0041
宿に着き、いつも通りに注文して大銅貨3枚を支払う。水を飲みながら休憩していると、女将さんがやって来た。
「お帰り、3人とも。どうしたんだい? 何だか雰囲気が悪いね?」
「ああ、トーカ。実はね……」
ギルドでクソガキAが俺を刺し殺そうとした事を女将さんに伝える。すると女将さんは顔を真っ青にして謝罪してきた。
「お客さん! 申し訳ない! 知らなかったとはいえ、そんな事をするヤツだったなんて!」
「謝罪はいいですよ。女将さんや旦那さんが謝るのは筋違いですしね」
「そうですね。謝るのはアレの家族であって、トーカや旦那さんではありませんよ」
「それに、サングの町で公開刑だろうさ。鞭打ちは確実だね!」
「鞭打ちかい? それって厳しいのかい?」
「村では公開刑は無いのですか? それともトーカは見ないのですか?」
「どっちもだねぇ。村で公開刑は少ないし、トーカは好きじゃないし」
「そうですか。鞭打ちは、途中で罪人が死ぬ事があるほど厳しいものですよ」
「死ぬほど厳しいのかい?」
「鞭を打たれると、1回で皮が裂けて肉までいく事もあるからね」
「そ、そんな罰なのかい!?」
「アルドを殺そうとしたんだ。当たり前の事さ!」
殺人未遂とはいえ、人殺しは駄目だ。俺も殺しそうになったので他人事じゃない。人殺しは駄目で、反撃で殺すのは良し。ちゃんと線引きしておかないと危険だ。まぁ、場合によるんだけど。
その後、旦那さんも来て謝罪された。しかし旦那さんの所為じゃない事を強く言っておいた。責任の所在はハッキリさせておかないと、気に病まれても困る。
食事が来たので今日は会話を多くしながら食べる。食後には、女将さんの表情も幾分マシになっていた。3人でゆっくりしながら、”気にしなくていいよ”とアピールをしておいたのが良かったんだろう。
部屋に戻ってから、2人が酒を飲む前に身体強化に関して伝えておく。通常の身体強化は主に耐久力の強化で、筋力の強化は多くない。代わりに火事場の馬鹿力の時でも肉体が傷付かない程だ。
本来なら筋繊維が切れたりするのだが、耐久力が強化されているので傷付かない。魔力と闘気を上手く使えるようになれば、この割合は変えられる。
筋力を強化し過ぎるのは危険だが、自分にとって丁度良い塩梅を見つければいい。そんな事を詳細に丁寧に教えておいた。
「身体強化って、思っていたより遥かに難しいんだね……」
「本当ですね。ここまで難しく、全く使い熟せていないとは」
「身体強化も他の技も奥が深いんだよ。1つ1つ焦らずやっていくしかない」
「そうだね。少しづつ上手くなっていかなきゃ」
「そうですね。その為にも夜の技を教えて下さい!」
どうやら覚えていた様だ。仕方なく【房中術】を教えると、直ぐに実践したくなったらしい。なので浄化していると、ダナに腕を引っ張られてベッドへ連れて行かれた。
……2人は頑張ったものの仲良く撃沈したので、全て浄化して俺も寝よう。今日も一日お疲れ様でした。
<異世界20日目>
おはようございます。昨日はアレでしたが、今日は良い日にして下さい。そんなお願いをしながら浄化していく。今日は2人が同時に起きた。
「「チュッ! おはよう、アルド」」
「おはよう、2人とも。今日は珍しく同時に起きたな」
「そうだね、偶々だけど珍しいね」
「そうですね、偶にはあるのでしょう」
「今日は山か森に行こうと思うんだが、2人はどう思う?」
「どちらでも構いませんよ」
「アタシもどっちでもいいよ」
「じゃあ、今日は森にしよう。2人は昨日言ってた通り、日常的に身体強化をしてもらう」
「「えっ!?」」
「いやいや、焦らず1つ1つやっていくんだろう?」
「「それは、そうだけど……」」
「だから今日は森なんだよ。今日から始める! いいね?」
「「はーい……」」
どうにも辛い修行は乗り気にならないらしい。2人とのイチャイチャをじっくり丁寧にしたからか、2人のテンションはかなり上がった。とにかくモチベーションは上げないと。
機嫌の良い2人と一緒に食堂へ行き、3人の朝食を注文して大銅貨3枚を支払う。朝食と共に女将さんが来た。
「昨日は、ゴメンね。どうやらあの子は朝一番にサングの町に連れて行かれたそうだよ」
「なら今日か明日に公開刑だね」
「そうでしょう。罪人ですし、庇う者も居ませんよ」
「申し訳ないけど、正直どうでもいい」
「じゃあ、この件はこれで終わり」
この件を話していても朝食がマズくなるだけだしな。食事は美味しく食べたい。朝から気分が悪いと、1日中テンションが上がらない事もあるし。
朝食後、部屋に戻り準備をするのだが、日帰りなので要らない物は置いていく。そしてリヤカーは持って行かない。
村を出て森の拠点へ、拠点に着いたら川沿いを遡って行く。ある程度進むと、俺が下り立った場所に来た。何か懐かしいな。
「ここだ。ここに下り立ったんだ」
「神様に下ろされたのはココかい」
「ここに……何も無いですね」
「人目に付いても駄目だろう? いきなり人が現れたらビックリするしな」
「ビックリと言うより、怪しいと思うだろうね」
「確かに……」
だろうね。俺もそう思う。そんな話をしながら、俺が下ろされた場所より更に西へ行く。すると、初めての魔物が現れた。
「ちょっと小さめのが森から来る!」
「「「「キキュッ!」」」」
投石リスだ。こいつは立つと80センチくらいある大きなリスで、石を投げつけてくる。結構な威力があり、頭に当たると運が悪ければ死ぬ。森のスナイパーみたいな奴だ。
と言っても、不意打ちを受けないこっちとしては大した敵じゃない。さっさと首を落として始末する。血抜きなどの処理を終わらせ、アイテムバッグに収納してもらう。
投石リスだが、食べられる肉ではあるらしいので昼食にでも食べよう。
更に進み遡って行く。すると、また未見の敵だ。
「ゴブリンぐらいの大きさの魔物が5匹来る!」
「「「「「!!!」」」」」
森から来たのは鉄蟷螂だった。こいつの鎌は、鉄ぐらいの強度があると言われている。鎌を振る速度も速く、森ではかなり危険な魔物だ。
おまけに雑食で、ゴブリンやコボルトやオークも食い荒らすという獰猛で危険な虫らしい。身体強化で一気に側面に行き足を斬る。胴体から足を切り離してやれば後はザコだ。
鉄蟷螂はその大きさ故に飛ぶ事は出来ず、足が無いと動けない。槍でも簡単に斬れるので、ドンドン斬っていく。全て動けなくしたら、遠くから石を投げて殺す。
ドゴンッ!! ズドン!! ドガン!! ドゴッ!! ズガン!!
石を投げて頭を潰すお仕事は直ぐに終了した。ただ、処理している最中に大きなハリガネムシみたいなのが出てきて、ダナとシュラが悲鳴を上げていた。
昔ハリガネムシを見た事があったので、俺は驚かなかっけどね。全て出てくるまで待って【浄炎】で燃やす。処理し終わった物はアイテムバッグに収納してもらう。
そろそろ昼の時間なので料理をするか……。リスを解体し各部位に分けて、肉に【熟成】を使い塩を振る。次に土を固めて竈モドキを作り、薪に火を点ける。
後はフライパンで焼いていくだけだ。焼けたら完成。残っていた保存食と野菜のサラダで昼食だ。保存食は美味しくない非常に硬いパンだった。
困ったので空気中の水分を【合成】していると、何とか食べられる柔らかさになってくれた。お昼に食べる分を全て柔らかくして、やっと食事が出来る。
「アルドの御蔭で、この硬パンが普通に食べられるよ」
「ありがとう、アルド。これの硬さは本当に嫌いです」
「好きな奴なんて居ないよ! 長持ちするから買うだけさ」
「安くないのに硬くて不味い。何とかなりませんか?」
「俺に言われてもね。技術革新は止めろと神様に言われてるし」
「駄目ですか……」
「あのリスの肉が美味しいんだから、我慢しなよ」
「そうですね……」
リスの肉は不味くはないっていうレベルなのか? まぁ……不味いよりは美味い方が良いから、気にするのは止めよう。
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0041終了時点
金貨13枚
大銀貨22枚
銀貨15枚
大銅貨5枚
銅貨3枚
風鹿の角槍
風鹿の角の太刀
赤豹の爪の小太刀
黄蛇の牙の打刀
赤豹の牙の手斧
風鹿の角の十手
鋼とオーク革の鎧
革と鋼の肘防具
革と鋼の膝防具
革と鋼のブーツ