0421
「それにしても、ジャロムはまだ遣り合ってるみたいだけど、相手の女は……もしかして、エルダの<強欲>かい? ジャロムがアレに捕まってるのか、難儀なものだねぇ……」
「エルダの<強欲>って何です? 私は聞いた事がありませんが、商人の中では有名な者なんですか? 帝国の<金老>とか、聖王国の<散財>などは知っていますが……」
登録証や木札に売却金を受け取って戻ってくると、ダナとシュラは何やら商人の話をしている様だった。俺はそういうの全く分からないから聞いておこうか、知っといて損は無いだろう。
「ああ。さっきシュラが言った<金老>は、帝国の商人組合の会長さ。若い頃に莫大な金銭を稼ぎ出して商人組合を乗っ取った人物でね。かつては<金の剛腕>と呼ばれた人物だよ」
「聖王国の商人組合の長が<散財>です。大量の商品を散財するように購入するので、そう呼ばれていますね。買った物は持って帰って売って、毎回大儲けするらしいんですよ」
「あそこに居るのが、多分エルダの<強欲>だね。あの女はとにかく交渉の時にしつこいんだよ。出来得る限り値引きさせたり、それが駄目なら何かを付けさせたり。本当に嫌になる」
「随分失礼な言葉が聞こえてきたと思ったら、不老長寿のディアーナさんですか……。それにしても他人を”強欲”呼ばわりするとは、流石にそれは品性を疑われますよ?」
「品性どうこうより、自分の評価は他人が決めるものだがなぁ……。他人が”強欲”と評価した以上は、その人物は強欲なんだよ。他人に文句を言う前に、強欲と呼ばれる事を恥じたらどうだ?」
「………」
「ハッハッハッ、本当にお主の言う通りだ。他人に強欲と評価される事をしている方が問題であろうにな? 己を省みる事をせんと、いつか大失敗をやらかすぞ?」
「ふんっ! 不老長寿の方の”男”かしら? ディアーナ殿も随分趣味が悪かったのね、こんな男で喜んでるなんて? 不老長寿の方の力と功績を自分のものだと勘違いし……」
「「あ゛ぁっ?」」
「いやいや、怒り過ぎだろうよ。そもそも言われた俺が気にしてないんだがなぁ……。勘違いしている頭の悪いのは”強欲”の方だろ? 知っての通り、俺も不老長寿なんだしさ」
「それとこれとは違うよ。アタシ達を怒らせたんだからねぇ? 随分良い度胸をしているじゃないのさ、どうやら”強欲”は欲を掻きすぎて死ぬらしいね?」
「そのようですね。古来より、欲を掻きすぎて死ぬ者など幾らでも居るというのに、愚か者は自分がそうだとは考え無いようです。だからこそ愚か者なんでしょうが……」
「流石に殺すのは駄目だぞー、生きている事を後悔させるぐらいで留めるんだぞー。……まあ、アレで大丈夫だろう。そもそも俺達3人とも不老長寿だっていうのに、バカは本当にバカだ」
「それ以前に、まずは相手を確かめるのが先であろうよ。それもせんから、あんな目に遭うのだ。自業自得というところだな。それよりも久しぶりだ、帰ってきていた事は知っておる」
「ええ、お久しぶりです。昨日帰ってきたところですが、早速邪生が居たんで驚きましたよ。森の拠点近くに2体、川を遡った所に1頭居ました。直ぐに対処したんで問題ないですけど」
「どうも最近、邪生が増えているようなんです。森の拠点や魔銅の鉱床の事で、魔物の分布がまだ固まっていないみたいで……。傭兵の方々も頑張ってはいるのですが、なかなか難しい様ですね」
「ギルドの中で【浄化魔法】を教えておるらしい。その御蔭と言うべきか、邪生は増えておるが被害はそこまで増えておらん。【浄化魔法】が使えれば逃げる事も出来るからな」
「ところで気になってたんですが……アルドさんの首に居るのってセイントじゃありませんか? ああ、やっぱりそうだったんですね。いや、セイントを見たのは2回目なんですよ」
「また、随分珍しいスライムを連れておる……というか、よく溶かされておらんな? ……セイントと言うか、スライムが言う事を聞いておるのか。本当に訳が分からん……」
