0493
「温める魔道具というのは難しいな。懐炉ぐらいしか思いつかないが、アレは懐炉が暖かいだけで全身が温かくなる訳じゃないし……。お風呂にでも入った方が温まるんじゃないか?」
「「「「「「お風呂?」」」」」」
この世界では風呂を見なかったんだが、【浄化魔法】の影響で風呂が無いんだろうか? 濡らした布で体を拭くぐらいなのかもしれない。
古い時代って大体そうなんだっけ。古代ローマが珍しいぐらいで、そもそも湯を沸かすって贅沢だしな。
天然の温泉ならまだしも、毎日お湯を沸かしてたら燃料代が……アレ? 魔道具使えば良くない? そう考えると何で風呂が無いんだろうな。
誰も入浴しないから、入浴するという発想が無いのか。そう考えれば分かる気もする。【清潔】で綺麗になる以上、風呂に入る必要は無いのか。
「温かいお湯に入るのですか……想像出来ないので、よく分かりません。ただ、一度試してみたいとは思います」
シュラの一言で試すのは夜になったんだが、ラーファンさんの許可を取らないと中庭に湯船は作れない。夕方に許可を取って作るか。
部屋を出て1階の玄関前でジャン達とリンデ達を待つ。合流したら食堂へと行き、大銅貨18枚を支払って朝食を注文したら席に座る。今日は朝から運ばれてくるのが早かった、その所為でやっぱり急かされてるように感じる。
朝食後、皆と一緒にダンジョン前まで歩いて行く。ダンジョン前の門番に登録証を見せて中に入ったら、皆と別れてカエデと一緒に傭兵ギルドの出張所へと移動。
ダンジョン付近は最寄りの傭兵ギルドの土地なので、どのダンジョン付近でも必ず出張所がある。今まで利用した事は無いが。
出張所前に人が居たので聞いてみると、近衛騎士団に貸し出された建物はダンジョンを囲う西側の壁の近くにあるみたいだ。剣のマークの看板があるので直ぐに分かると言われた。
どうも鍛冶場を備えた建物らしいが、似た建物は近くに集められているらしい。他にも槍の看板や鎧の看板も同じで、鍛冶場を備えた建物の様だ。
ダンジョンを囲う壁の西側に行きつつ探すと、意外にも簡単に見つかった。中に入ると既に鍛冶師兄妹は居て、掃除したりしながら準備をしていた。
俺は入り口付近の椅子とテーブルを借りて、そこで仕事をする事になった。椅子に座っていると、早速カエデが欠伸をしたのだが、暇なのは本っ当に良く分かる。
ウェルナとセルナも暇なのかカエデを撫でたりしていたので、俺はアイテムバッグからボールを取り出して遊ばせてやった。床をコロコロ転がるボールを相手の方へと転がして遊んでいる。
ボールをもう一つ追加すると、慌しくも楽しそうにボールを返し合っている。そんな2人と1匹を見ながら玄関を開け【清潔】と【追風】でゴミを外へ飛ばしていく。
ある程度で店の中は綺麗になったので、魔法の使用を止め椅子に戻ると鍛冶師兄妹が唖然としていた。どうやら生活に魔法を使う事に驚いたらしい。
俺達にとっては普通の事だと説明して、俺は椅子に座ってゆっくりと温めた聖水を飲む。そうしていると、修理を頼みに客が来たので遊びは終わりとなった。
暇なので無償でちょこちょこと修理を手伝っていると、オルニアが客を連れてやってきたようだ。随分遅かったので理由を聞くと、配置転換やらを含めて色々あったらしい。
どうもオルニアはこの仕事を機に、第二騎士団から第一騎士団へと異動する事が正式に決まった様で、その手続きで遅れたそうだ。……栄転か、良かったな。また1つ成り上がったか。
そのオルニアは1人の女性騎士を連れて来ていたんだが、どうにも歯切れが悪い。どんな武器を求めているのか聞いてもはぐらかす感じで、真面目に答えようとしていない。
腹が立ったのでオルニアに「何故こんな奴を連れて来た?」と言うと、慌てて離れて2人で話し始めた。コソコソ耳打ちで話しているつもりなんだろうが、【天耳】で全て聞こえている。
どうやらこの女性騎士、あまりお金を持っていないらしい。オルニアと同じく平民からの成り上がりみたいだが、実家にお金を送ったばかりなので苦しい様だ。オルニアが立て替える云々と話しているが、それは駄目だろう。
仕方がないので少し話しを聞くと、10層に居るレッドパンサーを何とか狩ってきたらしい。身体強化は出来るが1人だったので、行くのだけでも大変だったと言う。
