0281
ソードグリズリーの処理を終えて収納すると、フォルは矛を返してきた。どうやら強力な武器の御蔭で勝ったと思っているらしい。まあ、半分ぐらいは武器の御蔭と言えなくもない。
今度は大脇差で倒すんだそうだ。何だか随分気合いが入ってるな。もしかしたら、フォルも<黒蛇>の連中も、身長が低いというだけで弱いと思っていたのかもしれない。
小さいなら小さいなりに戦い方というものがあるんだが、知らないならそういう風に考えてもしょうがないのか。環境ってやっぱり大事なんだと改めて思ってしまうな。
歩きながら、そんな事を考えていると邪生の反応があった。しかも2頭の反応がある。俺達は急いでそちらの方へと進んで行く。開けた所に、フォレストウルフの邪生が2頭いた。
そんな事より、あの地面の下! こっちの方角に来たのは初めてだけど、こんな所にアダマンタイトがあったのか! とにかく、まずは邪生を安らかにしてやろう。
安らかに送った後、処理してから邪生の心臓を取り出す。同じ様に分けて食べさせると、再び激痛に絶叫し始めた。今回は2頭分だからか、結構長いんだが大丈夫だろうか?。
痛みが治まったようなので【空間把握】で確認してみると、身長は190以上になり、胸はギリギリBカップまで大きくなっていた。もしかしたら、胸はこの辺で終わりかもしれない。
ただ1番の変化は、身長でも胸でもない。それは片目が金色になっている事だ。所謂オッドアイと言うヤツで、元々は両目が緑だったのだが、今は右目が金色に変わっている。
それをフォルに伝えると愕然としていた。なので聞いてみると、伝説の始祖エルフは片目が金色で190近い身長があり、両性具有だったらしい。全部フォルと一緒じゃないか。
こりゃ本格的に誘拐対策をした方が良いな。身長が伸びてるのは、始祖エルフになったからだと押し切ろう。それで何とかなる筈だ。困った時にはゴリ押しすれば、大体解決する。
神様の祝福なんだし、何が起きても不思議じゃないだろう。そう言えば大半の奴は黙る筈だ。そもそも神様の祝福でどうなるかなんて、誰にも分からないんだしな。
「まあ、僕もそう思うけどね。それにしても背が急激に高くなったからか、感覚が合わないんだ。今日はこの辺りで帰りたいんだけど、良いかな?」
「無理をする必要は無いから、帰ろうか。ただし、あそこにあるアダマンタイトを掘り出してからな」
「えっ!? アダマンタイト……?」
俺はアダマンタイトのある場所に歩いて行き、掘る準備をしていると背後から絶叫が聞こえてきた。アダマンタイトに相当驚いたらしい。前と同じく掘り出すと、握り拳4つ分もあった。
これは、フォルの武器を作れと言う事ですかね? ……まあ、いいや。今の所はフォルの武器を作る以外に使い道は無い。強いて言えば防具に被覆するくらいだが、無理に使う必要も無い。
フォルに鉄と混ぜる前のアダマンタイトを見せてやり、帰り道を進む。身体強化で歩く練習をさせながら帰っていると、ソードグリズリーが出てきたので相手をさせる。
「……ふっ!!」
気合い一閃。身長が高くなったからか、身体強化と武器強化を使って一気に接近し首を斬った。血を噴出しながら暴れているが、すぐに死ぬだろう。倒れた以上は起き上がれないしな。
血が噴出して弱ってる上に倒れたらもう駄目だ。後は……っと、死んだか。処理して収納しないとな。フォルは十分に自信がついたのか、今は冷静に処理するのを観察している。
案外【錬金術】や【練成術】を教えても面白いかもしれない。魔力の直接操作の腕は相当高いんだし、魔法よりも教え甲斐がありそうだ。……良しっ、収納したし帰りを急ぐか。
その後、キャンプ地まで魔物が襲ってくる事は無かった。キャンプ地で一旦休憩にし、テーブルの上に冷たい浄水の小樽を置いたら、ソードグリズリーの解体作業を始める。内臓は2匹の胃袋へ。
