0458
俺達は一路西へと走っている。ダラダラと走っている気しかしないが、それでも草原の民にとっては速いんだろう。
息を乱しながらも、必死に馬にしがみついている様な者も居るみたいだ。俺達よりも後ろに下がりそうなんで、声を掛けて頑張らせる。
俺達が息も乱さず走っているのでギョっとした顔をしたが、それでも声は聞こえているんだろう、必死に頑張っている。最後尾に6人いるが、その者達と一緒に走っていると、目の前で休憩の為に止まっている戦士達が居た。
「申し訳ありません。遅れた者達に激を飛ばして頂いていた様で……。それにしても、皆様は走っていたにも関わらず息一つ乱されないとは」
「俺達にとったら、いつもより遅いくらいなんで息を乱す様な事は無いな。それよりも馬達の体力は大丈夫なのか? 乗り手が大丈夫でも、馬達を酷使する訳にはいかないだろう?」
「それは当然です。戦士として、馬の体調にも気付けぬ者は恥でしかありません。草原の戦士としては失格。修行からやり直させねばなりません。この休憩の後に昼まで走る事になります。昼食後、ある程度走れば到着するでしょう」
「了解だ」
俺達は少し離れた所に車座になって座り、聖水を飲みながら休憩する。特に疲れてもいないが、気分転換には丁度良い。草原と言ったところで様々な場所があり。林がまばらにある所もあれば、森が広がっている所もある。
当たり前だが、水があり、土に栄養があれば草木は生える。【空間把握】で調べると、金属の鉱脈が地下に眠っている場所もあった。
草原の民にとっては草原が大事なので、俺は何も言わないし、聞かれても答える気は無い。仮に鉄が欲しいにしても、自分達で探せばいいし。
休憩が終了したので再び走る。さっきの休憩時からは嘲る様な視線は一切無かった。というか、ちょっと怖がられていた気がする。
馬より速く、馬より体力があるって時点で、よくよく考えればバケモノか。とはいえ、これが俺達なんで何とも言えないんだがな……。
西へ西へと走って行き、そろそろ昼かという頃に戦士達の居る場所に到着した。どうやら予想よりも後退しているらしい。
ウォルガの族長が、直ぐに大きな声で挨拶をしてから近付いていく。……大騒ぎをしているみたいだが、何かあったのか?。
「すみません! こちらに来て下さい! 父上が皆様に一言でも御挨拶がしたいと……お願いします!」
慌てたウォルガの族長が来たので、とりあえずついて行く。通されたフルゲの中では、腹に大きな矢が刺さった人物が死に掛けの表情で横たわっていた。
周りの連中が泣いているが、今助ければ何の問題も無いんだがなー。……この空気の中で説明すんの? 面倒臭いな、勝手にするか。
俺は皆に【念話】を使って事情を説明し、横たわっている先代族長の前に行く。挨拶しようとする先代を制止し、突然矢を掴んで抜いた。
【念動】と【空間把握】で出血を抑え、【浄化】の権能で体の中を綺麗にし、【生命活性】と【黄泉帰り】で強引に傷を治してしまう。しっかし体力のある人で良かったよ。無ければ助けられなかったぞ。
「いやぁ、かたじけない。まさか腹に矢を受けて、あっさりと治して頂けるとは! 流石は不老長寿の方ですな! おっと、申し遅れました。私はウォルガ氏族の先代氏族長、ハング・ウォルガと申します」
俺達も改めて自己紹介をする。周りの連中はお通夜状態だったのが一変し、戸惑うか呆然としている。ちなみに一連の治療で掛かった時間は5分ぐらいだ。
途中から元気になっていく先代を見て、周りの連中は唖然としていたからな。邪魔されなくて良かったが、ウォルガの族長はいつまで呆けているつもりだ? あっ、先代に殴られた。
「申し訳ありませんな。どうやら息子は私が死ぬと思っておったのでしょう、未だどうしてよいか分からぬ様子。ウォルガ氏族長として、何という情けない姿を晒すのか……」
「父上! 家族が死の間際に居るというのに、冷静な者など居るわ……!!」
ゴスッ! といい音がしたなぁ……。つか、何回殴られてるんだ? ウォルガの族長は。
