0541
町を出てから会話をしている間は歩いていたが、今は走って移動している。皆の情報を集めても1番近いのは北東にある村だと分かったので、現在その村に向かって山を移動中だ。
鬱蒼と生い茂る山ではなく、石や岩の多い山々が連なっている中の森を進む。……もう少し正確に言うと、半分から上は石や岩だらけで、半分から下は鬱蒼と生い茂っている山だ。
移動をするにしても上の方に出た方が見渡せるので移動しやすいらしい。今の俺達は生い茂っている部分の獣道を移動しているが、もう少しで半分から上に出られる筈だ。
とにかく森は見通しが悪い。それでも俺の場合は【空間把握】が使える分、いきなり崖から転落とか、道を間違えるという可能性は低い。
周囲2キロまでなら調べる事が可能だからだが、その範囲が鬱蒼とした森だけだと流石の俺も分からない。
遭難する可能性も視野に入れて行動する必要がある。なかなかに大変であり過酷な場所でもあるが、ここで生きている人が居て各村や町を回れる以上は、俺達にだって可能な筈だ。
……よしよし、どうやら抜けた様だ。急に視界が開けたので皆はビックリしている様だが、直ぐ慣れるだろう。
「しっかし、本当に石や岩ばかりの山だな。下を見れば鬱蒼とした森、上を見れば石や岩のみ。綺麗に分かれてるが、木々が成長出来ない何かがあるんだろうな。空気が薄いからか?」
「あそこ! あそこに見えてるのがロッゴの村じゃないかい? 昼前に辿り着けたって事は、ここから東の村には今日中に行けそうだね」
「そ、それよりも寒くありませんか!? 森を抜けたら急に寒くなってきたんですけど!? む、無理です! 我慢出来ません!!!」
そう言うと、シュラはアイテムバッグから熊のきぐるみを取り出して着始めた。まあ、仕方ないなと皆も諦めている。
確かに急激に寒くなってきたので、シュラが騒ぐのも分からなくもない。特に山の上は寒いうえに、石や岩ばかりなので風が遮られない。その風の所為で結構寒いんだ。
シュラがきぐるみを着込んだのを確認して先を急ぐ。流石にシュラも熊のきぐるみの口の部分から頭を出している。そうしないと魔物に勘違いされて、攻撃される恐れがあるからだ。
村に近付くと数人の村人がこっちを見て警戒しだした。なので、俺達は声を掛けながら近寄っていく。
「すみません。お騒がせしたのなら謝ります。俺達は旅をしていて、アボイの町からこの村まで来ました。ここから更に東にある村まで行こうと思うんですけど、北回りで行かないと行けないと聞いたのですが、事実でしょうか?」
「……あんたらアボイから来なすったか、それなら大丈夫か。この村へは滅多な事じゃ、他所の人が来んだで警戒してスマンの。ブーリの村は北回りで行けっけど、半日は掛かるが大丈夫か? 今行くと途中で夜になっちまうぞ?」
「アタシ達は足が速いし体力があるから大丈夫さ。それに魔物の領域での野営も何回もしてきてるしね。ほら、魔物の毛皮を被ってるだろ。こういう魔物だって倒してきてるんだよ」
「ダナ……幾ら私が熊のきぐるみを着てるからって、私を引き合いに出すのはどうなんですか? 後、矢鱈に子供が近付いてきて引っ張られるんですが……」
「こら! おめぇら! 他所様の着る物を引っ張るでねぇだ! すまねぇだ、他所から人が来んのは珍しいでな。旅の修行僧も、大抵は都に行くだけでこっちには滅多に来ねぇだからなぁ」
その後、色々な話を村人から聞き出した。東の村には北回りで行ける事、その東に町がある事、その町にはダンジョンがある事などなど。
話し相手に飢えていたのか、それとも情報に飢えていたのか知らないが、ダルダン聖国についての多くの情報を教えて貰えた。
そろそろ出発しないと東の村に着けないと言って、強引に話しを切って村を出発する。流石に暇な村人の話し相手を延々と続けるのは嫌だ。
村を出た俺達は北へと進んで行き、ある程度進んだら山の縁を進むような道があったので、そこを進んで行く。
ロッゴの村からも、年に何回かは東のブーリの村へと行くらしく村人は道を知っていた。年に何回かだけだと言っても山の上の道だからか、それともこの山の環境か、人の歩く道は分かりやすくなっている。
