0040
さて、困った。ここまでドン引きなのは想定外だ。生意気なクソガキなんだから、この程度は普通だと思うんだがなぁ。そう考えているとシュラがきた。
「泣いて謝っていたのですから、そこで止めるべきでしたね?」
「いやー。こういう奴は謝った事を忘れて、また同じ事をやるよ?」
「そいつら、そういう奴等かい?」
ダナが女の子3人に聞いているが、俺の言った通りの奴等だった様だ。しかも女の子3人に、クソガキ2人がくっ付いて来た形らしい。
それを知った周りは、クソガキ2人に白い目を向けている。女の子に寄生とか完全にゴミだな。周りの事が分かったのか、クソガキ2人は喚き始めた。
「そこに居る新人だって、女に寄生してるじゃないか!」
「そうだ! 俺達だけじゃねえ!」
「お前らバカか? 俺はランク4だぞ? 登録してまだ20日も経ってないがな」
「そんな事ありえないだろ! 金を使ったに違いない! この村のギルドは金に靡くんだ!」
あーあー……、言っちゃいけない事を……。哀れ、クソガキ2人は”とてもイイ笑顔”のベテラン達に連れて行かれた。アホはどこに居てもアホだな。
「金の前にボッコボコにされたのを、もう忘れたのかよ」
「ホントにねぇ……。これだから新人の相手は皆嫌うのさ」
「やり過ぎではなかったですね。すみません、アルド」
「いや、別にいいよ」
「いえ、いけません。お詫びのキスを。……チュッ!」
それ、キスしたいだけだよな!? キスされながらも冷静に考えてしまう。今日はシュラまで甘えん坊な日なのだろう、そうとしか思えない。
「シュラ! 何やってんだい!? ズルいじゃないか!」
「チュッ! 朝の仕返しです」
「チュッ! こんな所で仕返しかい!?」
パンッ!! パンッ!!。
「はい! 2人とも、一旦落ち着く!」
「あぁ、うん。そうだね」
「そうですね、落ち着きましょう」
思念を放出しながら手を叩き、2人を正気に戻す。前も2人にやったような? 2人ともおかしくなるって、何があったんだろう?。
「そっちの訓練はどうする?」
「こっちは正しい姿勢と武器の振り方をやってたんだよ」
「私は【浄化魔法】の使い方を教えていました」
「他に出来る事ある?」
「はいっ! はいっ! アタイは身体強化を教えてほしい!」
「私もお願いします」
「あっ、私も」
5人組の騎士、戦士、弓使いの3人に身体強化を教える事になった。とりあえず気の感じ方を教える。ここは結構センスが出る所なので、特に丁寧に教えていく。
上手く出来ないまま昼になった。午前の訓練は終わって昼食になるので、俺達は宿に戻る。昼食を注文して大銅貨3枚を支払いゆっくりしていると、大きな音が聞こえてきた。
ドゴッ!! ドガッ!!。
「ふざけるなよ! このクソガキどもっ!!」
「イッテェ! どうなってんだよ!!」
「クソッ! 伯父さんは味方じゃなかったのかよ!!」
「お前のようなクソガキの味方なんぞ誰がするかっ!! さっさと村を出て行け!! 弱い町でイキがってろ!!」
「クッソォーッ!!」
さっきのクソガキどもが入り口から出て行った。伯父さんって事は、あの人が女将さんの旦那さんか。クソガキと違って温和で優しそうな顔の人だ。額に角があって、筋骨隆々だけど。
そういえばクソガキAは人間の容姿だったな。しっかし、温和な人ってキレると怖いんだよなー。
「お客さん、申し訳ない。食事は直ぐに用意します」
「いや、急がなくてもいいさ。美味しいのを頼むよ」
「はい」
それから少し経って料理が来たので、ゆっくり食事をして宿を出る。再びギルドの訓練場へ行くと、クソガキ2人が居なくなっている事が分かった。
「放っときな。ああいうのは毎年いるんだよ」
「根性も実力も無い者達は、毎年消えていきますからね」
根性や実力が無いと言うより、謙虚さが足りないんだ。謙虚に学ぶなら先輩方が助けてくれるが、その手を自分で拒否しただけだ。そんな事を考えながら、身体強化を教えていく。
獣人のララとファレンは種族的に得意なのか、闘気の身体強化の感覚を掴んでいった。魔人族のルタとサリー、それとエルフのエルは魔力の身体強化の方が得意そうだ。
