0045
武具のアップデートだが、まずはソードグリズリーの素材で打刀を作る。イエローボアの牙の打刀は売り払おう。ソードグリズリーの圧縮した骨を芯にして爪を被覆する。ソードグリズリーの骨で鞘を作れば完成だ。
更に骨を芯にして斧を作成する。手斧の大きさではなく、伐採用の斧だ。ソードグリズリーの爪を被覆して斧の完成となる。手斧も売るか……。
ここからが本番だ。ソードグリズリーの皮を入念に浄化して、表面の毛などを【分離】する。次に皮の内側の脂肪や肉や不純物を【分離】して、再び入念に浄化する。その後、皮に【熟成】を掛ける。
最後に【乾燥】と【伸長】と【圧縮】をし、丁度良い堅さで止める。これでソードグリズリーの革モドキの完成だ。かなり強引に作ったが、触っても問題は見当たらない。ウィンドディアーの皮も革モドキにする。
両方とも真っ白な革になった。日本の古い革作りの方法でも、白い色になるらしい。川で皮を洗うのを、動画で見た事がある。
この革モドキで作るのは防具だ。と言っても、今使っている防具をソードグリズリーの革モドキで作るだけだが。革鎧を詳細に確認しながら構造を把握し、【錬金術】と【練成術】を使い作り上げる。
鋼を使った所は、ウィンドディアーの革を被覆して二重にした。肘防具と膝防具も同様に作り、ブーツも同じように作った。肘の部分と膝の部分には、ウィンドディアーの角を被覆して鋼の代わりとする。
ブーツも同様に鋼部分はウィンドディアーの角に代えたが、底の部分に圧縮したウィンドディアーの革を被覆して、現代の靴のように滑り止め加工を施した。【変形】を使えば直ぐなので簡単だ。
革が余っているので、剣帯をソードグリズリーの革で作り交換した。指貫グローブも作り、これで作る物は無くなったな。革がまだ余っているが、そろそろ村に帰ろう。
リヤカーを牽き、村に帰りながらもテンションは高い。新しい鎧は防御力は落ちているだろうが、代わりに軽くて動きやすい。グローブを着けているのでグリップが効く。それにブーツが滑り難い。
良い物を装備しているんだから、テンションが上がるのは当然だろう。そんな良い気分のまま、村に帰ってきた。
まずは解体所に行き肉を売る。ベグさんが来て査定してくれたのだが……。
「肉だけ、と聞いていましたが……。本当に肉だけとは」
「すみません。残りは防具に使う事になりそうで……」
「いえいえ。優先権は当然ですが傭兵にあります。それに、身を守る防具に使うと言われれば、反論する解体士は居ませんよ」
「すみません、助かります」
「いえ。肉だけですから全部で大銀貨10枚ですね」
「その金額でお願いします」
受付で登録証を返して貰い、売却金と木札を受け取る。そのまま武具屋に行き、不要な武具を売ろう。
「いらっしゃーい。今日はどうしたんだい?」
「今日は武具を売りたいんですが、いいですか?」
「構わないよ。ウチは買い取りもやってるからね」
「まずは、この防具を」
「うん? これウチで買ったヤツ? 何か違うような……」
「その防具はここで買った物ですよ。買った後に鋼を取り付けましたけど」
「だよね! 何か違うと思ったんだよ! ……鎧は大銀貨2枚、肘と膝の防具は銀貨2枚ずつ、ブーツは銀貨4枚ってトコだね」
「それでお願いします」
「まいど。……で、他には?」
「後は、この打刀と手斧と剣帯です」
「剣帯は銅貨2枚なんだけど……後の2つは困るね。値が付け難い」
「駄目ですか?」
「買い取れないんじゃなくて、ここまで質が良いとね……。装飾なんかはこっちでするけど、それを差し引いても……」
「………」
「こっちの打刀? っていうのは金貨1枚で、こっちの手斧は大銀貨5枚かな?」
「そこまでですか……。その値段でお願いします」
「これ君が作ったんだろ? これを作成する魔力と技術を考えたら、安いと言われても仕方ないんだけどね……」
そんな事言われてもな。俺にとっては難しくないんだよ。言っても仕方ないけど。
売却金の金貨1枚、大銀貨7枚、銀貨8枚、銅貨2枚を受け取る。銅貨が凄く浮いてるな。
宿に戻って裏庭にリヤカーを置かせて貰ったらギルドへ行く。中に入ってミュウさんに手続きを頼むと、ヴェルさんがやってきた。
