0028
拠点の近くまで来たが、微妙に上手くいっていない。デカいオークがブチギレて突出してしまっている。他のオークもついて来ているのが救いだ。
俺は拠点に向かってある事を叫ぶ、
「門を閉めろーっ!」
「閉門! 閉門!!」
上手くいかない時は門を閉めろと言っておいたのだが、ちゃんと覚えていてくれたらしい。俺は門の前まで行き、振り向いてデカいオークに石を投げた。
石が顔に当たり、更に怒ったデカいオークは武器を振りかぶる。しかし振り下ろされる前に、俺は門を飛び越えていた。
「攻撃! 攻撃しろ!!」
「「「ウリャーッ!!」」」 「「「ヤーーッ!!!」」」
派手に石と矢と魔法が飛んで行きオークを殺していく。……あ、誰か投げ槍を投げた奴が居る。下手くそな奴だな、しっかり狙え!。
壁の上で状況を見守っていると、意外に早くオークは全滅した。
傭兵達は喜んでいるが、囮は成功と失敗が半々といった所だ。デカいオークというイレギュラーの所為で失敗した部分が大きい。俺が反省していると、他の傭兵は事後処理を始めていた。
「よし、オークを回収するぞ! 今回はギルドが一旦回収し、全員に売却金が分配される」
こういう戦いでは誰が持ち逃げするか分からないからなぁ……。まぁ、当たり前の事だ。他の連中も当然の事だと言い回収に行く。そんな中、ギルドの職員と傭兵数人に話し掛けられた。
「オークの拠点はどうだった?」
「まだ中にオークは居る。ただ、どれだけの数かは分からない」
「成る程。先は長そうだな」
「少しずつ数を減らせばいいだけじゃん」
「もう一度頼めるか?」
「ああ、分かってる」
オークを回収し終わったようなので、再び洞窟へ行く。洞窟前には見張りが居なかったので中に入ってみよう。
暗くジメジメしているが、【探知】と【空間把握】を使えば特に問題は無い。
【探知】では2種類のオークが感じられる。たぶんオークのオスとメスだろう。更に進んで行くと、オークが5体ほど居る小部屋がいくつかある場所に来た。
奥の部屋から順番に、4つの小部屋の中に【火弾】を撃ち込んでいく。外に出ると結構な数が追い駆けて来たのが分かった。
「「「「「「「「「ブルルルアアァアァーーッ!!!」」」」」」」」」
オークのオスもメスもブチギレている。どうやら情事の邪魔をしてしまった様だ。そりゃ怒るわな、俺ならブチギレる。……さて、逃げよう。
今回のオークは全部がキレているので、挑発しなくとも追って来る。拠点まで戻り、門を走り抜けてから門が閉じられる。やっと囮が正しく成功した。
「撃て! 撃て! 撃てーっ!!」
オークに石と矢と魔法が殺到する。投げ槍が飛んでいくが当たらない。もっとよく狙えよ! と思い見てみると5人組が投げていた。あの子達、ここへ来て大丈夫なのか?。
先ほどよりも数が多いが、早く殲滅出来た様だ。傭兵達はオークを回収し、血抜きなどの処理を始める。再び職員と傭兵がこっちに来た。
「オークの拠点はどうなった?」
「拠点となっている洞窟の中に入ったが、奥の小部屋に居たオークも引っ張り出してきた」
「さっきの滅茶苦茶に怒ってたオークどもか?」
「何か分かんないけど、スッゲー怒ってたな」
「情事の最中に【火弾】を撃ち込んだんだ」
「ひ、酷い……」
だろうね! 俺も非道だと思う! 周りの全員が顔を引き攣らせているが、そんな事よりも話をしておかないと。
「オークの拠点の残りの小部屋は後3つだ。で、一つの小部屋にオークが5体ほど居る」
「つまり、少なくとも後15体は居るのか」
「さっきのが小部屋4つ分、つまり20体だ」
「いけるんじゃないか?」
「今日中に始末しておいた方がいいんじゃない?」
「確かにな。倒せるうちに倒す。そうしないと足を掬われかねない」
「昼食後にもう一度。最後を頼めるか?」
「了解だ」
俺はナンサンドを食べながら、拠点を見回るフリをして浄化しておく。特に門の前は結構なオークが死んでいる。釣ってきた奴が邪生になったら目も当てられない。
皆の昼食も終わり洞窟への道を急ぐ。到着するとオークが20体ほど洞窟前に居たが、その中に身長3メートルを超えるデカいのが居た。アレってこの拠点のボスか?。
丁度集まって居るので都合が良い。【土弾】と【火弾】を使って挑発する。
「ブルルルッ!! ブルァーーーーーーッ!!」
「「「「「「「「「「ブルァーッ! ブルアァーーーッ!!」」」」」」」」」」
これがおそらく最後だ! しかしながらボスの動きがそれなりに速い。当たる事は絶対に無いが、俺だから大丈夫なんであって普通ランクの傭兵だと厳しいぞコレ。
ボスオークの攻撃を回避しながら【土弾】で挑発しつつ拠点に引っ張っていく。なんかスマートなオークが居るな? そいつの顔に【土弾】を数発当てる。
「ブルルァァアァァアアアァーーーーッ!!!!!!!」
ドン引きするレベルで激怒したんですけどー? もしかしてオーククイーン的ポジションだったのか? 胸あるし。顔を傷付けられてブチギレるって、そういう事だと思うんだが……。
っていうか、ボスオークもドン引きしてるんですがそれは……。オークでさえドン引きするのかー……。オーククイーン的な奴の猛攻を回避しながら拠点まで帰ってきた。
「門を閉じろーーーっ!!!」
「閉門! 閉門! 閉門!!」
閉じられた門の前で振り向くと、そこには顔が赤黒く目が血走っているオークが居た。余程俺を殺したいらしい。俺は最後に【火弾】を5発顔に撃ち込み、門を飛び越えた。
「ブルルルルアアァァァァァアアーーーーーッ!!!!!!!!」
もう激怒を超えて憤怒まで行ったなーコレ。凄まじい叫びに低ランクが硬直している。俺は【念力】を乗せてやるべき事を伝える。
「撃て撃て撃て撃て撃てーーっ!!!」
ようやく再起動したのか攻撃が飛んでいく。本日3回目の石と矢と魔法がオークどもを襲う。しかし最後は一筋縄では行かなかった。
ドゴンッ!! ドゴンッ!! ドゴンッ!!
オーククイーン的な奴が門を壊そうと殴りつけている。よく見ると既にソイツ以外全滅しているにも関わらず、俺を殺す事を諦めていないらしい。
仕方がないので門から飛び降りてソイツの前に出る。一気に近づき殴り殺そうとしてくるが、回避しながら脇差で首を斬り裂く。血が噴き出すも、それを無視して踏み込んできた。
凄い執念だが届かない。身体強化を全力で使い、斬った方の反対側から斬る。
ドシュッ!!
首が飛んでいきソイツは絶命した。戦いの最中も浄化していた為、邪生が生まれる事は無い。……やれやれ、やっと終わった。
「「「「「「「「「「ウオォォォォォーーーッ!!!!」」」」」」」」」」
凄い喜びようだ。まぁ最後のオーククイーン的な奴は、ちょっとレベルが違ってたから気持ちは分かる。俺以外だと勝てたんだろうか?。
「お前さん凄いな! 姉御が認めるはずだ!!」
「最後のアレ、怖かったよマジで」
「アレなー、何だったんだろうな?」
「オークじゃないよアレ! あんなのオークじゃない!」
「アレはオーククイーン的な奴で、顔を傷付けたり焼いたりしたから激怒しただけだ」
「ナニやってんだオマエ!?」
いやー返す言葉も無い。余計な事をやった自覚はある。反省はしているが後悔はしていない。普通のオークでも、ブチギレるとあそこまで強くなるって分かったのは収穫だ。
各々オークを回収したり、浄化をしたり、血抜きをしたりと仕事をしている。俺も様々な仕事を手伝い、多くの傭兵と仲良くなった。今日だけで狩ったオークは53体に達したそうだ。
低ランクの傭兵達が運んでくれていたそうだが、皆で最後のオークどもを持って帰る。今日は皆で酒場で騒ぐのだろう、楽しそうな顔をしている者が多い。
多くの傭兵が居るので帰りに魔物に遭う事も無く、皆が良い気分で村に到着した時にはもう夕方だった。
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0028終了時点
金貨9枚
大銀貨13枚
銀貨15枚
大銅貨20枚
銅貨9枚
鋼の脇差
鋼の十手
鋼の槍
石斧
オーク革の鎧
革と鉄の肘防具
革と鉄の膝防具
革と鉄のブーツ