0051
はい、こちら現場のアルドゥラムです。現在、吸血鬼族の話し合いの真っ最中です。
……俺? 俺は予定通りに酒作りだよ。横でダナが手伝ってくれてる。たぶん、早く飲みたいだけだ。
「それで、何故フルールやロムワルの者どもが、このルーデル村に来るのです?」
「「「「「それは……」」」」」
「ここは私からお話し致します。このルーデル村が、吸血鬼族にとって清浄で住みやすそうだという情報が入ったからです」
「この村が清浄……? あっ! もしかしてアルドの所為ですか!?」
「うん? 俺? 俺がどうかしたか?」
「アルド、手が止まってるよ!」
「ゴメン」
何かあったんだろうか? 酒作りは、ワイン、シードル、ミードと終了した。この後ブランデーとウイスキーで終わりだが、この量でいつまで持つのやら。
「あの方の所為……? なのですか?」
「第二世代とはいえ、真祖である以上は分かりますか」
「はい。あれほど”ピュア”な方が分からないという事はありません」
「でしょうね。とはいえ、アルドは既に私と<主従の契約>をしていますから、血は無理ですよ?」
「契約を!? 本気なのですか!? 第一世代たるシュライア様が?」
「そうです。アルドも不老長寿なのですよ。これで意味が分かるでしょう?」
「始祖様と同じ……」
「えぇ、その通りです。私は母上と同じ、最高の伴侶と出会ったのです。最高の伴侶との主従の契約は”永遠に貴方と共に在る”。そういう宣言であり契約です」
「何という事………。アルメア様が何と言われるか……」
「うっ! そ、それは……」
ん? 何か話が変な方向になったな。酒作りはやっと終わったんだが、暇なのかバカ殿達がチラチラこっちを見てくるんだよ。飲むのはいいが【熟成】をもう少し使っておくか。
「アルメア様の旅の目的は、余りにも有名でございますが……」
「そうなんですけどね。目の前に最高の伴侶が居るのに、姉上に譲るというのは……」
「アルメア様は男装されていますが、今も恋する乙女ですから……」
「姉上に知られたら戦争ですかね?」
「避けられないかと……」
何か話が凄い方向にいったぞ!? マジで戦争案件なのか俺? 追っかけ回されるのはヤダなぁ……。とりあえず最後に浄化して、酒作りを終わらせよう。話はそれからだ。
「!?!? 何て神聖な!!」
「アルド……。何故、吸血鬼の前で使うんですか?」
「いや、なんというか……。いつもの癖?」
「確かに、いっつも浄化してるね」
「汚い部屋に居たくないだろ? 綺麗な所じゃないと気分悪いし」
「えぇ! えぇ! 仰る通りです! 綺麗にするべきなんです!!」
「お、おぅ………。急にテンション上がったな……」
「吸血鬼にとって、浄化されて清潔な部屋は特別だと言ったでしょう」
「聞いたし、覚えてるが……ここまでか?」
「ここまでです! それに、普通の浄化魔法と【浄化】の権能が同じ筈がないでしょう!?」
「【浄化】の権能?」
「あーあ………。さっきのはシュラが悪いねぇ……」
シュラがバラした為に説明する羽目になった。説明を聞いた吸血鬼一同は呆然としている。ちなみに女吸血鬼2人は、少し前に気が付いて起きているので一緒に聞いていた。
折角なので固まっている連中を無視して、強力な浄化をこの場に居る全員にする。かなりの浄化をしたからか、時間が止まったかのように固まっているな。
ダナとシュラは一瞬白い目を向けてきたが、諦めて酒を飲み始めた。シードルの匂いが部屋に広がると、全員が再起動した様だ。
「何という事でしょう! 我が吸血鬼族の救世主がこんな所にいらっしゃったなんて!」
「貴殿はとんでもない方だったのですね! 先日は大変申し訳ない事をしてしまいました!」
「「「「「「申し訳ございませんでした!」」」」」」
「何か勘違いしてないか? 俺は吸血鬼族を助ける為に居るんじゃないからな?」
「違うのですか!? 何故我々を救ってくださらないのですか!?」
