0470
「ここからは俺が話そう。夜になって俺は一人敵の野営地に走って行ったんだが、昼間の焼き殺しが堪えたんだろう、思っている以上に離れた場所で野営をしていた。おそらくは恐怖で逃げ惑った連中を集めながら退いていった所為だと思う」
「まあ、目の前で仲間が生きたまま焼き殺されれば、恐怖で逃げ惑うのも当たり前だと思います。だからと言って、プレートアーマーと大きな盾で守っている相手を崩す方法なんて、思いつきませんけど……」
「それは置いといて、敵の野営地に侵入した俺は、輜重隊の馬車を確認した後で中央の豪華なテントを調べた。中には太った貴族っぽいオッサンが寝てて、手紙が散乱していた。ああ、酒の入ったコップも床に倒れていたんで、相当荒れてたんだと思う。手紙を確認したら、「後詰の軍が来るから歓迎しろ」と書いてあったんだ」
「それは、また……。歓迎する前に負けたのがバレるでしょうから、荒れるのは当たり前ですね。特に貴族にとって負けは大恥ですから、場合によっては降爵もあり得るかもしれません」
「その後、俺は輜重隊の馬車から食糧を全て奪い、後詰の軍を見に行く事にした。どんな兵を連れて来ているか、見ておく必要があったんだよ。で、後詰の軍の野営地を見つけ侵入した訳だが、また中央に豪華なテントがあったんで中に入って調べたんだ」
「何かアッサリ入って行ってるね? いや、バレないんだろうけど、敵からしたら堪ったものじゃないだろうって思ってさ」
「まあ、言いたい事は分かるがな。調べていると、質の良いマナリアのロングソードと中型のアイテムバッグがあったんで強奪してきた。後は輜重の馬車から全ての食糧を奪って帰ってきたって訳だ。ただ、そのアイテムバッグの中にコーニャ氏族の戦士長とボルン氏族の戦士長の内通の手紙があった」
「「「「「「「裏切り……」」」」」」」
「まあ、そういう事だ。その手紙を使ってコーニャ氏族の戦士長とボルン氏族の戦士長を潰した俺達は、飢えて襲いかかってくる敵軍と戦う事になった。敵の太った貴族とカイゼル髭の貴族は、歩兵や弓兵を嗾けて自分達は逃げていたんだ。俺はそれを追いかけて、奪ったマナリアのロングソードで切り殺してやったよ。カイゼル髭のオッサンの家宝だったらしいけどな」
「「「「「「「………」」」」」」」
「そんな事してたんだね。僕達は草原の戦士達の戦争だから、手出しをせずに黙って見てたよ。何人も死んじゃったけど、それが彼等の戦いだから邪魔する訳にもいかないしね。僕達だって彼等の誇りを傷つけたくないし」
「そういえば、俺のアイテムバッグの中には鉄とかいっぱい入ってるんだよなー。後でガルドルさんとかウィンさんの所に売りに行ってこないといけないんだが、特に鉄が鬱陶しいんだよ。向こうで精錬してもかなりの量があるし、俺にとっては不必要な物だし」
「戦争に勝ったのは分かるんですけど、報酬は貰わなかったんですか? 敵の重装兵を倒したのは皆さんですよね?」
「草原では、戦争の報酬は敵の物をブン捕って山分けする事だよ。その取り分が活躍すると増えるんだ。金があったって物が無ければ買えないだろ? 草原の民だってお金を持っていない訳じゃないが、それよりも現物の方が重要な場所なんだ」
「成る程……草原の方は魔物の討伐と家畜を育てる事で生活をしていると、神殿で聞いた事があります。何でも各氏族と共に移動する生活をしながら神像に祈りを奉げるらしく、神殿が無いと聞きましたが本当ですか?」
「本当だな。神像は見なかったが、草原の民が信仰しているのは闘神と浄神だとは聞いた。ただ、どういう風に祈っているとか、作法がどうとかいうのは知らない。そもそも大僧正とは数回しか会ってないし、会っても短時間だったしな。そもそも俺は神殿の者じゃないんだ、興味も無いから聞く事も無いよ」
「私達の方はそれで終わりだが、そっちはどうだったのだ? 10日ほど居なかったのだから、多少は何かがあったのではないか?」
