0038
ソードグリズリーの素材を使って作るのは、長巻の刃とトンファーだ。素材が余ったら他の物も作るが、まずは2つを作成していく。作成は直ぐに終わったものの、ウィンドディアーの物より重い。
その為、振って確かめてもらう。
「これぐらいの重さの方が良いね」
「力が入れやすく、重さも利用できます」
「やっぱり軽かったか……」
「あれはあれで悪くないんだよ?」
「ですね。攻撃の手数はあちらの方が多いですから」
手数を取るか、威力を取るか。結局の所は両方という事になるんだけど、こればっかりは仕方がない。リアルである以上は、どっちも出来るようにしておかないと危険だ。
手数重視で威力が足りない。威力重視で手数が足りない。どちらでも死ぬ可能性がある以上は、どちらも出来るようにして駄目なら逃げる。コレがベストだ。
リアルにはロードもコンティニューも残機も無い。死んだら終わり。それを避けるのを最優先にするのは当然の事なんだよな。死ななきゃいい、本当にコレに尽きる。
「材料は余っているようですし、ヌンチャクと鎧通しもお願いします」
「アタシの短刀も」
「了解」
ヌンチャクと鎧通しと短刀も直ぐに作り終えた。素材が多少余っていて何かに使えそうだが……どうしようか? そう考えていると横から声が掛かった。
「あの、ルタの武器を作って下さいませんか?」
「サリー! 何を言っているんですか!?」
「そういえば、威力が足りないと悩んでいましたね」
「エル!? 私が上手くなればいいだけです!」
「とりあえず落ちつきな。いったいどういう事だい?」
話を聞くと、騎士の子は戦士の子が武器を変えてから、威力不足に悩んでいるらしい。それまでは、お互いが青銅製の武器だったので似たような感じだった。
武器が変わってからは自分が止めを刺すのが遅れていて、チームの足を引っ張っている。そう感じて悩んでいるらしい。とりあえず、その青銅の武器を見せてもらう。
「何だコレ……。随分と質が悪いな」
「実家のある領都で買った物ですよ!?」
「そう言われてもなぁ……」
「う~ん? 普通じゃないかい?」
「普通ですね。ハッキリ言って、アルドが作る物の質が良すぎるだけです」
「そうですよね!? 悪くないですよね!? 兄に買ってもらったんです!」
「あー……。そりゃ申し訳ない」
「許す代わりに安く作って下さい」
「……いいけどさ。代わりに手伝ってもらうよ?」
俺は5人組に石斧を渡して木を伐って来るように言い、自分は石を集める事にした。ダナとシュラは新人だからそれぐらいの武器の方が良い、と横で話している
石を【融合】し【圧縮】していると、木を持って帰ってきた。その木の皮を【分離】して剥がして【圧縮】し、【変形】して丸太にしてから要望を聞く。
その前に、彼女達の名前をワザと聞いていなかった事を思い出したので聞いておく。
魔人族の騎士は伯爵家の三女で、名前をルティル。仲間からはルタと呼ばれているらしい。
サキュバスの魔法使いは伯爵家の分家の子で、名前はサリエス。仲間からはサリーと呼ばれている。
エルフの弓使いは伯爵の知人の子で、名前はエルティア。仲間からはエルと呼ばれてる。
虎人族の戦士は伯爵家の護衛を代々担う一族で、名前はララ。そのまま呼ばれてるそうだ。
狼人族の僧侶は領都の神殿長の娘で、名前はファレン。この子もそのまま呼ばれてる。ちなみに僧侶ではなく神官だそうだ。
折角なのでこちらも自己紹介しておいた。もちろん隠すべき所は隠したが、サキュバスの子が何か感づいたっぽい気がする。ただし詳細は分かるまい。
「えーーっ!? アタイの目の前に<剣の踊り子>と<血狂い>が居るーっ!?」
「だから、ランク10と11なんですね」
「凄い! 有名人だーっ!」
「なんか久しぶりだねぇ……コレ」
「本当に……」
そんな話を横でしているが、こっちは武器で悩んでる子の相手だ。悩みって言っても個人差があるし、解決するのかね?。
「武器どうすんの?」
「私は剣を使っていますが、このままで良いのでしょうか?」
「それを俺に言われてもね。拘らない方がいいとは思うけども」
「拘らない……」
「一つの武器に拘ると、足元掬われるから気を付けた方がいいよ」
「ですが他の武器なんて使えるのでしょうか……」
