0317
ダナ達はヴェルと話しているが、俺は掲示板の方へと行く。並んでいる依頼を1つ1つ確認しているが、面白そうな依頼は全く無い。やっぱり狩りに行くしかないか、皆にそう言おう。
俺は掲示板の前から退き、ヴェルと話す皆の下へと歩く。ダナ達は王都であった事の内、ヴェルに話しても問題ない事を話している。その中でヴェルが喰いついたのは、【浄化魔法】だ。
「お願いします! その浄化魔法が書かれた紙を写させて下さい! 浄化魔法が使える傭兵が増えれば、それだけ邪生を倒すのが楽になります。ですから、お願いします!」
「別に構わないが、条件がある。絶対に失くさない事と汚さない事。特に失くした奴が居たら、俺が直々に殺しに行く。それだけは覚えておいてくれ」
ヴェルは顔を真っ青にして震えながら受け取った。受付嬢達にも協力させて写すらしい。俺達は早めに商業国家マールへと行かなきゃならない。一応は王太子からの依頼だからな。
その事はダナ達が伝えているので、人海戦術で写すそうだ。マールの話に関係する事だが、相変わらず村に回って来る香辛料は減ったままなうえ、その辺りの情報が向こうから入ってこない。
どうも向こうの商人は、その辺りの事を聞くと言葉を濁すらしく分からないそうだ。南の侯爵領の商人も困っているが、どうにもならないらしい。難儀な事になってるなぁ……。
皆で話していると横に5人組が居て、こっちを見て待っていた。話を聞くと、自分達も浄化魔法を教えて欲しいと言ってきたので、紙を写したら良いと言っておく。
狩りに行くか悩んだが、帰ってきたばかりなので訓練にしようか。訓練場に行き、新人4人に訓練をさせる。主に【気配察知】と【浄化魔法】の訓練をやらせるのだが、基本的に動きの無い訓練だ。
4人には目を瞑らせて意識を集中させる。俺も【心静】と【集中】を使ってやり、4人の補助をしていく。やがては補助が無くても出来るようになるだろうが、今は補助をした方が良い。
「相変わらずボヤっとしか分からないよ。でも、何となく大きいのと小さいのは分かるようになったかな? ああ、成る程。分かったよ、そういう事だったんだね」
どうやらフォルは気配というものが何なのか分かった様だ。そこさえ分かれば気配系の技は上達していくだろう。この次は自分の気配だが、気配を消す系の技は後で構わない。
「うーん……何となく分かるような、分からないような。ミレイアの気配は分かるんですけど、他の方の気配の区別が付きません」
「私も同じだ。ジャンの気配なら直ぐに分かるのだが、他の者の区別が付かないな。この違いが分かれば、【気配察知】が正しく使えるようになると思うのだが……」
「………。あっ!? ああ、そういう事ですか。成る程、そういう事だったんですね。分かるようになれば、とても簡単な事だったんだと分かります」
これでリンデもコツを掴んだ様だな。残るはジャンとミレイアだが、あの2人は多分、あの2人で解決させた方が良いと思う。お互いの気配は分かってるんだし、野暮な事はしない。
そろそろ昼なんで昼食を食べに戻ろうか。皆も自分の練習をしていたし、俺もアドバイスや指導をしていた。宿に戻って大銅貨13枚を支払うついでに、1人部屋を女将さんに頼む。
リンデの部屋の9日分である大銅貨18枚を支払い、昼食を食べる。食事後、ギルドの訓練場に行き、今度は【浄化魔法】の訓練を始める。この訓練は全員でやる事になった。
と言っても、【清潔】の魔法陣を覚えるのと、素早く正確に行使する練習だ。そんな練習の最中にビックリする事があった。それは3匹が【清潔】を覚えて使った事だ。
ダリアとマートルが、【清浄】を使える事は知っていた。だけどカエデは使えないし、【清潔】の魔法はそもそも3匹とも使えなかった筈だ。つまり、見て覚えて使ったという事になる。
そんなレベルの高い3匹に触発されたのか、全員が気合いを入れなおして練習に励んだ。俺も全員に【心静】と【集中】を使い、訓練の質を向上させる。……もう、夕方か。
練習を終えて宿に向けて歩いていると、ジャンとミレイアはジャンの実家に泊まると言ったので途中で別れた。俺達は宿の部屋に戻って、送風機と冷房に魔石をセットして起動する。
