0306
「ニャー!」 「グルゥ」 「ウォーン」
「随分元気だねぇ……。まあ、アタシ達もこの<きぐるみ>の御蔭で随分楽になったけども、走り回るほどの元気は無いよ。それにしても暖かい、死ぬほど寒かったっていうのに……」
「本当にそうですよ。私なんて本当に死ぬと思いましたからね。アルドが突破の手段を得ると言った時には、頭がおかしいと思いました」
「まあ、言いたい事は凄く良く分かるけど、最初に強引に<きぐるみ>を奪った人が言っちゃダメよ? 皆が呆れた目で見てたでしょ?」
「シュライアは引っ手繰るように奪っていったけど、もしかして自覚が無いのかな? そこまで寒いのに弱いとは知らなかったけど、奪うのはどうなんだろうね」
「しかし……この熊の魔物が何と言う名なのか知らないが、驚くほどに暖かいな。これは水の季節にも重宝するだろう。今作ってもらえて、むしろ良かったと思える」
「あーー、凄く暖かいよ……。本当に凍え死ぬかと思った。ダンジョンの中で猛吹雪があるなんて聞いた事が無いんだけど、もしかして僕達が歴史上初めてなのかな?」
「こんな寒い層を突破出来た人が居たとは思えませんし、突破しようと思う人も殆ど居ないと思います。普通なら解決策も無く諦めるでしょうし……」
「そうだな。これほど寒いといつ死ぬかわからない。この層に居るだけで魔物と戦わずとも死の危険があるうえ、死ぬ確率も非常に高いのだから始末に終えん」
「……ぷっ。何だか熊の群れみたいに見えますね。皆さんよくお似合いだと思います。私はどうでしょうか? 似合っていますか?」
「<きぐるみ>が似合うのもどうかと思うがな。それよりも雪の中にも魔物は隠れているぞ。奇襲してくる可能性が高いんだ、緊張感を持て」
雪の下から白い狼が4頭襲ってきたが、不老長寿のメンバーはフォル以外【気配察知】が使えるので最初から知っていた。その為に奇襲になっておらず簡単に始末されている。
浄化と血抜きをしたらアイテムバッグに収納して先へと進む。次の層への転移紋が分からない為、いつも通り円を描くように探している。その結果北東に転移紋を発見した。
発見までに白い狼8頭と白熊4頭を倒して収納している。北東の転移紋から20層へと進む。20層からは1層の広さが30キロに拡大される。前回もそうだったが広いと厳しい。
それでも20層へと進み、到着したら北東へと行く。途中で白い狼を5頭と白熊を4頭倒して収納したが、転移紋へと無事に辿り着いた。転移紋に乗り21層へと進む。
21層も再び北東へと進むのだが、この層では白いオークが現れた。体の大きさは普通のオークと変わらないが、【水魔法】のような能力持ちであり、全員が初めて見た魔物だった。
厄介なのが【水弾】を当てて濡らしてくる事だ。猛吹雪の所為で濡れた場所が簡単に凍ってしまい、非常に極悪な攻撃手段となっている。まあ、ムカついたので、やり返してやったが。
オークの顔に【水弾】を当てて凍った時には、全員で爆笑した。理由は、顔に当たった水が凍り息が出来なくなったからだ。最後には自分で自分の顔を殴って、無理矢理氷を壊していた。
さっさと首を落として始末し、浄化と血抜きを終わらせてアイテムバッグに収納する。転移紋までに白オークを9体、白い狼を3頭、白熊を2頭倒して到着した。
次は新しい地形だ。皆にその事を話し、緊張感を持って22層へと進む。光が止むと其処は海だった。広い海が目の前にあり、大きな魔物が2匹しか居ない。間違いなく最後の層だ。
「皆! ここには魔物が2匹しか居ない。<きぐるみ>を脱いで準備しろ!」
「「「「「「了解!」」」」」」 「ニャ!」 「ガウ!」 「ワン!」
「「「了解!」」」
<きぐるみ>を脱いで俺のアイテムバッグに収納した直後、2匹の魔物は姿を現した。1匹はとても大きな蛇みたいな奴で、もう1匹は首長竜みたいな奴だった。やっぱり竜か……。
「大海竜と海蛇竜だ!! あの竜は海から出てこない奴等だよ。普通に生きてる奴等は滅多に襲ってこないと言われてるけど、ここはダンジョンだから……」