何でチームを組まないんだと思ったら、平民だから組む相手が殆どいないそうだ。そもそも平民出身の騎士が多くないうえに、優秀な人員は取り合いになるので満遍なく配属されるらしい。……ただし、第五騎士団は除く。
万遍なくと言えば聞こえはいいが、その代わり交流が薄く味方が少ない。貴族同士の会話に付いて行く事などは無理だし、どうしても下に見られるのは諦めるしか無いだろう。そういう風に”教育”されるのも貴族だからな。
教育なんて半分洗脳と変わらないんだから、見下しや差別など当たり前だ。地球でも長い間当たり前の事だったし、俺が生きていた時でも無くなってなかった。
民族、出身地、仕事、収入、様々な事で差別や見下しは存在する。むしろ無い方がおかしい。当たり前の様に差別される事が少なくなっただけでも、人類は進歩したと思う。……まあ、地球の話は置いといて。
金が無いのを何とかしなければいけない訳だが、それを手っ取り早く可能にするには持って帰ってこれる獲物を増やす事だ。とはいえ、アイテムバッグは貸せないし、どうしたもんか……。悩んでいるとオルニアから相談された。
色々話してみたが、結局1番簡単なのはオルニアがついて行く事だ。記録は俺がとっておき、後で鍛冶師兄妹と照合するという形にする。
先にレッドパンサーの素材で武器を作ってやる事になったんだが、要望されたのはメイスだった。……近衛騎士団の中ではメイスが流行ってるのか? そう思ったのだが、どうやらこの女性騎士も刃を立てるのが下手な様だ。
騎士団では装備は割と自由みたいだが、盾を持つ者はそれなりに多い。特に小型~中型の盾を持つ騎士は多く、それ故に片手武器が好まれる。
この女性騎士は小型のラウンドシールド、つまり円形の盾を持っていた。弾くか流してからの一撃という戦い方か。レッドパンサーの骨を柄にして、牙をフランジに使ったメイスをさっさと作った。
骨も牙も限界まで圧縮しているので折れる時はポッキリ折れるが、普通の者ではそんな力は出せない事も伝えておく。圧縮してあるので重いが、そこは諦めてくれ。じゃあ、頑張ってなー。
オルニアと女性騎士を見送り、俺はまた椅子に腰掛けてゆっくりとする。その後も客は来るものの、修理依頼ばかりで俺の仕事は全く無かった。そろそろ昼か……。
どこかへ食べに行くのも面倒だし、アイテムバッグの中身を減らすかと思ったら野菜がもう無いんだった。凍らせた野菜も無いし、野菜だけは買ってこよう。外に出た俺は王都まで戻り、食料店で銀貨2枚分の野菜を買って帰る。
店に帰ってくると鍛冶師兄妹は居なかった、たぶん昼食でも食べに行ったんだろう。
俺は椅子に座ってボウルに小麦粉と聖水を入れ、そこに卵を割って中身を入れる。一旦野菜を全て取り出して凍らせたら、使う分以外はアイテムバッグに仕舞う。
野菜を【分離】で一口大にしたら、一緒に混ぜていく。かす肉と干し肉を取り出し、かす肉はそのままで干し肉は少し聖水を【合成】して柔らかくしたら、一口大にして入れる。
全て混ぜ終えたら、フライパンに入れて焼いていこう。【加熱】を使い中まで焼いていくのだが、フライパンを焼き網の上に乗せて次のタネを作っていく。別のフライパンも取り出しタネを入れたら焼いていき、最初のタネが十分に焼けたら引っ繰り返す。
両面が十分に焼けたら上に魚醤を塗って完成だ。ソースが無いが、魚醤のお好み焼きが出来た。お腹を空かせているカエデに先にあげよう。
餌皿に入れて8等分に切ってやり、カエデにあげると夢中で食べている。そういえばダリアもなんだが、猫舌じゃなく熱い物もバクバク食べるんだよなー……。もうムルーガじゃないから常識は通用しないな。
そもそも俺の常識がアテにならないんだけどね。……おっと俺の分も焼けたな、魚醤を塗って出来上がりっと。よーし、頂きます。
……ソースじゃないんで、コレじゃない感は多少はある。ただ、思っていたより遥かに美味い。かす肉と干し肉は入れすぎかと思ったが、どちらも旨味は強いんで良い味が出ていて凄く美味しい。
カエデが食べ終わって悲しそうな顔をしている。仕方ないなぁ、もう。
▽▽▽▽▽
0493終了時点
大白金貨3枚
白金貨9枚
大金貨36枚
金貨140枚
大銀貨257枚
銀貨226枚
大銅貨238枚
銅貨144枚
神鉄の太刀
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