「全く! バカは考えもせずに口を開くからそうなるのさ! 少しは反省しな! 顔が腫れあがる程度で済ませてやったんだからね? これ以上くだらない事、言うんじゃないよ?」
「ひゃい……」
うん。ジャロムさんとベグさんがドン引きするぐらいにボッコボコだな。顔が真っ赤に腫れあがって、まともに喋れない程になってる。所々切れてるのは、多分シュラがやったんだろう。
「そもそも”強欲”だか何だか知りませんが、私やアルドも不老長寿だという事すら知らずに喧嘩を売るとか……正直に言って、”殺して下さい”と言っているのと変わりませんよ?」
「流石にそれはあり得んだろう……。とはいえ、ボコボコにされるのは仕方がないがな。特に吸血鬼族の【真祖】に喧嘩を売った以上は、その程度で済んで良かっただろうよ」
「………」
その後は挨拶程度の話をした後に、お土産の手鏡を2人に渡して解体所を後にした。先に村長の所に行き、お土産の手鏡を渡したら傭兵ギルドへと歩いて行く。7個をどう分けようか?。
そんな事を考えながらギルドの扉を開けると、中には5人組が居て熱心に何かを書いていた。ヴェルも居るが、まずはミュウさんの所で手続きをしてこよう。そう思って受付に行く。
人が居ない時間なので並ぶ事も無く、受付を終わらせた後でお土産の手鏡を渡す。その後、ヴェルと5人組の居るテーブルに行き、全員に手鏡を1つずつ渡した。これで無くなったな。
「ありがとうございます! でも、これ程綺麗な鏡が、いったい何処に売ってたんですか? ……えっ、作った!? 作れるんですか、こんな綺麗なのを? コレ凄い高値で売れますよ!?」
「そう言われてもなぁ……。そもそも、この辺りって石英が採れないだろ? 鏡を作るのに必要なのはガラスと銀だ。そのガラスの材料が石英なんだが、採れない以上は村では無理だぞ?」
何か周りの女性陣が物凄くガッカリしているが、材料が無ければ作れないに決まってるだろ。ガラスの水晶玉の残りはまだあるけど、正直に言うといちいち作るのが面倒臭いんだよなー。
そんな事を言おうものなら、物凄いプレッシャーに晒されるので言わないけど。5人組が書いているものが見えたんだが、あれって【浄化魔法】じゃないか。俺の書いたヤツ……。
あっ! そうだ! ヴェルに渡しておかないと! 俺はアイテムバッグから他の魔法の紙束を取り出して確認し、【火魔法】【水魔法】【風魔法】【土魔法】の紙束をヴェルに渡す。
「それが【属性魔法】の書かれた紙束だ。前回と同じく1枚も無くさない様に頼む。書き終わるまでに時間が掛かるだろうが、これ以上は無いから頑張ってくれ」
「はぁ……まあ、傭兵達の実力向上の為には頑張って書きますが……。先程見た感じでは、まだ紙束があったような気がするんですが、アレは……あ、はい。何でもありません」
「ダナ、睨まない。アレは【光魔法】と【錬金魔法】と【練成魔法】だ。錬金と練成はともかく、【光魔法】は悪用出来るものが多いんだよ。書いたものの表に出さない事にした」
「ああ、それは止めた方が良いですね。流石に悪用されても責任とれませんし、ならば最初から表に出さない方が無難です。【錬金魔法】と【練成魔法】は……」
「錬金と練成に関しては出しても良いんだが、あの2つは【属性魔法】よりも難易度が高いんだよ。何と言うか……一生の仕事にする気が無いなら、絶対に手を出さない方がいい」
「そんなに難しいんですね。サリーは子供の頃に錬金士を夢見て、結局諦めたとか聞いた事がありますが……」
「ルタは知らないのでしょうけど、何度やっても素材がボロボロになってしまうのよ。そんな素材使えないから意味が無いって言われてね。それで諦めたの」
素材の劣化と戦うのが、錬金士や練成士の仕事だろうからなぁ……。
▽▽▽▽▽
0421終了時点
大白金貨3枚
白金貨9枚
大金貨36枚
金貨108枚
大銀貨208枚
銀貨213枚
大銅貨674枚
銅貨91枚
神鉄の太刀
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