その御蔭で間違える事も無く進めているのだが、確かに大回りをしているな、コレは。
ロッゴの村とブーリの村が直線で結ばれない理由は、両方の村の間には非常に深い谷があるからで、直線だと2キロほどしかない。
つまり【空間把握】ギリギリの範囲内であり、俺はブーリの村を既に確認している。こういう時には本当に便利だと思うが、あくまでも範囲ギリギリで確認できただけだ。【探知】だと広範囲だが、生命反応とかだけだし。
魔物と人間種の反応は違うので問題は無いんだが、そこまでの道筋はよく分からない。地形を把握するには【空間把握】を使うしかないが、最大距離は今のところ2キロが限界だ。それでも道を……!?。
「皆! 上空から鳥が強襲してくるぞ! 【念動】で叩き落すから、止めを頼む!」
「「「「「「了解!」」」」」」 「ニャー!」 「………」
俺は上空から突撃してくるハゲタカみたいな鳥を地面に激突するように叩き落としていく。地面に突き刺さる奴や、頭から落ちて死ぬ奴。様々な奴がいるが構ってはいられない。
次々に落とし続けると、流石に不利だと分かったのか鳥どもは逃げていった。死体を数えると実に38羽もの死体があったが、どれだけ飢えてるんだよ、このハゲタカ。
羽を広げると、全長4メートルもありやがるし、畳んでいると妙に細身の鳥だ。羽がモコモコと考えると、膨らんで見えているというのが正しいのだろう。後で解体するとして、今は先を急ごう。
俺は皆に声を掛けて先を急ぐ。上空を見ても先程のハゲタカどもは居なくなっていたので、今の内に移動したい。一方的に奇襲されるのは御免だからな。
【空間把握】を使いながら移動を続け、夕方前に何とかブーリの村に辿り着いた。村人に話を聞いてみたが、村に宿は無く、修行僧なら村長の家に泊めてもらうのが普通だと言っていた。試しに村長の家に行って聞いてみたが、素気なく断られた。
なので村から出て外で寝ようと思う。村人は自分の家に泊まっていくか? と言ってくれたが、迷惑になってしまうのでと言い、丁重に辞退しておいた。
村人の村長に対する態度が悪くなっていたので、俺達としては溜飲が下がったというのもある。悪行ではないが、善行とはとても言えない村長の態度に、村人は思うところがあるらしい。
まあ、当然と言えば当然だろう。とはいえ、村長の家もあまり裕福そうじゃなかったので、大変なんだろうとは思うけどね。
俺達は村の外に出て多少東へ進んだら、崖のようになっている岩肌を強引に【魔術】でくり貫き、浅い洞窟を作った。150センチくらいの高さの所に入り口を作ったので、殆どの魔物は入れないだろう。
カマクラよりも強度があり、上から襲われる事も無いので安心だ。アルメアだけが若干入り難そうにしていたが、魔物に襲われ難くする為だと言って我慢してもらった。
中で【光球】を使い照らしたら、天井の高さを250センチくらいにして、洞窟を整える。入り口の下の方に空気穴を無数に空けたら、洞窟の完成だ。
空気は入ってくるが寒くはないので、村に泊めてもらうよりは温かく過ごせるだろう。現にシュラも熊のきぐるみは脱いでいる。まだ土の季節とも言えるが、流石に山の上は寒い。
ロッゴやブーリの村人も羊毛のセーターみたいなのを着ていたので、ああいう服装でないと寒いのだろう。俺達の場合は竜革の服やズボンなので、まだそこまで寒くはない。
寒いと騒いでいるのが誰かさんだけなのは、そういう理由からだ。竜の皮という物の凄さを改めて理解した。俺は鍋で聖水を沸かすと紅茶を淹れる。皆の分も纏めて作ったので結構な量があるが、皆が自分のコップに入れると1杯ずつしかなかった。
今日の移動は終わりなので、ゆっくりとしよう。
▽▽▽▽▽
0541終了時点
大白金貨3枚
白金貨9枚
大金貨36枚
金貨143枚
大銀貨515枚
銀貨235枚
大銅貨238枚
銅貨220枚
神金の矛
神鉄の太刀
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