「襲ってきますよ! アレ等は口から水を吐きますから、絶対に正面に立ってはいけません!! 正面に立つと、吐いた水に押し潰されますから気を付けて!!」
大海竜の首が直径2メートルほどで、海蛇竜の胴体が直径5メートルほどだ。まずは大海竜の首を斬る!。
俺は身体強化を使って走り出し、海から顔を出している大海竜に迫る。
大海竜は口から大きな水球を飛ばしてきたが、俺には当たらない。思っているよりも速度が遅く、回避するのは簡単だった。回避しながら接近していると、横の海蛇竜も口から水を出す。
こっちはテッポウウオみたいに出してきて、威力が結構高い。地面が抉れる程の威力があり、しかも速い為にかなり危険だ。……俺? 俺は当然のように回避できる。って言うか、遅い。
皆にとっては速いだろうが、俺にとっては楽に回避できるぐらいには遅い。大海竜は接近した俺に対して噛み付きに来たので、回避した後に首をザックリ斬り裂いてやった。
暴れる大海竜を2度、3度と斬り裂いて十分な傷を負わせたら放置する。最悪は失血死させた後に、【念動】で無理矢理に陸に上げよう。今度は海蛇竜の下へと走る。
海蛇竜も水を吐いて攻撃してくるが、俺に当たる事は一切無い。海蛇竜も噛み付きに来たので、回避して首を何度も斬りつける。血が大量に流れ始めたので、こっちも放っておく。
皆は近付けなかったので、戦闘には殆ど参加出来なかったが仕方がない。死ぬ可能性もそれなりにあったので、牽制してくれただけで十分だ。御蔭で簡単に近付けたしな。
どうやら大海竜が死んだようなので、【念動】で無理矢理に陸に挙げる。全長10メートルはある巨大な首長竜。それが大海竜と呼ばれる竜だった。……それにしてもデカいなぁ。
俺はせっせと解体していくが簡単には終わらない。近くに焼き場と焼き網を作り、大海竜の肉を切り出し【熟成】したら、焼いて食べるように言う。浄水の樽も出したので大丈夫だろう。
酒を飲むメンバーは酒を飲むらしい。好きにしてくれ、こっちは解体で忙しいんだ。必死に解体しながら浄化した内臓を3匹にやる。大海竜が終わると、次は海蛇竜だ。
鱗を剥がして収納したら次は皮だ。その皮も剥がして収納したら、肉を大きく切り分けて収納していく。やっと終わったと思ったら、良い気分で泥酔してる連中が居た。
カチンときたので【聖潔】と【浄化】の権能で、完全にアルコールを除去して正常に戻してやった。その上で、外に出たら余計な事は喋るなと念を押しておく。特に竜の素材の事だ。
流石に悪いと思ったのか、真面目な顔で頷いていたので大丈夫だろう。酒を飲むのは構わないが泥酔するまで飲んでどうする? それにダンジョンの中だって事を忘れてないか?。
脱出紋からダンジョンを脱出すると、もう夕方の遅い時間だった。俺達は急いで解体所に向かい査定をして貰う。白い魔物を出すと物凄く驚かれた。どうも、寒冷地固有の魔物らしい。
魔石が81個、フロストウルフ20、スノーベア10、ホワイトオーク10。全部で金貨10枚と銀貨70枚と大銅貨81枚になった。登録証と木札と売却金を受け取る。
1人金貨1枚と銀貨7枚に大銅貨8枚に分ける。俺だけ大銅貨が9枚だったが……。傭兵ギルドに行って手続きを行うと、新人の4人はランク4に上がった。
食堂に行き大銅貨13枚を支払って夕食を注文する。待っている間に食事の後で部屋に来るように言っておく。それぞれの鎧を作る為だ。素材の事は口に出さないように念を押した。
雑貨屋はまだ開いている筈なので、色石を買うのと自分の色を決めてくるように言う。俺達の色も説明しておいた。被らない色なら好きにして構わないし、自分の武具の色になる。
夕食後ディルを含めた5人は雑貨屋に色石を買いに行ったので、俺達は宿の部屋に戻り送風機と冷房に魔石を入れて起動する。5人が帰ってくるまでゆっくりするか……。
▽▽▽▽▽
0306終了時点
大白金貨3枚
白金貨2枚
大金貨19枚
金貨72枚
大銀貨152枚
銀貨56枚
大銅貨164枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ




