0532
「本当に貴族っていうのは碌な事をしないねぇ……。そんなに息子が大事なら家から出すんじゃないよ! まったく、呆れてものも言いたく無くなる!」
「気持ちはよく分かりますよ。おそらくですが、あの女たちも侯爵が息子の為に宛がったのでしょうね。ギリギリですが傭兵ギルドの法には抵触しないでしょうし」
「侯爵が用意した人員でも、本人が知らないなら仕方がないものね。あの男の子が知らない内に集められたんでしょうけど、女性ばかり宛がうのはどうなのかしら?」
「私はむしろ当然だと思うけどね? 侯爵の子が男性でも女性でも、どちらにしても宛がうのは女性の方が良いよ。変な女を孕ませても困るし、変な男に襲われても困るだろう? 護衛として付けるなら女性を付けるのは当然さ」
「成る程な。確かにそう考えると、男を付ける意味は息子の場合くらいしか無いのか。変な女に誘惑される可能性も考えて、信用できる女を付けた訳だな。仮にそういう関係になっても避妊はしっかりするだろう」
「そうだね。変な女に引っ掛かったら、それだけで醜聞だからかな? 過保護というより、侯爵家の為にやったという方がしっくりくるんだけど、どうなんだろうね?」
「さて、そこまでは分からないな。同じ事をやっても、どういう思いでやったかなんてそれぞれ違うし、同じ結果でも受け取り方はそれぞれ違ってくる。侯爵家の為にやったのか、本人の為にやったのかは、やらせた本人にしか分からない事さ」
宿を出る際に大銅貨4枚を払い、今日も泊まる事を伝える。昨日と同じ食堂に行き大銅貨9枚を払って朝食を頼むと、朝の漁の成果だと思われる魚のごった煮が出てきた。昨日と違うのは、今日のは魚醤で味付けされている事か。
相変わらずカオスな煮物だが、色んな魚から味が出ていて美味い。魚醤が良い感じに染みているし、大量に海産物を入れて煮込まないと出ない味が出ているので、海の近くでしか食べられないだろう。朝から良い気分だ。
美味しい食事を終えて、町の北門からダンジョンへ出発する。地図を見返しているが、子供の落書きより多少マシなぐらいでしかないので、どれぐらいの距離があるのか分からない。少なくとも町の直ぐ傍にある訳ではないらしい。
ダンジョンに向かって走っていると直ぐに壁が見えてきたので、門番に登録証を見せて中に入る。
中央にある<迷宮紋>に向かっていると、昨日の5人組とクランメンバーと思わしき者達が雑談しながら順番を待っていた。総勢で17人か? 随分多いな、数に任せた攻略チームかね。
その17人が一斉に入った後、少し待ってから俺達も入る。1層は疎らに木が生えた平地だったので、直ぐに【探知】と【空間把握】を使い東へと進む。
邪気を吸引する魔道具を使いながら走って行き、5人組とそのお仲間を追い抜いて転移紋に乗る。2層も全く同じだったので、東に行って転移紋から3層へ。
3層も同じだったので、東の転移紋から4層へ。4層は森だった。水がどこに関係あるのか分からないが、北の方に傭兵の気配が多いので北へと進む。
進んでいる途中から足元が泥濘はじめたので、これが水のダンジョンかと思い知った。泥に足を取られる所為で、思っているより体力を使う厄介なダンジョンだ。
北の転移紋から5層へと進み、5層、6層と突破していく。7層は湿地帯だった。強い魔物は居ないものの、湿地に隠れて強襲してくるタイプの魔物が多い。
この層は正解が西だったのだが、俺達が早すぎたのか既に傭兵の姿が無い。おかげで少々手間取った。
8層、9層と突破して10層に辿り着いたが、ここは沼地か……。それでも正解は南だろうから先程の湿地帯よりはマシだろう。
そう思いながら進み、要所で水魔法を使い泥の中の魔物に奇襲する。奇襲される前に奇襲出来るのも俺達の強みだ。足を取られながらも、南の転移紋から11層へ。
11層、12層と進み、13層は海だった。普通の海の地形なので皆と相談し、今の内に昼食をとっておく事にした。
体感では昼前ぐらいなので、丁度良いとも言える。焼き場を作り、焼き網と材料を出したら、チャパティ作りをしていてもらう。
俺はその間に海に行き塩を小樽5つ分作ったら、海産物を【念動】でゲットしていく。絞めて血抜きをし、凍らせたらアイテムバッグに仕舞う。
十分な海産物が手に入ったら皆の下へと戻ったが、「遅い!」と猛烈に怒られた。どうも調子に乗って集めすぎた様だ。
仕方なく肉類を出して皆に焼かせていく。もちろんチャパティも焼くのだが、海産物に関しては貝類だけ焼いていく。皆が魚を食べるのに慣れていないので、骨を外したりしている暇が無い。
唯でさえ待たせてしまったので時間の掛かる事は止めておこう。別にいつでも食べれるし。
「アルドが遅かったとはいえ、その甲斐はあったねぇ! 貝って本当に美味しいよ! 魚醤を垂らして食べると絶品さ。ここがダンジョンじゃなきゃ、お酒を飲むところなんだけど……」
「私も同じ気持ちですよ。流石にこの味はお酒を飲みながら食べたいです。アルドが急いで海に行き、あんなに時間を掛けて集めるのも分かりますね」
「とても美味しいのだけれど、海に来ないと手に入らないのよね。たとえダンジョンといえども海の地形が無い場合もあるし、アルドが言うには獲りすぎれば無くなってしまうって聞いたわ」
「主様が仰るには、毎年莫大な量を獲っていれば……という事らしいから、大丈夫だと思うけどね。主様の故郷みたいに魔物の居ない世界なら莫大に獲れるんだろうけど、この世界には海に竜も居る。莫大に獲る前に船が沈められるよ」
「まあ、そうだろうな。流石にそんな事をしていたら竜に殺されてしまうだろう。唯でさえ海の上では陸の上とは違うんだ、海に投げ出されてしまえば人間種は死ぬしかない」
「竜よりも、普通の魔物に船が沈められる方が先じゃないかな? 船が沈められて死んでしまう事も多いらしいし、あまり遠くへは行けないって食堂で聞いたけど……」
「沖に行けば行くほど水深は深くなっている筈だ。つまり遠くへ行くほど巨大な海の魔物に出会いやすくなる。陸とは違って水の中は浮力があるから、水中の生物は大型化しやすいんだ」
「へぇ~……。海の魔物は大型化しやすい……ん? 大海竜と海蛇竜が大きかったのは、海の竜だからって事かい?」
「ああ。と言っても限度はあるだろうがな。それと水中から出てくる場合、陸に出られる大きさまでしか無理だ。水中に特化して大型化した場合は、水中から出られなくなるんだよ。単純に言うと、体が重すぎて水の外に出られないんだ」
「何と言うか、太りすぎて水から出られないって事ですか? ……ああ、やっぱりそういう事なんですね。竜は出て来れるので太りすぎてはいないと。でも太りすぎて水から出られない魔物も居る。訳が分かりませんね」
「まあ、人間種にも太って身動きが取りにくそうな者が稀に居るから、どっちもどっちな気がするわね。あそこまでに成れるって1種の才能なのかも……」
「確かに。太ると言っても普通の者には限度というものがある。どう考えても無理だろう? と言いたくなるほど太ってるのも確かに居るね」
雑談しながらの美味しい昼食も終わり、焼き網を浄化して回収した後に焼き場を壊して更地にした。
さて、出発! となったのだが、次の方角はどっちだっけ? ……あっ! そういえば東北西南と進んだので次が分からないんだった。さて、どっちに行くか……まずは東だな。
元に戻っている可能性を考えて東に行ったのだが、透明の壁にぶつかった。仕方なく少し戻って北に向かう。その途中に転移紋を発見したので、乗って14層へと進む。14、15と突破して行き、16層へと進んだ。
16層は湿地帯だったのだが、最悪な事に夜の湿地帯だった。ここにきて、急に難易度が跳ね上がったな。あのナントカってクランもこの辺りで停滞してるのかね? ま、とりあえず進むか。
おそらく北西だろうと当たりをつけて進んで行く。正解だったら良いんだが……。
▽▽▽▽▽
0532終了時点
大白金貨3枚
白金貨9枚
大金貨36枚
金貨144枚
大銀貨515枚
銀貨235枚
大銅貨360枚
銅貨220枚
神鉄の太刀
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




