0396
随分と眠たそうなリンデとリヴィを横目に、俺は大銅貨15枚を支払って朝食を注文する。2人には特別に凍る寸前の聖水をコップに入れて飲ませてやった。すると、食堂に2人の絶叫が木霊する。
【止音】を使っているので迷惑にはなっていない。俺を睨んでくるが「目が覚めたか?」と聞くと睨むのを止めた。リンデは乳繰り合ってたのがバレたと理解したのか恥ずかしそうだ。
リヴィが理解していないのでバラしてやったら、こっちも理解したのか顔が真っ赤になって俯いた。気配を探れるようになれば、何をやっているかは何となく分かるようになる。
部屋を覗いていたのかと聞かれたのでそう伝えると、俺が何故知っているのか理解した様だ。朝食後、小雨の間に一気に王都まで行く事を話し、急いで門に行き手続きをして外へ出た。
少し走って進み、リヴィを背負ったら身体強化を使って皆は全力で走る。領都ガンダスを出発し、クーデアの町、ハリパの村、領都エルンド、ナームの村、ノースアルムを越えて行く。
王都に着いたのは丁度昼過ぎ辺りだった。結構雨足が強く、門で手続きを終えたら直ぐに宿へ直行した。ラーファンさんの宿に行き、いつもの部屋と4人部屋と2人部屋をとる。
大銅貨12枚を支払い部屋をとったら、全員で中庭に行き1人1人に【乾燥】を使っていく。乾燥させても空気中に湿気として出るだけなので、外で使わないと部屋の中に湿気が充満してしまうからだ。
十分に【乾燥】を掛けたら、隣の食堂に移動して大銅貨15枚を支払い昼食を注文する。昼食後、部屋へ行こうとすると、リンデがダナとシュラを引き止めた。……何かあったのか?。
どうやら城まで付いてきてほしいらしい。2人は護衛も兼ねて了承した様だ。俺は宿の部屋に戻り3匹とゆっくりとする事にした。聖水を飲みながら3匹とリバーシでもするか。
部屋に戻って3匹と遊んでいると、部屋にリヴィがやってきた。どうやら暇でやる事が無いらしい。なのでリバーシのルールを説明した後、3匹と遊ばせる事にしたのだが……。
「何で一回も勝てないんだ!? 幾らなんでもこの3匹は強すぎるよ!! 私は初心者だよ? 少しは手加減してくれても良いんじゃないかな? そう思わないかい?」
「ワフ?」
どうやらマートルには伝わっていない様だ。もちろん言葉は伝わっているのだが、手加減してほしいという気持ちは伝わらなかったという事だ。まあ、3匹とも手を抜く事は無いのだが……。
勝ったり負けたりしながら遊んでいると、ダナとシュラとリンデが帰ってきたみたいだ。何やら深刻……じゃないな、眉間に皺が寄っているんだが、いったい何があったのやら?。
「そんなに眉間に皺を寄せて、いったい何があったんだ? 犯罪者に仕立て上げられた事に怒り狂って、聖王国を攻めるとでも言い出したのか? それは無いと思うんだが……」
その俺の言葉に、リヴィはギョっとした顔をしてダナ達の方を向く。既にその時には眉間の皺を消していたのでリヴィには見られていない。とはいえ、何があったんだ……?。
「実はね……ここ王都の大神殿で内部抗争が勃発しているらしいんだ。大神殿長の一派と下っ端の神官の間で一触即発の状況らしくってね、王軍も臨戦態勢のままらしいんだよ」
「どうも大神殿長の一派は、これからもお金稼ぎを続けたいようですね。人の良い顔をしていながら金の亡者だったようで……。下っ端の神官達は改めるべきだと言っているそうです」
「文官達の工作が上手くいった結果なのですが……あの大神殿長がお金の亡者だったとは思いませんでした。まさか人々の為ではなく、お金の為だったとは」
「世の中そんなもんさ。それよりも、アルドが書いた【浄化魔法】の書が駄目押しだったみたいだね。神殿以上の書を王太子は広く教えてるらしくって、神殿の価値が下がる一方なんだよ」
「王太子は上手くやったと思います。秘匿せずに広く教えている御蔭で、神殿を嫌う者達が声を挙げやすくなっているんです。簡単な【浄化魔法】なら覚えるのに時間は掛かりませんし」
「アルドさんの許可無く始めて申し訳ありません。王太子殿下も文官達に”説得”されて仕方なく解放したそうです。なので、あまり責めないであげて下さい」
「いや、狂信者に関わりたく無いんで別に良いんだが、それよりも<物理魔法陣>を使わないのか? あれなら簡易的に魔力を流せば魔法は使えるぞ? まあ、身につかないが」
「……アルドは<物理魔法陣>を作れるのが一部の希少種族だけだと知らないのね。えーっと確か……あれは……そうだわ! <物理魔法陣>は魔天族しか作れない筈よ」
「ああ……あの偏屈種族かい? 昔、不老長寿が助けた時も、「別に助けなど要らなかった」と言った種族だろう? その後、裏でコッソリ感謝を述べてたらしいけど……」
「魔天族は姉上が仰るような種族なんですが……何と言うか、種族全体が恥ずかしがり屋なんですよ。裏では凄く感謝するんですけど、表では澄ましているんですよねー」
それは、あれか……種族全体がツンデレなのか? なんか嫌な種族だな。聞いたところ、魔天族は男女ともに居る種族らしい。男のツンデレとか見たくもないな。近付くのは絶対に止めよう。
「という事は、<物理魔法陣>も普及はしてないのか……とはいえ、良いとも悪いとも言える微妙なところだな。楽はしてないんだが、代わりに魔法の普及の足枷になってるんだなぁ……」
皆が気にしているので簡単に教えておく。<物理魔法陣>は紙に書いたり、布に刺繍を施して使う物だ。基本的には1回限りの物だが、布系は繰り返し使えるようにしてある事が多い。
該当する魔法が使える者が、該当の魔法陣を特殊なインクか溶液に漬け込んだ糸などを用いて作ったり書いたりする。紙に書いた物が1番使いやすいのだが、本人の自由でいい。
重要なのは作った者が望んだ規模と威力の魔法を、魔力を流すだけで使用できるところだ。つまり、ヘタクソでも魔法が使えるようになるのが<物理魔法陣>という事になる。
しかし、当然の事ながら使い熟す事は出来ないし、<物理魔法陣>が無ければ魔法は使えないままだ。結局は簡易的な物でしかない。そのうえ、中級から上の魔法は使う事が出来ない。
容量的に、どうやっても上級や高位魔法を扱う事が出来ないんだ。中級でも魔力消費の激しいものは<物理魔法陣>に出来ない。思っているより制限の大きい技術だが、有用な物なんだ。
魔法の使えない奴に持たせれば、魔力を効率的に使える。それに緊急時の保険として持っておくという事も出来るから、命が助かる可能性も増えるだろう。そういう使い方をする物だ。
長くなったが、皆は飽きもせずに熱心に聞いていた。結局、魔法が使える奴より劣る物である事に間違いは無い。作る手間はあまり掛からないんだが、また技術を独占しているのかね?。
「独占しているのかは分からないね。アタシでも聞いた事があるくらいで、魔天族に会った事すら無いんだ。相当のレア種族である事に間違い無いよ」
「魔天族は、確か魔神様と精霊族との間に生まれた種族だった筈よ。精霊族はエルフそっくりの種族だけど、耳の尖りが半分くらいなのが特徴だと祖母から聞いた事があるわ」
「魔天族はエルフに似た種族だよ。肌の色が褐色で、銀髪なのが特徴さ。ただ、エルフと違ってそこまで華奢じゃないし彼等独自の戦闘術というのもあって、かなり強いんだ」
「姉上が仰った戦闘術ですが、彼らは<魔戦技>と呼んでいましたね。魔法と戦闘技術と身体強化を組み合わせたもので、非常に優秀ですよ。ただ、身体強化モドキですが……」
……聞いた感じ、魔天族というのはダークエルフなのかね? しっかし、種族全体がツンデレのダークエルフねぇ……? まぁ、別世界だしダークエルフじゃないから別にいいか。
そろそろ夕食の時間だから、食堂に行こう。皆もお腹空いただろ?。
▽▽▽▽▽
0396終了時点
大白金貨3枚
白金貨8枚
大金貨36枚
金貨89枚
大銀貨170枚
銀貨130枚
大銅貨282枚
銅貨39枚
神鉄の太刀
ヒヒイロカネの矛
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ




