大した奴じゃないだろう。この程度の尾行しか出来ない奴を使ってるくらいだ。それに尾行者を尾行している奴は居ないみたいだしな。下らない事をしてきたら始末すればいい。
俺は堂々と宿へと戻ると、既に皆は帰ってきていた。部屋で聖水を沸かし紅茶を煮出したら、皆のコップに入れて話し合いを始める。
「皆は俺より早く帰ってきていたみたいだが、どうだった? 俺の方は次のオアシスまでの方角と時間は分かったが、それ以外は調べていないというか調べる時間が無かった」
「オアシスの方角なんかは秘匿されてるらしくって、知ってる者が殆ど居なかったよ。多少は聞けたけど、怪しい情報だと言わざるを得ないね。北東の方角だと聞いたけど……」
「そうですね。私も北東の方角だと聞きました。とはいえ、そういう噂があってそれを知っているだけであれば、同じ事を言っていても不思議ではありません」
「私の方は、北に行ってから東へと進むのが正しいと聞いたがな。何でも北に行くと目印となる植物が生えていて、そこから真っ直ぐ東へと行くとオアシスに辿り着くそうだ」
「具体的ではあるけれど……ディルが聞いてきたのも怪しいと言えば怪しいわね。疑い始めればキリが無いけど、それでも微妙に疑わしく感じるわ」
「行って帰ってくるだけでも莫大な利益になるみたいだからね。早々本当の情報が出回る事は無いと思うよ? 何でも東の国からは<光絹>を買ってきてるらしいんだ。何処で作られてる物か知らなかったけど、まさか砂漠を越えて持って来ているとはね……」
「光絹って何? 僕は聞いた事が無いけど、何だか絹より凄そうな名前だね。……もしかして大神殿長が着ていた凄く綺麗な神官服、アレが光絹なのかな?」
「多分そうじゃないかい? 一部の金持ちしか買えない、超が付くほど極上の絹の事だよ。表面がキラキラ輝いている様な生地でね、製法も何も分かってない極めて価値が高い生地さ」
「魔力や闘気が非常にスムーズに流れるのも特徴ですね。その御蔭で、魔力や闘気を流せば服なのにハードレザーぐらいの防御力は出るんですよ。その分ビックリするほど高値の生地で、金貨では買えないと言われる程です」
「その光絹とやらは横に置いといてくれ。俺の方は東に商隊を送っている店の責任者から、町の東門から出て真っ直ぐ行くと1つ目のオアシスがあると聞いた」
「へぇー、そうなのね。……一応聞いておきたいのだけれど、信憑性はどれぐらいかしら?」
「【忘我】と【白痴】を使って強制的に聞き出した情報だ。知らないなら知らないと答えるから、喋ったという事は高い確率で正しいと思う。他3軒の商店でも同じ事をしたが、答えは全て同じだったよ」
「「「「「「………」」」」」」 「………」 「………」
「……はぁ。そう言えばアルドには尋問の技があったのをすっかり忘れてたわ。それにしても、4軒で聞いて同じだったという事は、ほぼ間違いなく東門から真っ直ぐが正しいでしょうね」
「そうだな。それで外にこちらを見張ってる奴等が居るのか。アルドが失敗するのは珍しいが、相手はそれだけ優秀なのか? ……よく考えたら、アルドが尾行に気付かない筈が無いな。という事は泳がせているのか」
「まぁね。こっちに手を出すなら潰すし、手を出してこないなら放っておくよ。興味が無いし、尾行が下手すぎて相手もしたくないんだ。どうせ夜には町を出るんだから、どうでもいいのが本音だな」
「成る程ね。この後は食料店に行くのと、食堂に行って夕食を食べるぐらいだけど……そこで襲ってくる事は無いか。流石に人目に付きすぎるだろうし」
そんな話を終えて、俺達は部屋を出て食料店に行く。砂麦が安くあったので、金貨2枚分の砂麦を買う。それと金貨1枚分の野菜を購入して食料店を後にする。
尾行者は相変わらず居るが、下手過ぎて皆が微妙に笑っている。【気配察知】を使っているんだろうけど、前を向いたまま笑っているので気付かれてはいない。
俺達は下手な尾行者を無視して食堂に入り、大銅貨9枚を支払って夕食を注文する。出てきたのはパンとスープと不思議な肉だった。
運んできた店員に聞くと砂トカゲの肉らしく、この辺りでは普通に食べられているらしい。体長1メートル50センチ程の大きさ以外は普通のトカゲと変わらないそうだが、牙があり雑食で人も襲う魔物だと教えてくれた。
この国でも魔物は見たが、積極的に狩ってはいない。理由は傭兵ギルドが無い所為で、解体所も無いからだ。
普通に精肉店が引き取ってるらしく地元の者でもなければ安く買い叩かれそうなので、スルー出来る魔物はスルーしてきた。そもそも邪生の肉が余っているので、無理に戦う必要も無い。
そこまで戦闘狂でもないし、何より面倒臭い。
▽▽▽▽▽
0551終了時点
大白金貨3枚
白金貨9枚
大金貨36枚
金貨140枚
大銀貨523枚
銀貨223枚
大銅貨112枚
銅貨220枚
神金の矛
神鉄の太刀
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