「氏族長の位にあれば、氏族の為には家族を見捨てる事も必要だと、何度教えれば分かるのだ!! 氏族長が成すべき事は、氏族の繁栄ぞ!! 努々忘れるなと言っておるだろうが! 魂に刻め!!」
草原の民って熱血系なのかね? モンゴルをイメージしてたけど、この世界ではちょっと違うのかもしれない。とにかく、先代さんを宥めて話し合いを始める必要がある。俺がそれを言うと、直ぐに主だった者達が集められ、フルゲの中に集結した。
「まずは敵の事だが、鉄の全身鎧を着ている者どもが400ほど。我等のような大弓を持っているのが500程度おる。鉄の鎧を着ておる者は、鉄を張った大きな盾も持っておって簡単には倒す事が出来ん。近付いて威力を上げようとすれば、敵の大弓に狙われる」
「それでは打つ手が無いという事か!? 我々は全てあわせても800だぞ! 我等は元々ムルの国の兵よりも数は少ない。我等が戦えるのは馬があるからと、戦士が大弓を使えるから勝っているのだ! それが効かぬとなると……」
「完全に効かぬ訳ではない。ただ、効かせる為には鉄の盾をどうにかせねばならん。これが今までに分かっておる全てとなる。鉄の全身鎧だけならば、全力の弓の一撃で貫く事は可能だ。されど、盾が思っているよりも厄介であり、あれをどうにかせねば……」
その話し合いの最中にチラリとウォルガの族長がこっちを見てきた。「何か対策はないか」と聞きたいんだろうが、有効な対策は無いな。俺達なら好きに出来るんだが、草原の民でも出来る方法となると、途端に限られてくるからなぁ……。
投石か? それとも魔法か? 魔法はなー……紙束を渡したところだし、まだまだ時間が掛かるだろう。
「鉄の全身鎧……つまりプレートアーマーの弱点は暑さと重さと視界の悪さだ。まず、兜は出来得る限り頭を守る為に前が見づらくなっている。次に鉄の全身鎧なのだから当然のように重い。そして、鉄の全身鎧に閉じ込めるような作りになっている為に非常に汗を掻く。つま……」
「だからどうしたと言うのだ!! それを知って解決するとでも言うのか!?」
「だからこそ、長い時間戦う事は出来ない。プレートアーマーは重いので足が遅い。つまり、草原の民の強さの一つである、馬を使った速さは残っている。大弓が効き難くなっただけだ。大の男がガタガタ喚くな、情けない」
「………」
「仮に向こうに同じ様な馬が居たとしても、上に乗ってるのがプレートアーマーなら、確実に相手の足は遅い。こちらは機動的に動き続け、矢を射るのが1番良い。出来れば交代して戦うのが良いだろう。3部隊ほどに分かれて、交代で敵に矢を射続けるんだ。ただし、この方法は矢が大量に必要になる」
「我等にその様な矢の持ち合わせはありませぬ、安穏と過ごしてしまった我等の落ち度なのでしょう……。それでも勝つ為にはどうすれば良いのでしょう? 我等は戦士であり氏族を守らねばなりません、誇りよりも勝つ事を優先せねばならぬ以上どんな事でもやります。そのうえで勝つ方法を教えて下さい!」
ウォルガ氏族長が頭を下げて頼んできたし、それを見て先代さんがウンウン頷いてる。ここは若者が階段を一つ登った感じなんだろうが、俺達にとったらどうでもいいんだが? まぁ、そんな野暮な事は言わないけどさ。
それに元々ウォルガの氏族長は冷静で優秀だけどなぁ……。父親の事ぐらいじゃないか、取り乱したのは?。
「今すぐに勝てる方法は2種類ある。一つは相手を牽制しながら後退して、相手を草原に引き込む。その後、夜の間に俺達が食糧を全て食えなくするか、盗んでくる。敵は直ぐに祖国には戻れない。つまり早々に帰らないと飢え死にしてしまうので、即座に撤退するだろう」
何か周りから「おー」と言う声と同時に渋面が見えるな。まあ、普通の戦い方じゃないからな。
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0458終了時点
大白金貨3枚
白金貨9枚
大金貨36枚
金貨115枚
大銀貨216枚
銀貨217枚
大銅貨334枚
銅貨124枚
神鉄の太刀
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




