0497
どうせ暇なんだろ? そう思っていた時期が俺にもありました。……いきなり客が来過ぎなんだよ! 何で昼までに34人も来るんだ、お前等もっと前からゆっくり来い!。大銀貨34枚も儲かったんだけどさ。
何でこんなに急激に増えたんだろうな? 聞いてもオルニアも分からないらしい。騎士の中には鉄製の武器じゃないと信用出来ないと言う連中も居るらしく、そういう連中は来ない筈だが、それでもいきなり増えた理由はオルニアにも分からないらしい。
悩んでいると、鍛冶師兄妹は昼食を食べに店を出て行った。オルニアも昼食を食べてくるらしく、後を追うように店を出て行く。マートルと顔を見合わせた俺は昼食の用意をする事にした。
まず始めに殻付きの小麦を【破砕】と【粉砕】で全粒粉にする。それを塩と聖水で練ってナンモドキにしたら、【熟成】を使ってから寝かせる。
干し肉に聖水と魚醤を【合成】して戻したらフライパンで焼いていく。別のフライパンでナンモドキを焼き、十分に焼けたら引っ繰り返す。
両面綺麗に焼けたらナンモドキを皿に上げ、半分に【分離】する。凍った野菜を解凍し、焼けた肉と一緒に半分ずつのナンモドキで挟んだら完成だ。
ナンモドキのサンドイッチと言うところかな。そもそも全粒粉を使ってる時点でナンじゃないし、発酵もさせてないが気にしたら負けだ。所詮モドキだし。
聖水を水皿に入れて出してやると、お腹が減ってたのか猛烈な勢いで食べ始めたな。さて、自分の分も作るか。
ゆっくり料理をしながら出来上がりを待っていると、鍛冶師兄妹とオルニアが戻ってきた。鍛冶師兄妹はともかくオルニアはまさか店の中で料理をしていると思わなかったんだろう、ビックリしている。
ダンジョンの中で俺が料理をしていたのを思い出したのか直ぐに冷静になったが、そんなに驚く事か? 後、鍛冶師兄妹は昨日と同じく人の昼食をガン見するんじゃない。
昨日はまだしも、今日のは屋台でも買えるような料理だろうに。俺はその視線を気にもせず作り上げると、一気に齧り付いた。だから落胆するのは止めろ、鬱陶しい!。
マートルが横で尻尾を振りながら見てくる。これはアレだな……俺はアイテムバッグから干し肉を出してマートルに投げた。マートルは口でキャッチすると、早速美味しそうに噛んで味わっている。
こっちを見てくる奴等が鬱陶しいので干し肉を渡すと、齧った後に「美味しい!」を連呼して五月蝿かった。食事くらいゆっくり食わせろよ。
午後からも客は多く、夕方までに53人の客が来た。作る物自体は、剣、槍、斧、メイスのどれかなので、大した苦労は無い。稀に短剣を望む奴も居た。
メインは鉄製じゃないと落ち着かないが、止め用として武器強化の出来る短剣が欲しかったらしい。そういう客もチラホラと来ていた。
個人個人に色々な考えがあって良いとは思うが、矢鱈にこだわりを持つ奴って鬱陶し過ぎると思う。刃渡りはこれぐらい、鍔はこれぐらい、持ち手はこれぐらい、ここはもう少し右が大きく……鬱陶しいわ、ボケェ!! と何度か思ったよ、マジで。
正直に言って、そのこだわりは戦闘の役に立つのか? という疑問が、何度も何度も頭の中を駆け巡った。
鍛冶師兄妹は苦笑いしていたので後で聞いたら、ああいう客はそれなりに居るらしい。武器としても装飾としても役に立たないこだわりを押し付けてくる客は、一定数は必ず居て苦労するそうだ。
鍛冶師に最も嫌われる客の一人で、ああいう客を拒否する鍛冶師も居るらしい。特に伝説の鍛冶師”ガルドル”は、そういう客に嫌気が差して王都を出て行ったんだと話してくれた。
ガルドルさんが伝説の鍛冶師な時点で、何とも言えない。俺が微妙な顔をしているので問われたから、素直にガルドルさんの事を話した。
鍛冶師兄妹は驚きすぎと言うぐらい驚いていたが、オルニアは然して驚いてはいない。鍛冶師の一人と言ったら、それまでだからなぁ。
「そんな所に伝説の鍛冶師が居たんですか。若くして天才の名をほしいままにしたと言われる人物で、彼にかかればナマクラも名剣になるとまで言われた方ですよ」
「そうそう。武器から鎧や盾まで、何でも出来ると言われた天才鍛冶師が田舎の鍛冶屋をやってるなんて勿体なさ過ぎる! もう一度王都に来てくれればいいのに」
