0043
食堂へ行き3人分の朝食を注文し、大銅貨3枚を支払う。まだ恨みがましい顔をしているので、イチャイチャしていると女将さんが来た。
「おはよう、3人とも。今日は朝からかい?」
「おはよう、女将さん」
「おはよう、トーカ。昨夜お酒飲んで寝ちゃってね。夜が無かったのさ」
「トーカ、おはよう。私達が寝てしまったのが悪いのですが、朝から火を点けられて放置されたんです」
「あー……、それはご愁傷様。でも、お客さんも程々にね」
「分かってますよ。流石に怒らせるまではしません。そもそも2人が悪いんですよ。朝から何杯も酒を飲もうとするから……」
「朝からお酒を沢山飲むのは流石にダメじゃないかい?」
「そうなんだけどね、初めてのお酒で美味しかったんだよ!」
「そうです! 美味し過ぎるお酒が悪いんです!」
「いや、美味し過ぎるって……」
「アルド、取って来ていいかい?」
「んー? まぁ、いいか」
ダナは2階の部屋に酒を取りに行ったが、タイミング悪く朝食が来た。余り待つ事もなくダナはアイテムバッグを持って戻ってきて、小樽を取り出す。
「これだよ! トーカ。飲んでみな!」
「そんなにかい? ゴクッ……これ凄く美味しいね!」
「だろう! コレをお預けされたんだよ!」
「トーカ、貴方もこの辛さが分かるでしょう?」
「辛さも何も、朝っぱらから飲むなって言ってるだけだろ?」
「目の前に、こんな美味しい物を置いておけと!?」
「帰ってきてから、ゆっくり楽しめばいいだろうに。朝から酒って、ただの呑兵衛だろ?」
「「「うっ……」」」
あんたら全員かい! 朝食を食べながら疲れるってどうなんだ? 今日の朝の爽やかさは全部吹っ飛んだな。仕方ない、帰ってきて覚えていたらミードも作ろう。
朝食後、部屋へ戻って準備をする。今日は山へ行くのだが、宿を出て村の入り口に向かう際にも、酒を思い出しては我慢しているらしい。
道すがら頻繁に抱きついてきたり、キスしてきたりと大変だ。村の入り口で順番待ちをしていると、5人組改め8人組にジト目で見られていた。
「おはようございます。凄く仲が宜しいんですね?」
「おはよう。まぁ、悪いよりは良い方がいいよ」
「そうそう、チュッ! アンタ達もこれから狩りかい?」
「チュッ! 8人で頑張っているようですね」
「はい! 人数が多くなったので楽になりましたが、その分頑張って稼いでいます」
「それが新人の通る道さ。チュッ!」
「そうですね、チュッ! 毎年の事です。」
「「「「「「「「………」」」」」」」」
うん。言いたい事は分かる。でもね、酒の欲求を我慢するのは大変らしいんだ。だから生暖かくスルーしてやってほしい。俺も色々大変なんだ、正直結構厳しいんだよ。
村から出て分かれ道の辺りまで来ると、やっと2人は落ち着いた。西のキャンプ地まで行き休憩する。椅子とテーブルが残ったままだ。
「はぁ~。大分収まってきたねぇ」
「えぇ……。朝から大変でした」
「酒を我慢するって、そんなに大変なんだな」
「……あのねぇ! 朝っぱらから、アタシのカラダに火を点けたのは何処の誰だいっ!!」
「そうですっ! カラダを持て余すのは、とても辛いんですよっ!!」
「そっちだったのか!? ゴメン!!」
俺は物凄い勘違いをしていたらしい。本当に申し訳ない気持ちで一杯だ。その後、謝り倒して許してもらった。……イチャイチャで出発が遅れたのは仕方がない。
山を登るのだが、今日は更に北から迂回して別のルートで登る。実は今回のルートの方が強い魔物に遭遇しやすい。その分危険なルートだが実入りは増える。
山道に入ると早速魔物が来た。
「レッドパンサーが3頭こっちに来る!」
「「了解!」」
「「「グルルル」」」
もうレッドパンサーは大した敵ではない。……と言いたいところなのだが、2人は結構苦戦している。理由は身体強化で、戦いに集中しきれていない。俺はいつでも助けに入れるようにしながら見守る。
苦戦したものの、2人はレッドパンサーを倒した。獲物を処理した後に1匹だけ解体し、全てアイテムバッグに入れてもらい先へと進む。
険しい山道を登っていると、また魔物が近づいてきた。今度は猪に似てる?。
「2人とも、猪に似た魔物が3頭こっちに来る」
「「「ブルルルルルッ!」」」
「コイツはスマッシュボーアだ!」
「あの大きな牙で横殴りにしてきますので、注意して下さい!」
「了解」
どうやらダッシュボーアよりも強い様だ。身体強化と武器強化を行い、一気に接近して頭に手斧を叩きつける。大した抵抗も無く、刃が全て頭に刺さってしまった。
慌てて手を離して後ろに飛ぶ。スマッシュボーアはそのまま横に倒れ、ピクリとも動かない。どうやら死んだらしい。上手くいった様だが、手斧はちょっと短いな。
今持っている武器は手に持つ槍と左腰に小太刀、右腰に手斧と剣帯に十手を差している。戦いには使い辛いので武器を作ろう。足りないよりは多い方がいい。
死体を処理して1匹だけ解体しておき、終わったので再び先へ進む。30分もしない内に魔物が接近してきた。
「今度はソードグリズリー3頭だ!」
「「了解」」
「「「ガアァァァァッ!!!」」」
ソードグリズリー1頭に【土弾】を当てて、俺に向かって来させる。槍を短く持って身体強化と武器強化を行い構えた。突っ込んできたのに合わせて長さを戻し、カウンターの突きを放つ。
槍の穂先は抵抗無くソードグリズリーの目に入り、そこから回転させて脳を破壊する。引き抜いたら、丁度ソードグリズリーは倒れて動かなくなった。短く持っただけで、あっさり勘違いしたな。
熊の処理を終わらせて近くで休憩する。もう昼なので、解体した物を使って昼食を作ろう。作るのは熊肉と野菜のスープと保存食のパンだ。
昼食を3人で食べながら午後の予定を相談する。どうも2人が言うには、雨が降ってくる可能性が高いらしい。なので、昼食を食べ終わったら下山する事が決まった。
早めに食べ終えて、さっさと山を下りていく。途中から雨が降り出してきたので急いで村まで帰る。村に辿り着いた時には、本格的に降っていた。
解体所に急ぎ、【乾燥】してから査定を頼むといつもの2人が来たので、屋根のある解体所の中で査定をして貰う。
「レッドパンサーが2頭、スマッシュボーアが2頭、ソードグリズリーが3頭か」
「これはまた……。凄いですね」
「今日は半日でコレさ」
「今日は調子良く狩れましたね」
「全部で金貨14枚と大銀貨8枚だ」
「やっぱり、ソードグリズリーは高いね」
「狩り過ぎると値は下がるがな」
「当然ですね。とはいえ、私達が狩ったくらいでは変わらないでしょう?」
「うむ。ソードグリズリーは中々出回らんからな」
高い金額になったが、需要と供給のバランスか。狩り過ぎて売値が下がる事も考えておかないといけない訳だ。やっぱり品薄かレアが狙い目だな、後は食える奴。
そう考えると、今日の獲物は全部食える奴だし品薄の奴だ。だから、あんな高値なんだなぁ……。
登録証を返して貰い、売却金と木札を受け取る。その場で金貨4枚と大銀貨16枚にして受け取る。ギルドへ行って【乾燥】し、ミュウさんに手続きを頼んだ。
手続きが終わると3人で食料店に行き、アルダと蜂蜜とワインを大銀貨1枚ずつ購入した。ちなみに俺は払っていない。俺が飲む訳でも、試作する訳でもないからな。
そういえば、この世界ではリンゴは春に生るんだなと思い聞いてみると、風アルダと土アルダとあるらしい。春と秋ねぇ……?。
とりあえず宿の部屋に戻り、装備を外して【乾燥】と【浄化】を使う。まだ夕方前なので、朝と同じくワインから酵母を【抽出】してシードルを作る。
蜂蜜を小樽に詰めて、浄化した水を入れて薄める。後は【発酵】を使ってミードを作って【熟成】する。これで完成だ。
2人には少しずつ、ゆっくり味わって飲むように言っておいた。
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0043終了時点
金貨17枚
大銀貨36枚
銀貨15枚
大銅貨37枚
銅貨3枚
風鹿の角槍
風鹿の角の太刀
赤豹の爪の小太刀
黄蛇の牙の打刀
赤豹の牙の手斧
風鹿の角の十手
鋼とオーク革の鎧
革と鋼の肘防具
革と鋼の膝防具
革と鋼のブーツ