0454
ウォルガ氏族の族長は、直ぐにゲルことフルゲを建てる仕事に加わった。俺達は傍から見ているが、下手な奴が手を貸しても邪魔なだけだからな。こういう時は手を出さない方が良い。
それにしても族長と言う割には若いな。まだ20代前半だろうと思うが、草原の民の族長は全員若いのかもしれないし、迂闊な事は言えない。族長と戦士だろう者達がどんどんとフルゲを建てて行く様子に、子供達が大喜びしている。
そんな光景を見ながら、人数が少ない事が気に掛かった。ウォルガ氏族は人数が少ないんだろうか? それとも、多くの戦士は未だ監視をしている最中なんだろうか?。
ボーっと見ているとフルゲが建て終わり、若い僧侶がこっちに来てついてくる様に言うので大人しくついて行く。
真ん中に建てられたフルゲに入ると、先程の族長が1番奥に座り、右隣に大僧正が座っていた。左隣には長老のような年寄り連中が座っているだけなので、もしかしたら先代の族長は亡くなっているのかもしれない。迂闊な事を言わなくて良かった。
「不老長寿の方々には初めてお会いする。俺はウォルガ氏族の族長、セイグ・ウォルガだ。よろしくお願い致す」
向こうから先に挨拶してきたので、俺達も挨拶を返し自己紹介を済ませた。俺達を呼んだ理由は、おそらく会議への参加か参戦を望むんだろうと思っていたが、やっぱり当たっていた。
こういう悪い予感だけはズバズバ当たるのは止めて欲しい。とりあえず心の中で溜息を吐きながら皆を見回すと、皆も諦め顔だ。皆の顔を見て仕方がないと覚悟をし、受け入れる事にした。
早速情報が知らされるが、微妙な感じだ。何でもプレートアーマーを着た者達は300人ぐらいしか居なかったらしく、更に騎射で攻撃したらしいが何人かは倒せたらしい。つまり俺が考えた通り、敵のプレートアーマーの質は悪い。
弓矢で貫ける程度のプレートアーマーなら、問題無く戦える筈なのだが苦戦している。理由は、相手も大型の弓を持ち出して来ているからだそうだ。
草原の民の戦士が使う弓は、和弓と同じぐらいの大きさのロングボウだ。斜め上に打ち出すので、この大きさでも問題は無いらしい。何より身体強化モドキがあるしな。
ところが相手もロングボウを真似て作ってきたらしく、特に馬が狙われているみたいだ。草原の民の強さの元は高機動力と遠距離攻撃だが、その一つである高機動力を潰しにきたらしい。
定石と言えば定石なんだが、クロスボウで無いだけ何とかなる範囲内かね? 俺達が相手の弓兵を潰せばどうにでもなるだろう。
それと、【浄化魔法】以外の【属性魔法】の紙束も渡しておく。草原なので使い難いかもしれないが、【火魔法】が使えると弓兵は潰しやすい事を教える。【火弾】などを当てれば、弦を焼き切る事が出来るからだ。
当然相手も同じ事をしてくるが、馬の機動力で回避すれば良い。そう言うと難しい顔が晴れていった。
夕方なので今日の話し合いはこれで終わりの様だが、先代の族長は今も監視の部隊と一緒に居るらしく別に死んではいないみたいだ。本当に迂闊な事を言わなくて良かったよ。
草原の各氏族では族長の子が戦士になると、族長は隠居して後見する決まりがあるそうだ。隠居してからが本番みたいな部分があるらしく、現在の族長も早く隠居したいらしい。その前に子供を作れ! と長老連中に怒られているが。
今日の話し合いも終わったのでフルゲを出てカマクラへと戻る。焼き場の前に座ったら干し肉とかす肉を取り出し、鍋に聖水を入れて煮込んでいく。ある程度煮たら硬パンを細かくして入れて完成だ。さっさと食べよう。
肉の旨味はたっぷりと出ているが、どうしてもちょっと味気ないと言うか野菜分が足りない。明日どうするかに関わらず、全力で身体強化をして野菜を買ってこよう。そう心に決めた。
俺1人だけなら、遅くとも1日で行って帰ってこれる筈だ。明日の話し合いの内容次第では買いに行けるだろう。
「まあ、言いたい事は分かるんだけどね。アタシもちょっと味気無いというか足りない感じはするから分かるんだけど、1日でベル-ザとここを往復するのかい? いや、出来るんだろうけどさぁ……」
