0053
食事の後、吸血鬼8人は里に帰っていった。この村の浄化が永遠に続く訳ではないと分かったので、移住は無いとの事だ。俺がいなきゃ保てないなら、意味が無いだろうな。
今日はちゃんと狩りに行くのだが、リヤカーは持って行かない。今日行くのは南の大森林だ。そろそろ様子を見ておく必要があり、その為に向かう必要が出て来た。
川で隔てられているとはいえ、スタンピード等が起きないとも限らないので調査をする。流石に森林内にリヤカーは持って行けない。川を越える為に森の拠点の方へ向かう。
「どうするんだい? 橋を架けたり出来ないよ? 大森林から魔物が来てしまうからね」
「幅の狭い所があるんだ。たぶんそこから魔物も来てると思う。そこを身体強化とジャンプで渡る」
「そんな狭い所、どこかにありましたか?」
「俺が下ろされた所だ。あそこは川幅が狭いんだよ」
説明するも、2人は覚えていないらしい。そうやって話している内に到着した。
「ほらな、あの程度なら問題なく跳べる」
「結構距離があると思うんだけどね……」
「まぁ、跳べなくはないと思います」
距離は大体8メートルほど。地球なら無理だが、身体強化があるこの世界なら問題なく跳べる距離だ。俺はさっさと跳び、辺りを警戒する。魔物は居ないようだな。
今の内に2人を呼ぶ。2人は結構ビビっていたが、やってみると簡単に跳べたので安堵している。川を跳び越えるとはいえ、そこまで怖いか? 2人の力なら失敗は無いんだけどな。
大森林の側へ渡り調査を開始する。しかし調査する暇もなく魔物に襲われた。そいつは木の上からこちらに突っ込んでくる。結構速いな、回避優先で戦うか。
「2人とも、木の上から何かが突っ込んでくる。全部で7匹!」
「「了解」」
「「「「「「「シャ!」」」」」」」
「こいつはジャンプスネークだよ!」
俺は左腰の打刀と右腰の小太刀を抜き、蛇の首を斬っていく。直ぐに終わったが、シュラは戦い難そうだった。このジャンプスネークは、その名の通り跳んでくる蛇だ。
体長は1メートル20センチぐらいで胴の直径は5センチほどの小さな蛇だ。この小ささも厄介だな。木の上や藪の中から跳んでくるので回避し難い。
結構な毒を持っていて、噛まれると噛まれた部分が麻痺する危険な蛇だ。毒は浄化すれば問題なく、俺達にとっては脅威じゃない。だが跳んでくるのが鬱陶しい。
死体を処理しアイテムバッグに入れて貰う。ここからは【探知】と【空間把握】に加えて【気配察知】と【敵意察知】も使って警戒を密にしよう。
【敵意察知】は【念術】の一つで、敵意のみを調べる技だ。【探知】に比べて敵意の反応だけなのが、ちょっと使い難い。ただ、敵を探すだけなら使い勝手は悪くない。
そのまま警戒を密にして進んで行くと、再びジャンプスネークに襲われた。今度は5匹だったので直ぐに倒し、処理も終わらせる。更に進むと久しぶりの奴が居た。
「前からイエローボア3匹が来る!」
「「「シャーッ!!!」」」
久しぶりだが戦闘は直ぐに終わった。処理の最中に2人が、「肉は売らずにトーカにあげよう」と言っていたので了承した。
俺も女将さんを怒らせたくはない。あれは猛烈な圧力だった。
色々動き周りながら、浄化しつつ探索を続ける。俺にとっては浄化する事も重要な仕事だ。そうやって浄化していると、ソイツは出て来た。
「2人とも、何かデカイのが来る! ゆっくりだがデカイ!」
「ゆっくり……? もしかして!?」
「アルド、ダナ。カッパータートルです!」
「………!!」
妙に綺麗な灰色の甲羅を持つ亀が現れた。それにしてもデカイな、体長は5メートルほどもある巨大な亀だ。あげく灰色のオーラを纏っている。……よかった、カモだ。
俺は今日の朝の事を思い出し亀の中から浄化を始める。漠然と浄化するんじゃなく、内側から溢れ出すように浄化していく。亀は一切抵抗する事なく、寧ろ身を委ねている様だ。
亀の顔が安らぎに満ちると同時に、完全な浄化が完了した。直ぐに解体して処理し、心臓を取り出す。2人にも食べさせるのだが、やはりダナは少し嫌がっている。
「どうしても、慣れないねぇ……」
「こればかりは仕方ありませんよ。それに、食べてから肉体が強くなっているのは感じますよ?」
「アタシもわかってるさ。魔力や闘気の質も少し上がってるし、夜の方も強くなってる……はず」
「夜は勝てませんよねぇ。どれだけ邪生の心臓を食べても、勝てるとは思えません」
「う~ん……。無理なのかねぇ。シュラが言ってたけど、蹂躙されるのも………ね///」
「そうですよ。アレは大変イイものです///」
「ハマったら抜け出せそうにないんだよ///」
「ダナ……。それがイイんですよ///」
何で邪生の心臓から、ピンク色の話に飛ぶんだ? ここ大森林だからさ、ちゃんと警戒してほしい。遠足は帰る迄が遠足だ。油断して死ぬなんて事は御免被る。
少しの休息後、再び進む。大森林と言われるだけあって方角を維持するのも苦労する。俺だから出来ているが、普通ならとっくに迷ってるぞ。方角を修正しながら進んでいると魔物が現れた。
「前と左右から1匹ずつフォレストベアが来る」
「「「グルルルルル!!」」」
3人が1対1の状況を作り出す。俺は槍の穂先を喉に突き刺し、右に薙いで放っておく。2人を見ると、魔力と闘気の身体強化が上手くなっていて、危なげなくフォレストベアを倒していた。
俺が放っておいたフォレストベアも死んだので、処理して収納してもらい先へ進む。警戒しながら進んでいると開けた場所があったので、そこで昼休憩にした。
広場の中心にアレの反応があり驚いた。直ぐにその場所に行き、【魔術】で掘り出して【融合】し1つに纏める。握り拳2つ分ぐらいの量が手に入った。……マジかー。
「どうしたんだい!? 急に走り出して、ワケの分からない事を始めて」
「それなりの塊ですね? この塊はいったい何でしょう?」
「これは、アダマンタイトだ」
「「は?」」
「アダマンタイトだ」
「「えーーーーーーっ!?!?!?」」
「いやー、何でこんな所にあるんだろうな? 俺もビックリだよ」
「こ、これが。アダマンタイト……」
「これが鉄と混ぜ合わせる前の、本物のアダマンタイトなんだねぇ」
「そうだ。これで3人の武器が1人に1つ作れるぐらいの量になる」
「これだけ有るのに、と言うべきでしょうか?」
「これだけしか無い、と言うべきなのかねぇ?」
「それでも1人1つは作れる。どうするべきか?」
「手に入るとなると……悩むね。マナリアじゃなくてアダマンタイトだ」
「アルドにとっては普通のマナリアでも、恐らく質の悪い武器ですよ?」
「そうなんだよねぇ……。ドコまでスゴイのが出てくるのやら………」
「とにかく、携帯性が良くて使い勝手のいい武器にするべきだ。最悪、隠せるように」
「そうだね。面倒臭いのは嫌だからね」
「私も面倒なのは嫌です」
「一旦村に帰って武器作りだな」
「そうですね。調査の気分は吹っ飛びました」
イエローボアの肉を焼いて食べた俺達は、一路村への帰路を進む。警戒しながら戻るも、いつも通りと言うべきか帰路だからなのか、当たり前のように魔物に襲われた。
「「「ブルルル!」」」
オークなんだが何かおかしい、オーククイーン的な奴と同じくスマートだ。オス1匹とメス2匹のようなのだが、普通にスマート体型だ。スマートな方が強いのか?。
何だか美男美女に見える不思議。ムカついたので、さっさと始末した。処理をしたので収納してもらい、帰りを急ぐ。
無事に川の所まで戻ってきたので、ジャンプで越えて一息吐いた。
見ていた連中が驚いていたが、気にする事もなく村への道を帰る。昼過ぎだが村に到着できたので、まずは解体所に行こう。
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0053終了時点
金貨18枚
大銀貨53枚
銀貨19枚
大銅貨17枚
銅貨5枚
風鹿の角槍
風鹿の角の太刀
赤豹の爪の小太刀
剣熊の爪の打刀
赤豹の爪の小烏丸
強打猪の牙のファルクス
剣熊の爪の斧
風鹿の角の十手
剣熊と風鹿の革鎧
剣熊の革の剣帯
剣熊の革の指貫グローブ
剣熊と風鹿の肘防具
剣熊と風鹿の膝防具
剣熊と風鹿のブーツ