「あれ? ダナさんとシュラさんは? 一体どうしたんですか?」
「ダナとシュラなら、宿で寝てるんじゃないですかね?」
「………。何かあったのですか?」
「そんなに睨まないで貰えます? 昨夜頑張った結果、足腰が立たないだけですよ」
「……はぁ、そういう事ですか。ダナさんが幸せそうで何よりです」
周囲の連中は、ヴェルさんと同様に不審な顔を向けてきていた。だが話を聞いた今は、顔を赤くしていたり、目を逸らしたりしている。だがヒソヒソ話すのは止めて頂きたい。
「ゴホンッ! 依頼したい事があるので、ダナさんとシュラさんが復帰したらギルドまで来て下さい」
「了解です」
登録証を返して貰いギルドを後にする。宿に戻るとカウンター席に2人が居て、昼間から酒を飲んでいた。今日は休みだからいいが、昼からか。
昼食を注文して大銅貨1枚を支払い部屋に戻る。装備を外して全て浄化した後、十手だけ持って食堂へ行く。
「お帰り! アルド。今日はもう終わりかい?」
「アルド! お帰りなさい。鎧が違っていましたね」
「ただいま、2人とも。今日はもう終わりで、防具は作ったんだよ」
「防具? 鎧だけではないんですね」
「そんな素材あったかな。もしかして今日の獲物かい?」
「今日の獲物のウィンドディアー2頭と、ソードグリズリー2頭だよ」
「昼前でそれかい……。危険なトコ行ったろ?」
「昨日と同じルートだよ」
「あのルートは……数が多いルートですよね?」
「だから4頭で帰って来たんだよ」
「荷車にそれ以上載らないからだろ?」
「そうとも言う」
「そうとしか言いません」
「まぁ、言ってもしょうがないよ。アタシ達はダウンしてたからね」
「むー? 仕方ないですね……」
「そういえば、ギルドでヴェルさんが依頼したいってさ」
「ふーん? お昼食べ終わったら行くかねぇ」
俺は昼食が来たので食事をする。昼食中に女将さんから、昨日みたいに御裾分けがないのか聞かれたので、売った後だと答えておいた。
昼食後、ゆっくりしてからギルドに向かう。ダナもシュラも問題は無いようで元気そうだ。足取りも軽くギルドに到着し、ミュウさんにヴェルさんを呼びに行かせた。
2階の執務室に呼ばれたのでノックをして入室すると、ヴェルさん以外にもう1人居た。筋骨隆々で頭に牛の角があり、身長が2メートル近くあるデカイ人だ。
間違いなく牛人族だろう。ちなみにこの世界では、ミノタウロスはダンジョンモンスターだ。間違えるとブチギレられるので注意が要る。
馬人族も同じで、ケンタウロスはダンジョンモンスターだ。ダンジョンモンスターはダンジョンにしか居ないので、普通は間違えない。つまり彼等にとっては侮辱となる。
牛人族とミノタウロスは人の顔と牛の顔という違いがあり、馬人族とケンタウロスは2本足と4本足の違いだ。
そんな牛人族が、なんでこんな所に居るのやら。妙な事に巻き込まれるのは嫌だぞ?。
「ダナさんにシュラさん。来て頂けて良かったです」
「来たけれどもねぇ、何か厄介事かい?」
「面倒な予感がヒシヒシとしますね」
「最初から随分と酷いですな」
「何でアンタがここに居るんだい? 騎士団長様?」
「騎士団長?」
「あぁ、この男は王国の騎士団長さ」
「ガイアルム王国。近衛騎士団、騎士団長ライブル」
「近衛かぁ。それって騎士の最高峰では?」
「当然そうさ。王を守る最側近の1人だよ」
「なんでそんな人が……。言葉は悪いけど、こんな田舎に?」
「そこが嫌な予感がする所です」
「私は休暇で来ただけなのですが?」
「……で、本当は?」
「……ふぅ、やれやれ。簡単に申せば、魔銅の鉱床の事です」
「王家がしゃしゃり出て来たと?」
「酷い言い方ですな。まぁ、事実ですが」
「面倒な予感が大当たりですね」
ヤベー、話に加われない。このままボーッとしとくか?。そうしよう。
▽▽▽▽▽
0045終了時点
金貨18枚
大銀貨53枚
銀貨23枚
大銅貨35枚
銅貨5枚
風鹿の角槍
風鹿の角の太刀
赤豹の爪の小太刀
剣熊の爪の打刀
赤豹の爪の小烏丸
強打猪の牙のファルクス
剣熊の爪の斧
風鹿の角の十手
剣熊と風鹿の革鎧
剣熊の革の剣帯
剣熊の革の指貫グローブ
剣熊と風鹿の肘防具
剣熊と風鹿の膝防具
剣熊と風鹿のブーツ