「剣と一言で言っても色々あるさ。短剣、剣、長剣、大剣、両手剣、剣鉈、刺突剣」
「刺突剣?」
「刺突剣は、鎧の隙間とか急所とかを突き刺す為の剣だよ」
「急所……」
「技術がいる武器でもあるけどね。騎士っぽいんだから、威力のある武器と盾を持てばいいのに」
「盾ですか?」
「盾で受ける、流す、弾く。盾の使い方は色々あるよ。そして焦れた敵を、威力のある武器で一撃! ……っというワケだ」
「成る程、そんな戦い方が……」
「君が盾で敵の気を引いてる内に、チームの誰かが攻撃する。それが連携だろ? まぁ俺達にはカケラも無いが」
「では盾を持つとして、武器は?」
「威力ならメイス、手数なら剣、リーチなら槍となるな」
「では……メイスでお願いします」
「アルド。盾なら余った素材使ってもいいよ」
「命を守る物ならいいでしょう」
そう言われたので、ソードグリズリーの素材の余りを使う事が決まった。メイスについて色々な要望を聞いたが、最終的にモーニングスターに決定。
まずは木で90センチほどの柄を作り、先端に直径12センチの球形の部分を作る。その球を【変形】させスパイク部分を作っていく。
その後、球とスパイクに石を被覆して先端部分は完成となる。【変形】と【融合】を使い護拳を取り付けて、護拳部分に石を被覆する。
持ち手の部分に【変形】で溝を作って滑り止めとして、これで完成となった。
次は盾だが、既にカイトシールドに決めてある。凧の形に木を【変形】し、少し内側に湾曲させていく。
ソードグリズリーの爪を表面に被覆し、端に牙を被覆する。盾の端の部分を盛り上げて引っ掛かるようにしたところで、ちょうど素材が無くなった。
盾の内側に取っ手と、革のベルトを取り付けられる部分を作り完成だ。
フォレストウルフの革をシュラが持っていたので、革のベルトにして取り付けておいた。騎士の子は左手に盾を右手にモーニングスターを持ち、振って確かめている。
「盾は難しそうです」
「練習あるのみだね。直ぐに使えるようになる物なんて無いさ」
そういえば、ウィンドディアーの長巻とトンファーの素材が余っていたのを思い出し、一旦【分離】し【融合】して纏めておく。次に骨を芯にして角を被覆し、90センチの菱形の刃にする。
先端に向かって細く尖らせて、木の持ち手を付ければ完成だ。こんな物でもエストックとしては十分だろう。試しに振って突いてみる。
「それが刺突剣ですか?」
「あぁ。刺突剣の1つでエストックという剣だ」
「アタイには頼りなさそうに見えるけど……」
「急所を狙う武器だって言ってたから、あんなもんだろうねぇ」
「それは対人用の武器では?」
「そうだよ。でも、強化すれば魔物相手にも使える」
「それ! それ売って下さい!」
何か凄いテンションでエルフの子が迫って来るんだが? エルフに刺突剣って似合うけどさ、そんな興奮する事かね?。
「こら! アルドから離れな!」
「す、すみません!」
「エルが急に大声を上げるなんて珍しい」
「売るのはいいけど安くはないよ? 邪生のウィンドディアーの素材を使ってるから」
「ウ、ウィンドディアー! しかも邪生……」
新人だと高くて買えないだろうね、流石に値段を下げたりは出来ないし。唯でさえ、騎士の子の装備は出世払いに決まったのにさ。なんか気付いたら勝手に決まってたんだよ。
まあ、余った素材と石と木しか使ってない物だし、2人は新人の女の子達を応援したいんだろうから仕方ない。結局、エストックはシュラに渡した。
俺達の中で1番、対人戦闘経験が豊富だからだ。間違いなく”上手く”使ってくれる。あの系統の武器は、敵を嬲り殺しに出来る武器だからな。
そろそろ村に帰る用意をしよう。俺達はいいがこの子達は危険だから、一緒に帰る事になった。リヤカーを牽いて村に戻るが、幸いにも魔物に襲われる事は無く安堵する。
村に着いた時には、既に夕方だった。
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0038終了時点
金貨10枚
大銀貨18枚
銀貨16枚
大銅貨0枚
銅貨3枚
風鹿の角槍
鋼の脇差
鋼の十手
石斧
黄蛇の牙の打刀
鋼とオーク革の鎧
革と鉄の肘防具
革と鉄の膝防具
革と鉄のブーツ