0504
朝食を終えて宿に戻ると、丁度オルニアが来るのと同じタイミングだった。馬車などは用意されておらず歩きで移動する事になる。これは俺が要望した事だ。帝国の奴等もまだ居るみたいなので、仰々しいのは止めてくれと頼むとあっさりOKが出た。
どうも王太子やライブルも何か考えがあったみたいだが、出迎えをしないのが1番良いだろうとなった様だ。今回だけでなく、これからずっと徒歩で良いんだがな。
そんな事を王城に向かって歩きながらオルニアに言うと、「私に言わないで下さい」と怒られた。ま、そりゃそうだ。
貴族街の門を抜け、王城への門も抜ける。王城の中に入ると執事の案内に変わり、大き目の部屋に通された。【空間把握】で調べると、中に王太子とライブルが居るんだが、もう2人居るな。
顔は見た事があるんだが、俺が初めて狂信者を認識した時の、あの謁見の間でしか見た事がない。
執事がノックすると、中から王太子の「入れ」という声がした。その後、執事がノブを回して中に入る。
「失礼いたします。お客様をお連れしました」
「うむ、ご苦労だった。下がってよい」
「失礼いたします」
執事は部屋から出て行った。恐らくは飲み物でも持ってくるんだろうが、最初の頃はこういうの無かったな。
俺からすれば要らないんだが、体面として必要なんだろう。俺達は空いている場所にどんどん座っていく。ジャン達は椅子の方に腰掛けているが、ソファーが足りないからしょうがない。
「昨日までの依頼で、騎士達の多くが満足していると聞いている。魔物の素材を使う事に抵抗のある者は作ってはいない様だが、概ねこちらの予想通りだった。依頼を請けてくれて感謝する」
「俺達は傭兵だからな、仕事を請けた以上はキッチリやるさ。それは良いんだが、今日は報酬を貰って終わりじゃないのか? どうも違う感じがするんだが……」
「申し訳ありません。こちらに居られるのは農務卿で、こちらが新しい内務卿ですな。前の内務卿は帝国と裏で繋がっておった為に処刑されております」
「うん、知ってる。ミレイアの実家の事と同時だったからな。それはともかく、農務卿と内務卿って妙な取り合わせだな? いったい何の話をする気なんだ?」
「それは私から話そう。と言っても、それぞれ別々の話なのだ。まずは農務卿だが、君の言う通り農具を良くした所では開墾が捗っている様だ。農具を良くするだけで畑を広げる事が出来そうでな、収穫が期待されている」
「我が国では風の季節に撒く麦と、土の季節に撒く麦があります。土の季節、つまり今季では風の季節に比べて広い農地から収穫出来そうなのです。貴方が提案してくれたとの事で、本当に感謝します。結果がなかなか出せず色々言われていましたので、御蔭で少し楽になりました」
「農務卿って代替わりして数年だった筈だろ? 農業なんて少なくとも10年以上の結果で見なきゃいけないのに、早々に文句を言ってる阿呆が居るのか? 幾らなんでも頭が悪過ぎるだろう」
「殆どの者は分かっている。一部の頭の悪いのが騒いでいただけなのだ。まあ……その筆頭が、前の内務卿だったのだが……」
「王太子への牽制とか、足の引っ張りあいとかか? 碌な事をしない阿呆だな。まあ、裏切り者なんてそんなものか……。じゃあ内務卿の方は?」
「私の方は君への報告だな。分かりやすく言うと、きょうし……ゴホンッ!! の者達が、神殿を内部から崩す事に成功した。孤児院の子供達も救う事が出来たので、現在は騎士団を派遣して保護している」
「成る程な。良かったと言えば良かったんだが、王軍に誘ったりしてそうだ。別に悪い事じゃないし、実力があれば近衛騎士団にも来るだろうしな。そのぐらいの強かさは必要だろう」
「そう言って貰えると助かりますな。正直に言えば、王軍は戦争で減っておりますし、優秀な者は喉から手が出るほど欲しいのが本音です。よくそんな愚痴を聞かされるのですよ」
「そういえば、神殿の奴等は神様から与えられた【浄化魔法】を書に纏めていた筈だけど、その本は見つかったのか?」
「それは……見つかったのだが、あまりにもお粗末な物でな。正直に言って、君が渡してくれた紙束の10分の一が書かれているかどうかだった。しかも魔法陣しか書かれていない」
「「「「「「「「………」」」」」」」」