「そうだよね。当時伝説の鍛冶師に無理難題を吹っかけていた連中は、王様と王太子様に叩き潰されたんだし、もう厄介な連中だって居ないのにね」
「ガルドルさんの場合、ゆっくりと鍛冶作業をやっているのが性に合うんじゃないか? 初めて会った時には質の良い薪を炭にする為に求めてたんだけど、俺が純鉄のインゴットを作ったんで必要無くなったんだよな」
「「「インゴット?」」」
そういえばガルドルさんもインゴットを知らなかったな。俺は鍛冶師兄妹にインゴットの説明をすると、驚きすぎて言葉が出ない様だ。
殆ど同じ重さと大きさに作っておく事で使いやすくする。そういう発想が無いんだろう。仕方がない事ではあるが、もっと頑張ればいいのに。
「でも、そんな事どうやってやるんだ? 鉄鉱石を溶かしてるのは国の製鉄所だ。魔力炉はあそこにしかないし、俺達じゃ資金を持ち寄っても作れない。図面が無いし、どういう技術かも分からないしな」
「国の秘匿技術だもんね。仮に教えて貰っても、高すぎて作れないって言われてるし、使うのに大量の魔力が要るらしいから動かせない。できればインゴットっていうのは、製鉄所でしてほしいよね」
「そうだね。私達のような鍛冶師の所でやっても、あんまり意味は無さそうだもん。むしろ製鉄所でやって、私達に売る際に一個幾らって感じで売ってくれればいいのに。毎回重さを計るのって面倒臭い……」
「毎回重さを計って買ってるのか? そりゃ面倒臭いだろうな。それにしても、国には魔力炉があったんだな。まぁ魔力炉と言っても、魔力を使ってるだけの炉なんだろうけどさ。それでも、ある程度の技術は持っている様で何よりだ」
「魔力を使う炉? 何でわざわざそんな言い方をするんだよ。まるで他の魔力炉が在るみたいじゃないか」
「あるぞ。正しくは魔力を使う炉と、魔力金属用の炉だ。どちらも魔力炉と言われるが、中身も殆ど同じと言っていい。魔力金属用の炉は可能な限りオドの意志を減らす為の技術が組み込まれてる。というか、そうしないと綺麗な魔力金属を精錬出来ないからな」
「オドの意志って言うのがよく分からないが、質の良い魔力金属を得る為には必要なんだろうな。じゃあ魔力を使う炉っていうのは?」
「魔力を使う炉っていうのは、分かりやすく言うと巨大な魔道具だと思えばいい。魔石をぶち込んで燃料とし、それで普通の金属を溶かすんだ。魔力金属用の炉は魔石だけじゃ足りなくてな、人の魔力も注ぎ込まないと綺麗に精錬出来ないんだよ」
「「「へぇー……」」」
「そういえばガルドルさんの所には普通の炉しか無かったな? 魔銅をどうやって精錬したんだ? まさか普通の炉で強引にやったのか。触媒があればそれなりの品質にはなるが、良くやるなぁ……炉が痛んでなきゃいいけど」
「魔銅かぁ……魔力金属には憧れるけど、正直に言えば持って来てほしくないな。魔力金属と普通の金属じゃ、扱いがまるで異なるから感覚がズレるって聞くし。何より、俺は魔力金属を扱った事が無いんだよな」
「「私もなーい」」
今日はもう客は来そうにないな。そう思っていると入り口の扉が開き、皆が入ってきた。俺は立ち上がって帰ろうと思ったんだが、鍛冶師兄妹もオルニアも帰る用意は既に終わっていたようで、一緒に帰る事にした。
ダンジョン近くだからか、それなりに荒くれは多いし、<ゴールドフラッグ>の様な連中も居ない訳じゃないんだよな。
俺達と一緒に帰った方が妹達が安全だと思ったんだろう、バルナーから頼まれたが拒否する様な者は誰もいない。
ダンジョンと王都を繋ぐ道を皆で歩きながら、賑やかに話しをしている。俺はフヨウが首に巻きつき、3匹が周りに居るのでマシンガントークからは距離を置けていて助かった。
不老長寿組は比較的落ち着いているのだが、若い連中がなぁ……。
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0497終了時点
大白金貨3枚
白金貨9枚
大金貨36枚
金貨140枚
大銀貨349枚
銀貨226枚
大銅貨204枚
銅貨144枚
神鉄の太刀
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




