0319
おかしい。ゴブリン肉が普通に食える。クッソ不味いリアクションを幾つか考えていた身としては、納得がいかない。しかし、普通に食えているという事は、処理の仕方が悪いんだろう。
俺は立ち上がり、森に行ってゴブリンを探す。結構遠くに1体だけ居たので、素早く近付いて首を刎ねる。【念動】で逆さに宙吊りにして血抜きをしていく。普通にやると時間が掛かるな。
結局、逆さ宙吊りにしながら皆の下に戻る事になった。戻った頃には血もかなり流れ落ちていて、それほど流れ出ない状態だ。【清浄】の魔法を使って普通の人と同じ様に浄化する。
【分離】を使って解体したら、肉を焼いてみる。すると、即座に激烈なほどの悪臭が立ち昇り始めて、咳が止まらなくなった。何とか焼き終え口に入れてみるも、噛めずに吐き出した。
「ブゥェッ! ベッ! ベッ! マッズ! クッソマズ! 何なんだよコレ。絶対に食い物じゃ無いぞ! うわっ! 口の中が不味いじゃないか!? これ嫌がらせか何かか?」
皆は悪臭が立ち昇った辺りで俺から離れていて、今でも俺をジト目で見てくる。フライパンを含めて丹念に【浄化】の権能で浄化したら、口の中のクッソマズい味も無くなった。
「だから言ったろうに、食べ物じゃないって。何でアタシの忠告を聞かないのかね? 食べ物とは思えないくらいにマズいんだから、もう2度と焼いたりしないでおくれよ」
「久しぶりに、あの悪臭を嗅いだ気がします。何百年ぶりでしょうか……昔あの肉を食べて酷い事になったのを思い出しましたよ。思い出したくもありませんでしたが……」
「ちょっと待って! さっきアルドがゴブリンを狩りに行く前に焼いていたお肉、アレってゴブリン肉じゃないの? アレは臭く無かったわ……もしかして普通に食べられるの?」
「あー、マズかったー。最初に食べてたのは、普通に食えるんだよ。ちゃんと処理したからな。もう1度ゴブリンを狩って、今度は他の傭兵と変わらない処理にしたんだ。そしたら……」
「滅茶苦茶マズかったんだね? という事は、主様がちゃんと処理したら食べられるんだ。何故食べられないほどに臭くて不味くなるんだろうね? 何か理由が在る筈だよ」
俺は最初のゴブリン肉を【熟成】した後に、焼き網の上に乗せて焼いていく。皆はジッと見ているが悪臭は全くしない。十分に焼けたので皆に食べるように促すと、恐る恐る食べ始めた。
噛んだ瞬間に理解したんだろう、皆が嫌そうな顔をしていたが今は普通に食べている。問題なく食べられるという事は、恐らく血が原因だと思うんだが違うのだろうか?。……試してみよう。
俺は不味かったゴブリンから血を【抽出】して、出来る限り綺麗に血を抜く。その肉を焼いていくが早速臭い。直ぐに捨てて浄化する。次に肉を切り出して【清潔】を掛けてから焼く。
すると少し臭いものの、殆ど臭いが抑えられた。何かの汚れが肉に広がってるって事? 殺して直ぐに川に放り込んだら、臭くならないんじゃないか? 殺した後が重要な気がする。
魚類には殺した後、身にアンモニア臭が移るものがあるって聞いた事があるが、それと同じなのかもしれない。そんな事を皆に話して聞かせる。適切な処理をすれば食べられる物だと。
「つまり、ゴブリン肉は普通とは違う処理をしなきゃいけないって事か……。ちゃんと処理すれば本当に食べられる肉になってるんだ。なってる以上は、やり方の問題だけなんだね」
「アルドは普通に血抜きした後のゴブリン肉に、【清潔】を掛けただけだよ。逆に言えばそれだけで臭いは相当抑えられるんだ。僕が育った孤児院に教えたいぐらいだよ」
「美味しい訳ではないですけど、食べられなくもないですね。さっきの悪臭がしていたものは、口に入れたくもありませんが……。【清潔】なら少し学べば使えますしね」
俺はついでにコボルトの肉も焼いてみるが、こっちも特に問題なく食べる事が出来た。ただしコボルトの方はゴブリンより筋張っている。少々硬めの肉だ。こっちは煮込み系だろうか?。
ただ、コボルトの肉も普通の傭兵と同じ処理をしたら食べられるかは分からない。これに関しては難しいところだ。浄化魔法さえ使えれば結構変わってくるので、何とも言い辛い。
浄化魔法が使える者が処理するだけでも、随分違ってくる。初めて5人組に会った時も、ファレンが浄化していたのでそれなりの金額で売れていた。早く浄化する事で色々変わるからな。
浄化が遅いと質が悪くなった後なので、どうにもならない。獲物を倒した後、直ぐに浄化したりする事によって品質の低下を防ぐ事が出来る。まあ、俺がいつもやっている事だ。
俺はその場を離れコボルトを探して狩る。ゴブリンと同じ様に逆さ宙吊りにして血を抜いたら、そのまま皆の所に持って帰った。早速焼いてみるものの、ハッキリ言って硬い。
【熟成】を使ってから焼くと変な臭いはしないがマズい。更に筋張っていて肉としても美味しくないうえに、血生臭い。【抽出】で血を出来る限り抜いてから、再び焼いてみる。
血生臭さは殆ど無くなったものの、やはり筋張っていて美味しくない。肉に【清潔】を使ってから焼くと、血の臭いは完全に無くなっていた。何と言うか【清潔】の重要度が上がるなぁ。
最後にゴブリン肉に【聖潔】を使ってから焼くと、普通の肉として食べられた。皆もビックリしている。何回か【清潔】を使って綺麗にするか、【聖潔】を使えば良いらしい。
「しっかし、色々やってみるもんだねぇ……。まさかゴブリン肉が食べられるようになるなんて、目の前で見てなきゃ信じないよ、普通はさ。ビックリなんてモノじゃないよ!」
「本当に、心の底からそう思いますよ。あのリス肉以下の家畜の餌にもならない筈のゴブリン肉が、普通に食べられる日が来るなんて……。今日、歴史が変わった気がします」
「それは幾らなんでも大袈裟過ぎないか? 何とかしようとすれば何とか出来た事だ。別に俺でなければ出来ない訳じゃない。つまり、誰も思いつかなかっただけの事だろう」
「その思い付くという事が凄いんだと思います! 僕の家もゴブリン肉が食べられたなら、もう少しマシな暮らしだった筈です。それぐらい凄い事なんですよ!」
「繁殖力がとても強く、何故か全滅させられないのがゴブリンだものね。食べられるのなら、かなりの安値で出回るんじゃないかしら? 値を吊り上げられる物でもないでしょうし……」
「それに、どこにでも居るのがゴブリンだ。何故か寒い地方にも、暑い地方にも、山や海にも居る不思議な魔物がゴブリンだからな。それらが食べられるならば、生活は楽になるだろう」
そろそろ話を終えて、狩りの続きを始めよう。焼き場は面倒だったので、そのままにしておいた。誰かが使うかもしれないし、放置してあっても害がある訳でもない。なので置いていく。
出発して森に分け入るのだが、隊列などは変えていないものの【空間把握】は広く使っている。前にオーガが出てきているだけに、ここは慎重に調べて逃げる準備はしておこう。
ゴブリン4体、オーク5体、イエローボア2匹を倒したところで帰る時間になった。全て綺麗に処理したので、身体強化を使ってさっさと帰る。村に戻るまで気を抜く訳にはいかない。
5人の中でもディルとフォルは分かっているので、実質3人に向けた言葉だ。3人も流石に分かっているだろうが、こういうのは何度も言わないと忘れる事がよくある。
結局のところ、失敗の多くは判断ミスや集中力の低下から起きる事なんだ。帰る時というのは安堵感からか気を抜きやすい。だからこそ注意しておく必要がある。強くなっても、まだ新人だからな。
川を跳び越えて、対岸へと渡ると気を抜いても大丈夫だろう。本当なら村まで気を抜くべきじゃないが、そこら辺はこれからだ。川沿いの道をゆっくりと歩き、雑談しながら帰る。
村の門番に登録証を見せて村の中に入ると、真っ直ぐ解体所へと行く。ゴブリンは売らないから出さなくてもいいな。
▽▽▽▽▽
0319終了時点
大白金貨3枚
白金貨3枚
大金貨19枚
金貨68枚
大銀貨148枚
銀貨51枚
大銅貨132枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
アダマンタイトのサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
大海竜の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ




