0537
宿を出て食堂へと向かう。朝早いので屋台はまだ出ていないうえ、酒場は当然開いていない。朝、食事が出来るのは食堂だけなんだが、4軒あってどこに入ろうか悩んでいる。
そうしていると、1軒の食堂にダリアが近付いたのでそこに決めた。中に入り大銅貨9枚を支払って朝食を注文する。テーブル席で待っていると、パンとサラダと焼き魚が出てきた。
皆は慣れていないので四苦八苦しながら食べているが、俺はダリアの食べる魚から骨を外してやる。ダリアはお礼なのか一鳴きした後、美味しそうに食べ始めた。
俺もさっさと骨を外して食べようとすると、女性陣からの視線で止まった。……結局、全員分の魚の骨を【分離】して【念動】で外す羽目になった。
食事をしているフリをしてもらいながらなので余計に疲れたが、少しずつでも魚を食べるのに慣れてもらいたい。
もう少し年代が進むと、魚の身だけを料理として出すようになるのかもしれないが、今はまだ魚1匹をドーンと出すスタイルだ。
日本だと普通だが、フランスとかだと身だけ出してるイメージなんだよな。箸の文化と、ナイフやフォークにスプーンの文化の違いかね?。
朝食を終えて食堂を出る。町の入り口へと歩いていると、例の神官が道の横から出て来て猛烈な勢いでフォルに握手を求めてくる。
フォルが握手をしてあげると物凄い喜びようで、スキップしながら神殿に帰って行ったが、俺達は唖然としながら見送る事しか出来なかった。
気を取り直して、門番に登録証を見せて外に出たら、道なりに走って進んで行く。いつもの様に傭兵や商人の馬車を追い抜きながら進んで行き、キュールの町の東にあるウェウの村に着いた。
邪気を浄化しながら見回って、次の村へと進んで行く。村人は若干不審な目を向けてきたが、それだけで済んだ。
もしかしたら不審者と誤解される事もあるかもしれない。出来るだけ村を観光してる風を装ったんだが、この世界では観光をする者が殆ど居ないから、あんまり理解されないんだよな。全く理解されない訳じゃないんだが、どうしても不審者一歩手前だ。
それでも、あからさまに不審者扱いはされないので助かっている。村の規模なら邪気吸引機で全力吸引すれば良いんだが、それをすると怪しすぎるんだよ。
今は剣帯の所に引っ掛けて体にくっ付ける形で持っているのだが、全力吸引する場合は手に持たなきゃいけない。掃除機の先を手に持った奴って、間違いなく不審者だ。
次の村に進みつつも良い案は出なかったので、結局観光を装う形を続ける事にした。ヴィムの村に到着した俺達は、観光を装いながら邪気を浄化してさっさと村を出る。更に東へと走り続け、昼前にはジェブの町へと到着した。
ジェブの町は王都の手前という事もあり、かなり賑わっている町だった。エルダ海洋国では船で運ばれてくる交易品は一度王都へと集められる事もあり、王都へと仕入れに行く者はとても多いんだそうだ。
船で交易も運搬もしているが、沖に出なければそこまでの危険は無いらしい。船を破壊するほど強力な攻撃をしてくるのは沖に出る大型の魔物らしく、陸に近い所ではそこまで大型の魔物が出る事は無い。
ただし、浅瀬に乗り上げて沈む事はあるので、そういう危険は元の世界と同じだ。
とはいえ、船乗りなら地形の把握は当たり前の事で、船乗り同士知識を教えあったりするらしい。普通は教えないと思うが、お互いの船が沈むよりマシだと考えているみたいだ。
港で船を見ていると、そんな会話が遠くから聞こえてきた。ダナの表情も良いので、海の臭いは全く問題ないようだ。港を後にした俺達は豊富な食材や、種類の多い交易品などを見ていく。
ビックリするほどの高値が付いていたのが、なんと鏡だった。しかも俺が作った物より透明度が低いのだが、それでも金貨レベルの売り物だった。間違いなく、俺の作った鏡は外に出せないな。
色々な物を見回りながら浄化していると丁度お昼になっていたので、近くの食堂に入り大銅貨9枚を支払って昼食を頼む。出てきたのは、パンと海鮮スープと焼き魚だった。皆はちょっと嫌そうな顔をしたが、俺が1つずつ教えながら食べ方の指導をした。
周りの客も俺が詳しいのでビックリしていたが、それは気にせずに教えていく。ちなみに、ダリアのはコソっと骨を外しておいた。
箸ならもっと簡単なんだが、ナイフとフォークでは骨は外し辛いんだよな。そう思いながら昼食を終えて食堂を出た。町の入り口へと歩きながら、皆は口々に魚はもういいと言い始めた。
食べるのが面倒という気持ちは分からなくもないが、そこまで嫌わなくても……。皆には箸を使わせた方が良いのだろうか? そんな事を考えながら東の王都に向けて走って行く。
傭兵もそうだが、とにかく商人の馬車が凄く多くなってきた。王都に近付いているというのが良く分かる光景だ。
他の国よりも遥かに多いが、何処の国でも首都に近付くと似た光景になる。横に避けながら追い抜いたりしながら、王都の入り口へとやってきた。
壁の高さは8メートル、厚さは4メートルくらいだろうか? 儲かってるからか、デカくて分厚い壁だなぁ……。
堀が無い事が少々気になるが、総じて防御力は高そうだ。堀が無いのは上から煮えた油でも掛ける為だろうか? それでも堀が無い理由にはならないか。
門番に登録証を見せて中に入る。王都というのは何処の国も似た様なものになってしまうのかね。高い建物が密集して人が住み、大きな城でビビらせる。王国も聖王国も商業国家も同じだったぞ。傭兵国家と帝国は首都に行ってないので知らないが。
町並みもそこまで変わる訳でも無いのは、似た様な文化圏だからだろうか。移動してきた距離はそれなりに長いが、地球より大きな星からすれば微々たる距離でしかないのかもしれない。まだまだ文化が変わるような距離ではないと、そういう事なんだろう。
ウロウロとしながら邪気を浄化し、王都に集められた交易品を見ていく。そこでようやく茶葉を見つけたんだが、そこに在ったのは発酵して紅茶のようになっていた茶葉だった……。
コレじゃないんだよ! 俺が飲みたいのは緑茶なの! 地球でもヨーロッパに輸出された茶葉は、船の中で発酵して紅茶になっていたとは聞くけどさー……。俺がガッカリしているので皆が心配してくれたが、俺はコレじゃない理由を話す。
チャノキの茶葉には大別して3種類あり、発酵させた紅茶、半発酵させた烏龍茶、発酵させない緑茶。その中でも俺が飲みたいのは、発酵させずに直ぐに蒸して揉んだ煎茶なんだと説明していく。皆は理解出来なかった様だが、見た事が無いんだから伝わらないのも仕方がない。
店の店主は「へぇ~」と言っていたが、多分店主も分かっていないだろう。緑茶は採って直ぐに加熱してしまうので、発酵しない茶葉なんだよな。1度緑茶にすれば長く保存できる便利なお茶なんだが、蒸したり揉んだりといった技術が確立されてないのかね?。
ちなみに、個人的な事だが俺は抹茶が好きじゃない。あの渋味と苦味が美味しいのであって、それが少ない抹茶はどうしても好きになれない。それに抹茶系のお菓子も嫌いだった。わざわざ甘い菓子に抹茶を使うなよ、という思いがどうしてもあるんだよな。
甘い菓子を食べて、渋いお茶を飲んで甘さを流して、また食べる。そのルーティーンが素晴らしいのであって、一緒にするのは唯のアホだと思っている。
「そ……そうなのかい? アルドがそう言うなら、そうなんだろうね」
どうやら気合いが入りすぎて、おかしな事を口走っていたらしい。一旦冷静になろう。
「美味しい飲み物ではないんですよね? 渋味と苦味と言ってましたし。その割には飲みたくてしょうがないみたいですけど、危険な物でも含まれてるんですか?」
「そんな事はないさ。ただなぁ……飲むと落ちつくんだよ。何と言うか、ホッとする飲み物だと言えば伝わるか?」
「なんとなくは……」
まあ、個人の感想でしかないからな。完全には伝わらないか。
▽▽▽▽▽
0537終了時点
大白金貨3枚
白金貨9枚
大金貨36枚
金貨144枚
大銀貨515枚
銀貨235枚
大銅貨296枚
銅貨220枚
神金の矛
神鉄の太刀
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