「それは、また……。奴等が俺が書いた物を寄越せと言ってくる筈だ。そんなチャチな物しか無いんじゃあ、マトモな修行なんて出来る筈もない。コツどころか、何の魔法でどういう効果があるかすら書かれていないとはな。そのうえ、効果を確かめようにも使えないか……」
「まあ、君の言う通りの状況だった様だ。少しだけ君の書いた物を見せたが唖然としていたな。神殿の修行とは、魔法陣しか書かれていない書を渡すだけだったらしい。一部の者が書をより良い物にしようとしたらしいのだが、結局よく分からず断念したそうだ」
「それで、その書はどうするんだ? 多分だけど俺の書いた物は全て網羅してた筈だ。そうなると、古くから伝わっているという歴史的な価値しか無いぞ? 宝物庫か何かに保管して終わりが、誰にとっても1番良いんじゃないか?」
「文官の間でもそう言われているよ。他の古書と同じく、年に2度ほど日干しすれば良いだろうとね。それよりも、他の神殿への牽制に使える事の方が大きいかもしれない。今でも自分達の書だと言ってくる神殿があるのだが、王都の神殿でさえこの程度の書しかないぞ? と言ってやったら逃げ帰って行ってな! あれはスカっとした」
「まだ回収すればどうにかなると思っている阿呆が居るのか……これからの事を考えれば、頭を下げて庇護を求めた方が良いだろうに。まあ、それが分かるなら、1国の王太子に尊大な態度を取ったりはしないか」
「ですな。武官、文官ともに怒っております。あれが神殿の連中の本質かと怒っている者と、所詮は欲に塗れた俗物だと見下しておる者ぐらいです。どちらにしても、奴等の化けの皮は剥がれましたからな」
「王太子殿下の進めておられる浄化所を推進するのが、今は1番良いだろうと会議で決まったな。農作物も肉類も浄化所で浄化して貰えるようになれば、神殿の価値は更に落ちる事になるだろう。内務を預かる者としても、その方が都合が良い」
「誰であろうと、長きに渡って権力や権威を握ると腐敗するものです。私達も自分の事として考えておかないと、前の国と同じ様な結末になりかねません。あれも将軍の謀反が成功した原因は、国民の鬱屈した不満が長くあったからだと言われています」
「………」
「何だか雑談になってしまったが、これで終わりなら俺達はそろそろ帰りたいんだが……?」
「ああ、すまないな。また傭兵ギルドを通して依頼をするかもしれないが、前向きに考えてほしい。ライブル、すまぬが見送りを頼む」
「ハッ! 皆様、こちらへどうぞ」
そういえば、結局執事は来なかったな。別に来なきゃいけない訳じゃないが、飲み物1つ出さないのかと思……今ごろかよ!。
廊下に出たら、丁度目の前にワゴンを押している執事が居た。どうやら出来たての菓子を運んでいるらしい。あれの所為で時間が掛かったのかね?。
もしかしたら、貴族の話し合いは凄く時間が掛かるのかもしれない。それを元に運んできたのなら、俺達と合わないのはよく分かる。傭兵が優雅にお喋りする訳がない。用件は簡潔に終わらせるのが当然だ。ダラダラと雑談をするのは酒場でするもんだろう。
いやいや別に怒ってないから、そんなに頭を下げなくてもいいよ。……何でこの世の終わりみたいに顔を真っ青にしてるんだろう。あそこまで怯える程、王城って厳しいのか? そう言うと、ライブルからジト目で見られた。
前に王城内で【幻死】を使った時から、メイドや執事は俺に対して怯えているらしい。あの時、謁見の間に居なかった者でも余波を喰らった者は多く、その所為で怯えているそうだ。……まあ、あの時は怒ってて、意図的に制御を緩めたからなぁ。
仕方ないのかね?。
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0504終了時点
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銀貨221枚
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銅貨144枚
神鉄の太刀
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