「いや、何故もなにも。俺は神様から”下界を掃除しろ”と言われてるんだ。ついでに権能を与えてくれたのは浄神だ。血神は会った事も無いぞ?」
「それ以前に、私がここに居るというのに随分いい度胸をしていますね? やはり”根切り”にした方がいいでしょうか?」
「「「「「「「「申し訳ございません!」」」」」」」」
やはりシュラは恐ろしいらしく、脊髄反射で謝罪している。そろそろ一旦落ち着いてもらうか。
落ち着いて話をさせる為に酒を飲ませる事にしよう。しかしコップが無いな。
彼女等はコップを持っていなかったが、ダナとシュラが持っていたコップに入れて酒を飲ませる。2人は「コイツ等に飲ませるの?」と言ったがスルーしよう。
「ちょっと聞きたいんだが、そんなに吸血鬼の間で話題になってるのか? この村」
「そうですね。村が浄化されていて、我等吸血鬼が非常に住みやすい。そういう話でしたので見に来たのです」
「俺が下界に来て、まだ24日目だ。一体誰が言ってるんだろうな。情報が早すぎないか?」
「さてねぇ……。魔鳥便もあれば、早馬で手紙を運ぶ仕事もある。特定するのは難しいよ。ただ、何故こんな田舎の事が? という疑問は残るね」
「もしくは商人ですかね? 彼等の情報網は馬鹿に出来ませんから」
「成る程なぁ……。現在の村は浄化がほぼ終わってるんだよな。下界の掃除として、身近な所から綺麗にしてたんだ」
「ちゃんとした理由があったんだね。てっきり汚いのが嫌だから浄化してるのかと思ってたよ」
「半分ぐらいはそうだな。ただ、折角なら作物も元気に育ってほしいだろ? 子供の死亡率も減るし」
「「もしかして……」」
「作物の病気とかも浄化出来るよ。【浄化】の権能で浄化出来るのが、邪気だけの筈がないだろ? 知ってるだろうに」
「「知らない!」」
「あれ? 言ってなかったか?」
「「聞いてない!」」
そんな話の間、俺達3人以外が静かだったので見てみると、舐めるように大事そうに酒を飲んでいる面々が居た。真祖のフルールさんも同じように飲んでいる。
その飲み方ってどうなんだ? 真祖的にいいのか? シュラの表情的には駄目そうだな。
「フルール。その汚い飲み方は止めなさい」
「しかし……」
「2人とも、納得するまで飲ませてやったら?」
「う~ん……。まぁ、いいか。ただしゆっくり味わって飲みな!」
「そうですね、ちゃんと味わって飲みなさい」
「「「「「「「「ありがとうございます!」」」」」」」」
いや、2人こそ大事に飲めよ。ヴェルさんと女将さんと一緒にどんな飲み方したのか忘れたのか? 浴びるようにガバガバ飲んでたじゃないか。味わってなんか、なかっただろ。
俺の視線を感じたからか、2人は俺から目を逸らした。吸血鬼だからワインが人気なのかと思ったら、一番人気はシードルだった。2番目はミードで、3番目がウイスキーだ。
何故かと聞いたら、ワインとかには飽きているらしく新しい酒の方がいいそうだ。俺が【熟成】したワインは凄く美味いらしいのだが、飽きるのはしょうがないな。
フルールさんに拝み倒されたので、シードルとミードの作り方は教えておいた。もちろん普通の作り方で。俺の【錬金術】を駆使したおかしな作り方ではない。
ダナとシュラはいい気分なのか、俺に抱きついたりキスしたりとしている。酔っ払いの行動というよりは見せつけている感じだ。人前で気にせずイチャついていると文句を言われた。
どうも真祖の中でも特別なシュラには、ちゃんとしてほしい様だ。まぁ、目上の人のアレな姿なんて見せられても困るしねぇ。みんな良い感じで酒が入ってきたみたいだな。
この調子で、本音で会話してほしいもんだ。
▽▽▽▽▽
0051終了時点
金貨18枚
大銀貨53枚
銀貨20枚
大銅貨20枚
銅貨5枚
風鹿の角槍
風鹿の角の太刀
赤豹の爪の小太刀
剣熊の爪の打刀
赤豹の爪の小烏丸
強打猪の牙のファルクス
剣熊の爪の斧
風鹿の角の十手
剣熊と風鹿の革鎧
剣熊の革の剣帯
剣熊の革の指貫グローブ
剣熊と風鹿の肘防具
剣熊と風鹿の膝防具
剣熊と風鹿のブーツ