やはり種族的な部分はあるのだろう。だが感覚の先である、身体強化をしながら動くという所までは到達できなかった。
大体の傭兵も同じらしいが、決めた動作+身体強化という使い方だ。つまり決めた動作中しか身体強化を使えない。
身体強化を使うだけで集中力を使う為、動作までは集中出来ない。よって、身体強化を使いながら戦うというのは非常に難しい。
俺の場合は闘神のジジイに丁寧にシゴかれたので、日常レベルで使える。本来の身体強化とはそういうもので、下界の身体強化は身体強化モドキと言えるだろう。
そんな事を、一部ボカシながら教えていく。すると周りにベテラン連中も居て、身体強化の訓練をしていた。何やってんだ、新人の訓練しろよ。
「日常レベルですか……大変ですね」
「アルドは雨の日の特訓でも普通に使えてたね」
「私達も訓練しなければ……」
「アタシは夜にいっぱいヤってるよ? アレもそういう技だ。アルドに教えて貰ったからね」
「なっ!? ズルいですよ! 私にも教えて下さい!」
「今日の夜にね」
「やった!」
急にジト目が増えたぞ!? いや、まぁ、気持ちは分かるけど。俺も同じ立場なら、きっとそういう目をしてただろうし。
「私達のチームに入りませんか?」
「いいんですか? 私達は……」
「気にしなくていいって、あいつ等が来たらアタイがぶっ飛ばしてやるよ」
どうも女の子3人は、5人組と一緒にやっていくらしい。良かった、良かった。クソガキどもはどうでもいいが、この子達はただの被害者だからな。
3人も交えて熱心に指導をしていると夕方になっていた。訓練は終了なのでギルドの受付に行く。
ミュウさんに手続きをして貰っていると、背後に誰かが来た。不意打ちならもっと上手くやれよ。円を描くように半回転し、突き出された短剣を持つ手を捻り上げる。
「ぐあっ! クソッ、離せ!」
「おいおい。殺しに来た奴を離すバカがドコに居る?」
「クソッ! お前は黙って死ねばいいんだ!」
「何だコイツ? 自分の思い通りにいかないからって、俺を殺しにきたのか? 頭がイカレてる奴だな」
「ウルサイ! 黙ってさっさと死ね!」
「お前さー、既に犯罪者だぞ? 分かってないのか? 2人とも、俺を殺そうとしたコイツはどうなる?」
「サングの町の奴だから、サングの町で公開刑だね。50発ぐらいの鞭打ちかい? 死なない事を祈るんだね」
「逆恨みですからね。妥当な所でしょう」
こういう時代だと公開刑は娯楽だからなぁ。ようやくクソガキは理解出来たのか、顔が真っ青を通り越して土気色になっている。……クソガキBはどこに行った?。
「おいクソガキ。もう一匹のクソガキはどこに行った?」
「……ア、アイツは町に帰るって」
「うん? お前ら仲間じゃなかったのか?」
「女3人組のチームに入ればいいって、アイツが言ってたから……」
その時ギルドの入り口の扉が開き、3人組の傭兵がギルドに入って来た。3人組は真っ直ぐ受付に来ると、登録証を出しているようだ。
「この登録証を届けにきた」
「誰か亡くなっていたのですか?」
「新人っぽい見た目の奴がオークに喰い散らかされていたよ」
「あっ! この名前! さっきから聞いてるクソガキの名前です」
クソガキBはオークに殺されたみたいだな。死んだがクソガキだし、周りも同情なんかしていない。クソガキAは顔が真っ白だが、娯楽の提供者としか思われてないぞ?。
ベテランの傭兵が、ギルドの中にある牢屋へクソガキAを連れて行った。アレがどうなろうが俺は知らないし興味も無い。手続きが終わったので宿に帰ろう。
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0040終了時点
金貨13枚
大銀貨22枚
銀貨15枚
大銅貨11枚
銅貨3枚
風鹿の角槍
風鹿の角の太刀
赤豹の爪の小太刀
黄蛇の牙の打刀
赤豹の牙の手斧
風鹿の角の十手
鋼とオーク革の鎧
革と鋼の肘防具
革と鋼の膝防具
革と鋼のブーツ