「私達よりもアルド1人の方が速いのですから仕方がありませんよ。それに、草原には長く居る事になりそうですし、今のうちに補給を考えるのは悪くはありません。戦場に行ってから、あれが足りない、これが足りないと言うよりはマシです」
「それもこれも、明日の話し合い次第ね。話し合いがどうなってもアルドは買出しに行きそうだけど、そこは諦めるしかないわ」
「私は大丈夫だと思うけどね。皆は忘れてるかもしれないけど、各氏族の戦士が集まるまでは待たなきゃいけないんだ。戦士の集結には早くても1日か2日は掛かる筈さ。その間に野菜を買いに行くなら問題は無いと思うよ」
「確かにそうだな。問題があるとしたら、アルドの居ない昼食をどうするかだ。最悪お金を払えば、一食分くらいは融通してくれそうだが……。逃げている氏族の食糧だから、少々心苦しいが背に腹は変えられない」
「ダナが居るからタダで持って行ってって言われそうだから、お金ぐらいはちゃんと払いたいところだね」
まあ、とにかく明日だ明日。【浄化魔法】を記した紙束と【属性魔法】を記した紙束は返して貰わないといけないし、そういう意味でもウォルガ氏族の所に居る必要がある。
夕食後、カマクラ内に入って【光球】を使い、空気穴を作ったら閉じてしまう。中でゆっくりしていると3匹が甘えてきたのでブラッシングをしてやる事にした。
直ぐに2つのブラシはディルとフォルに奪われて、ダリアとカエデはブラッシングを受けている。俺はマートルのブラッシングをしながら【浄化】の権能で浄化していく。ダリアやカエデにも使っている所為か、3匹はあっさりと舟を漕いでしまった。
こっくりこっくりと頭が……あー、残念。3匹ともほぼ同時のタイミングで寝てしまった。いつも通り【念動】で端に寄せたら中央に連れて行かれる。
カマクラに入って直ぐに防音の魔道具は設置してあるので、声や音が漏れる事は無い。【房中術】と【極幸】でキメてしまい、今日も早くに寝る事にした。
皆を浄化した後に【空間把握】で確認するが、近くに人も居なければ異常も無い。それじゃあ、おやすみなさい。
<異世界188日目>
おはようございます。今日は何としても野菜を買いに戻りたいと思います。実際、野菜が無いとここまで味気ないとは思わなかった。栄養的にも野菜が欲しいんで、買いに戻るのは当然とも言える。
ビタミン不足での病気が怖いんだよな。脚気や壊血病とかの病気になる可能性はゼロじゃないし、飽食の時代に生きていた身としては、いつビタミン不足が肉体のダメージとして出てくるか分からないのも怖い。
経験した事があれば、そろそろマズいとか分かるんだが、経験した事なんて無いので分からない。気付いたら手遅れでした、というのは勘弁してほしいんだ。
何気に野菜不足って深刻な病気になったりするんで、甘く考える訳にはいかない。
「おはよう。ダリア、カエデ、マートル、フヨウ」
「ニャア」 「ガゥ」 「ウォフ」 「………」
4匹が起きたのでカマクラを開けて外に出る。草原の民の朝は早いのか、起きている人が数人居て料理の下ごしらえをしている。
少なくとも百人単位の料理を作らなきゃいけないので大変だ。とはいえ、1人1人が担当する分はそこまで多くは無いみたいだが。
氏族全体で料理をしたり洗濯をしたりしているそうなので、そういう生活というか生き方なんだろう。俺も鍋を取り出してスープを作る。
今日の朝は馬乳とかす肉のスープだ。残っている馬乳を全て2つの鍋に入れ、かす肉を入れたらコトコト煮込んでいく。
【加熱】を使って煮込んでいるので、近くを通る女性がギョっとしてから通り過ぎていく。ある程度煮込んだら味見をするが、ちょっと馬乳が強いかな? というぐらいだったので、少し聖水を入れて薄めて出来上がりだ。
少々薄まったが、置いておけば味は落ち着くだろう。どうせ皆が起きてきてから、もう一度暖めるんだし。そう思っていたら料理の匂いで起きてきた様だ。
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0454終了時点
大白金貨3枚
白金貨9枚
大金貨36枚
金貨116枚
大銀貨218枚
銀貨224枚
大銅貨335枚
銅貨124枚
神鉄の太刀
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