椅子に座って聖水を飲んでゆっくりしたら、足元で甘えている3匹と遊ぶ。ディルとフォルも参加して10分ほど遊んだら1階の食堂へと下りた。リンデはまだ来ていない様だ。
女性従業員に大銅貨11枚を支払ったらテーブル席に行き、ゆっくりと待っていると女将さんが近付いてきた。テーブル席に来るようになって、猥談が無くなっていたのに……。
「こんばんは。言い難いんだけど……ちょっと皆に頼みがあるんだ。頼み辛い事なんだけど、良いかな?」
「こんばんは。トーカ、まずは言ってみな。こっちだって内容が分からなければ、答えようがないんだよ。内容によって、出来る出来ないが変わるからね」
「ごめん、ごめん。実はね、ゴブリンを倒したらウチに持ってきてほしいんだ。旦那がさ、もう一度ゴブリン肉に挑戦するって言い出して……」
「ゴブリンですか……。煮ても焼いても食べられないと言われる、あのゴブリン肉を食べられるように……ね。言葉は悪いですが、出来るとは思えません」
「それは私も思ってるよ。でもね、ゴブリンは幾らでも居るって言うくらい居るだろ? それが食べられるなら、色んな人達が食べていけるようになる。旦那は昔からそう言っててね」
「まあ、分かるけれども……。でも、数多の料理人が挑戦しては挫折してきたのも事実なのよ? それぐらいゴブリン肉は食べられないわ。コボルトもあまり変わらないけれど……」
「そうだね。虫の魔物の方が、まだ食べられるくらいさ。それぐらいゴブリン肉はマズいよ。食べて吐き出さなければ、褒められるくらいに酷い肉なんだ」
「子供の頃に1度口にした事があるな。あの時は酷い目に遭った。直ぐに吐き出したんだが、半日はマズい味が口の中から無くならかった程だ。あれは、もう2度と思い出したくもない」
「僕も同じ思い出があるよ。食べる物も無くて飢えてた子供の頃にね。アレは酷かった……。口にした仲間も全員が吐き出して、口を水で濯いだのにマズいのが取れなかったんだ」
「ふーん……。そこまで酷いと逆に気になるな。さっきから聞いてると、食べても病気にはならないし腹も壊さないみたいだな。単にマズいだけなら、どうにか出来そうな気もするが……」
「お客さん、正気かい!? ウチの旦那もそうだけど、私には理解出来ないよ。確かに食べられるようになれば、多くの人が助かると思う。でも、ゴブリンは……」
「トーカの言いたい事も良く分かるよ。無理してゴブリンの肉を食べる必要が、果たして本当にあるのかね。それに、食べられるようになっても、余計にお金が掛かったら意味が無いよ」
「香辛料などを大量に使って、食べられるように出来たとして……ネイルラビットより高くなったら意味がありませんしね。思っているよりも遥かに大変ですけど、大丈夫ですか?」
「分からない。ウチの旦那は思い出したようにゴブリン肉に挑戦するんだよ。子供の頃に飢えで亡くなった、スラムの友達の敵討ちなんだって聞いた事があるんだ」
女将さんの言葉を聞いて、皆が何とも言えなくなってしまった。確かにゴブリン肉が食べられるようになれば、相当食糧事情は改善する筈だ。肥料にすると言っても限度があるからな。
この世界では、田畑は町や村の内側に作るしかない。理由は魔物に荒らされるからだ。その所為で、地球のように田畑を広げる事が簡単には出来ない。
地球でも簡単じゃないが、この世界では非常に難しい。とにかく田畑を守る人員が必要になるので、農家が兼務してるのが実情だ。草取り等と同時に田畑を荒らす魔物退治がある。
この世界の農家さんは、戦えないと勤まらない。
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0317終了時点
大白金貨3枚
白金貨3枚
大金貨19枚
金貨68枚
大銀貨148枚
銀貨51枚
大銅貨143枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
アダマンタイトのサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
大海竜の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ




