0531
「担ぎ上げられただけなのは、多分間違い無いと思うけれど……。女性達の傀儡なのか、それとも本人も納得して担がれているのかによって変わるわね。一緒になって尾行している時点で傀儡でしょうけど」
「まぁ、そうだろうね。そもそもクランのトップなんだから結構な実力が無いとおかしいんだけど、あの男にはそれを感じなかった。となると、どこかに纏め役の実力者が居る筈さ」
「そうだな。結局のところ、傭兵というのは荒くれだだ。だからこそ実力のある強い者にしか従わないし、あの男ではその役は無理だろう。つまり担ぎ上げられているという結論になるんだが、何故クランメンバーが大人しく従うのだろうな?」
「もしかしたら、あのイケメン君は貴族の子供かな? お金をくれたり、貴族の家が後ろ盾をしてくれるなら従うと思うんだけど? 結局のところ、生まれや血筋は完全には切り離せないし……」
「確かに、その可能性はあるな。まあ、傭兵ギルドが注意するほど手を出したりしていないなら、問題は無いんだろうさ。それに貴族のように振舞えば、他の傭兵が黙ってないだろう。それなりに上手くやってなきゃ、慕われる事なんて無い」
「それはそうなんだけど、そもそも貴族の子供かは分かってないんだけどね。それに平民だろうが貴族の血筋だろうが、アタシ達にとったらどうでもいい事さ。明日攻略して、明後日にはこの町を出るんだし」
「それはそうなんですけどね。とはいえ、水のダンジョンなんて初めてですし、もしかしたら苦戦するかもしれませんよ? 慎重に進むぐらいで丁度良いでしょう。とはいえ、おそらくは草や木のダンジョンと同じで、そういう地形が多いだけでしょうが……」
「海の地形や湿地帯かしら? それに沼地もあり得るわね。もしかしたら、平原の地形に大きな池とかがあったりして……」
あんな地形が、こんな地形が、と皆は楽しそうに話しているが修行は続けている。何かをしながら魔法が使えて、初めて一人前だと言った事を覚えているみたいだ。
戦闘中も戦いながら魔法を使わねばならない以上は、集中して魔法を放つなんて暇は無いし、それでは役に立たない。
この世界の純魔法使いが役に立たない理由だが、これ自体は仕方がない。ゲームじゃなくリアルである以上は、動けなきゃ死ぬのは当たり前だからな。
○○が3体現れた! とかそんな事は現実には無い。いきなり増援が来たり、別の魔物に不意打ちされたりするのが当然だ。
だからこそ魔法は補助に近くメインの攻撃手段にするのは難しい。強力な魔法ほど使用する魔力や集中力は大きくなるので、戦いながら行使するのは難しくなる。
ちなみに、俺は戦いながら高位魔法を使えるが、使う意味が無いので使わない。初級魔法で十分勝てるからだ。魔法がメインではない以上は、魔法で止めを刺す必要が無い。ならば初級魔法で牽制した方が都合が良い。
それに、高位魔法はアホほど魔力を消費するうえ、訳の分からない威力と範囲なので使いどころが無いんだよな。神様達が深夜のノリで作った魔法だからね。
この世界で高位魔法の極限が使えるのは、多分俺だけだろう。凄まじい魔力と集中力、そして制御力が要求される魔法であり、失敗すると反動で死ぬ。そんな魔法が高位魔法であり、その極限だ。
そんな話を皆にしながら間違っている箇所の指摘などをしていると、既に夕食の時間になっていた。この宿は食堂が無いので食べに行かなきゃならないのだが、折角だから港に近い昼に行った食堂に行こう。
皆と一緒に宿を出て歩いていると、妙な気配が後ろを尾いてきている。さっきの5人組じゃないな、コイツ等。
とはいえ、襲撃される事も無く食堂に着き、大銅貨9枚を支払って夕食を食べる。夕食はパンとサラダに蟹と海鮮スープだった。
昼間と同じでメインは汁かと思ったが、デカい蟹がドーンと1匹皿に乗って出てきた事にはちょっと驚いた。ただ焼いただけみたいだが、それ以上は不要だろう。
ダリアの皿の蟹の身を【分離】してやり、殻と身と蟹みそに分けてやったら自分の分も分ける。さぁ、食べようかと思ったら皆から視線が集中した。どうやら食べ方が分からないらしい。