「特に何もありませんよ? 強いて言えば5日前から必死に村の拡張工事をしていたくらいです。人が増えたので、更に村を広げて家と田畑を増やすそうですね。大森林とは逆側に広げていくので魔物の問題は殆どありませんでしたが、代わりに埋めたり広げたりが大変で……」
「埋めるのが特に大変でな。地面として使える様に固めねばならないのだが、固めるとその分多くの土が必要になるので、それも運んでと大変だったのだ。村の周りで取っても良さそうな所から土を取ってきての繰り返しでな、宿の荷車を借りる事が出来なかったら、もっと苦労していた筈だ」
「私も【土魔法】で手伝いましたが、本当に大変でした。アルドさんが生活で魔法を使えと仰る事が本当によく分かります。実際に魔法でどうにかしようとすると、思っている以上に上手くいかなくて、何度も何度も失敗してしまいました。普段の生活から魔法を使う練習をしないと、色々な使い方が出来ません」
そんな話をしながら食堂でゆっくりとした時間を過ごす。しなければならない事は明日でも構わないので、今日はゆっくりするつもりだが、傭兵ギルドにだけは行っておかないといけない。
仕事の完了を報告しておかないとギルドも困るだろう。女性陣は話に夢中になっている様なので、俺一人で行ってくるか。皆に一言伝えてから俺は宿を出た。
傭兵ギルドへの道を、ついてきた4匹と並んで歩いて行く。入り口のドアを開けて中に入ると、中の奴等が一斉にこっちを向いた。
いつも通りの反応だと思いつつミュウさんの所に行こうとすると、傭兵に成り立ての若いガキが俺の前を塞いだ。面倒なので横に避けると、そいつも同じ方向にきて邪魔をしてくる。
ニヤニヤしながら俺の方を見ているので、顎を殴って気絶させてその場に放置した。
「コレの手続きを頼む。それより、あのクズはいったいなに? あんなクソガキ居たっけ?」
「草原へ塩を運ぶ依頼ですね、少々お待ち下さい。……その少年は最近ここで傭兵登録したんですけど、何故か喧嘩を売って歩くんですよ。ギルドマスターも何度も注意してるんですが聞かなくて、そろそろ登録証を剥奪するべきじゃないかという話になってます」
「成る程なぁ……何を調子に乗ってるのか知らないが、力も経験も無しに何をやってんのかね? こんな所で時間を潰すぐらいなら狩りに行ってくればいいものを、大した実力も無いからイキがるのか、イキがってるだけだから大した実力が無いのか……」
「どのみち組んでくれる傭兵も居ないみたいですので、登録証の剥奪か死んでしまうかのどちらかで、賭けをしている人達まで居る有様です」
「余程の阿呆なんだな。……で、その阿呆は起きてるにも関わらず寝たフリか? 自分よりも弱くて舎弟に出来そうな奴でも探してるのか知らないが、お前の実力が低いままじゃ意味は無いぞ」
突如起き上がったと思ったら走ってギルドを出ていった。いったい何がしたかったのか分からないが、関わる必要の無い奴なので放置するか。こっちの命でも狙ってくるなら始末するが、それも出来ない程度の実力しか無さそうだしな。
そんな事を考えていると手続きが完了したので、報酬の金貨1枚を受け取って依頼の完了となった。ギルドの外に出て、今の内に売った方が早いかなと思いガルドルさんの家の方に歩いていると、突然呪いが飛んできた。
何で村の中で呪いが飛んでくるのか分からないがさっさと浄化すると、次々に呪いが飛んでくる。際限が無さそうなので浄化しながら呪いの元を探ると、さっきのクソガキだった。
宿の一室で呪いの品を抱いてブツブツ言ってやがる。もしかしたら、攻撃した奴に対して呪いを返す道具なのかもしれない。
タネが割れれば大した意味など無いが、何の為にこんな事をしてるんだ、あのクソガキは? そもそも村の中で呪いを飛ばすとか、何を考えてやがる。
▽▽▽▽▽
0470終了時点
大白金貨3枚
白金貨9枚
大金貨36枚
金貨136枚
大銀貨236枚
銀貨234枚
大銅貨332枚
銅貨144枚
神鉄の太刀
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