なので一つずつ教えながら食べる事になった。周りを見ると自分のナイフで殻を切り裂いて食べてるみたいだ。随分と豪快だなぁ……。
俺は王角竜のハサミ等を貸してやり、自分の手で殻を取るように言う。皆は【練成術】を使って欲しかった様だが、俺も食事がしたいので勘弁してほしい。
明日行くダンジョンで竜が出たら、皆の日用品を作るべきかな? 王族も持たない贅沢品になるだろうが気にしてはいけない。
皆は悪戦苦闘しながらも蟹の美味しさが理解できたのか、食べる事は止めない。段々と一心不乱と言いたい程に集中しながら食べている。
どうして蟹を食べる時って無言になるんだろうね? 日本も異世界もこんなところは変わらないらしい。ちなみにフヨウさんは殻ごと溶かしていて、店で1番ワイルドな食べ方をしている。
満足する食事を終えて宿への帰り道を歩いていると、またもや後ろから尾けてくる者が居る。随分な暇人だなぁ……と思いつつも尾行を無視して宿の部屋へと戻った。
【探知】と【空間把握】を使っているので、周りに他の監視者や尾行が居ない事も分かっている。5人組以外で尾行しているのは、全て同じ奴等だ。
装備が傭兵の様なので、おそらくは<剣の導き>とかいうクランの奴等なんだろうと予想している。しかし、何で俺達を尾行しているのかはサッパリ分からない。
今も宿の外で見張っているみたいだが、どういう事なんだろうな? 尾行している奴等は、話をするでもなくジっと黙ったままなんだ。流石に喋ってくれないと、俺でもどうにもならない。
仮にこっちから襲って吐かせるにしても、深夜になってからじゃないと人目に付く。俺も随分アレな考え方をする様になったもんだ。
とはいえ、尾行してくる奴等が居る以上は当たり前ではあるんだが。流石に日本に居た時の様に平和ボケはしていない。殺るか殺られるかという状況が、それなりに起こる以上はボケてはいられないしな。
布団を敷いた後、ダリアやフヨウと遊んでいるのだが動きは無い。2匹が眠ったら皆に連れて行かれたので、【房中術】のみで返り討ちにしていても動きが無い。ずっと定位置で見張りを続けている。
俺は布団の上に座って、温めた聖水を飲みながら【空間把握】で監視しているが、見張りを続けているだけだ。
ただ、監視者が交代して分かった事がある。それは、5人組と関係が有りそうで無いという事だ。交代して去っていった奴は町中の小さい家に行き、そこで報告をしてから寝ている。
どうもフォルの予想は当たっていたらしく、あのイケメンは貴族の家の者らしい。要するに貴族のお坊っちゃんに近付く奴を監視している様だ。
俺達に危害を加える気は無いようで、余程の事が無い限りは監視だけだろう。何だか過保護すぎる気がするんだが、侯爵様と聞こえたので高位貴族ならそこまでするんだろうとも思う。まあ、監視してるだけなら御苦労様というだけだ。
俺もそろそろ寝るか、おやすみなさい。
<異世界216日目>
おはようございます。今日はダンジョンアタックの日です。水のダンジョンと聞いているから対策自体はそこまで難しくはないが、こっちの予想を越えてこられると厄介だ。おそらくは大丈夫だと思うが……早いな。
「おはよう。ダリア、フヨウ」
「ニャ!」 「………」
2匹は昨夜、俺が布団に入って目を瞑った時に起きて、布団の中に突っ込んできたんだ。温かかったからか、よく眠れたみたいだな。そろそろ寝る前にきぐるみを着させてやるべきだろうか?。
「「「「「「チュッ! おはよう、皆」」」」」」
「おはよう、皆」 「ニャ!」 「………」
俺は夕べの逆監視した際の情報を皆に話しておく。すると全員が溜息を吐いた。まあ、気持ちはよく分かるよ。また、貴族の下らない事で迷惑被ったという話だからな。
▽▽▽▽▽
0531終了時点
大白金貨3枚
白金貨9枚
大金貨36枚
金貨144枚
大銀貨515枚
銀貨235枚
大銅貨373枚
銅貨220枚
神鉄の太刀
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