各部位に分けたら一旦収納し、ソードグリズリーの皮を革にする。革になったらフォルを立たせ、胸に当てた革を【変形】していく。少し余裕を持たせて【変形】し、同じ型の鎧を作っていく。
最後に、前面と背面に爪を被覆したら完成だ。続いて、半篭手、指貫グローブ、剣帯、脛当、ブーツと順番に作っていき、余った革で帽子も作って渡す。まだ、革が余ってるな……。
とりあえず革は置いておき、装備をさせたら村へと帰る。そろそろ夕方かという時間帯だが、こっち方面には傭兵は多くないらしい。2匹が遊んでいるのを見ながら、ゆっくりと歩く。
村の入り口で門番に4度見ぐらいされたが、なんとか本人と認めてもらって村へと入る。そのまま解体所に行き査定を頼むと、ベグさんがやってきた。ジャロムさんは向こうに居る。
「えーっと、ゴブリン6、コボルト8、フォレストベア1、ソードグリズリー2の骨や牙や爪ですか……。んー、金貨1枚に大銀貨1枚に大銅貨42枚です」
「はい! それでお願いします」
「で、こっちが……フォレストウルフの邪生が2頭とソードグリズリーの邪生が1頭ですか……。金貨4枚に大銀貨8枚というところですね」
「それでお願いします」
俺達は受付に行って登録証と木札と売却金を受け取る。フォルはそのまま受け取り、皮袋に入れているようだ。俺は金貨4枚と大銀貨5枚、そして大銅貨300枚で受け取る。
全て受け取ったらホクホク顔のフォルと傭兵ギルドへと向かう。金貨1枚稼ぐのに、売れっ子のフォルでも半季節は掛かるらしい。そりゃ嬉しそうな顔をする筈だ。
傭兵ギルドの扉を開けて中に入り、ミュウさんの所の列に並ぶ。前の1組は直ぐに終わったので、俺とフォルの登録証を出すとジト目で見られた。別に良いだろう、傭兵の勝手だ。
「はぁっ……。登録証をお預かりします……? アレ? フォルディアルデさんですよね? ……なんで背が滅茶苦茶伸びてるんです?」
「ああ、それね。山を歩いてる時、絶叫をあげたんでビックリして見守ってると、背が伸び始めたんだよ。今日そんな事が3回くらいあって、気づいたらこうなってたんだ」
「最後にアルドから片目が金色になったって聞いてね、始祖エルフの方とそっくりの見た目になっちゃったみたいなんだ。鏡が無いから分からないけど、本当ならビックリだよ」
「そ、そうなんですか……。始祖エルフになるというのは、見た目もそっくりになる事なのかもしれませんね……」
「そんな事があったんですか。それにしても、無事でなによりです。傭兵がどう生きるも勝手とはいえ、何かあったら洒落になりませんからね」
「えーっと、フォルディアルデさんはランク2になりますので、新しい登録証をお渡しします」
「ありがとう。それと、僕の事はフォルでいいよ」
登録証を受け取ったら、さっさとギルドを出る。帰りにガルドルさんの所に寄って、鉄を精錬してから大銀貨2枚分の鉄を買って帰る。フォルはガルドルさんの子供と遊んでいた様だ。
2匹の先導という名の、お尻フリフリを見ながら宿へと帰る。宿に入ると、皆が一斉にこっちを見てきた。何と言うか……不機嫌なような、違うような。妙な表情をしている。
まずは大銅貨12枚を支払い、夕食を注文する。皆が居るテーブル席に行き、椅子に座ってから浄水の小樽を出して冷やす。あれ? カウンター席に5人組が居るぞ?。
「まずはお帰り。……涼しい部屋で昼間からお酒飲んでたアタシ達も悪いとは思うけど、一言ぐらいあっても良かったんじゃないかい?」
「ただいま。庭で訓練させてたんだけど、予想以上に優秀だったんだよ。明日やらせるにしても、今日中に装備を整えさせてやりたかったんだ」
「それよりも、ビックリするほど身長が伸びてますが……アレですか?」
「ああ。アレの効果で身長が伸びたうえ、片目は金色になったんだ。何でも始祖エルフと姿がそっくりらしい。本格的に誘拐を警戒しなきゃいけなくなった」
”誘拐”の一言に皆が真剣な表情に変わる。俺達に小言を言ってる場合じゃないと理解したからか、言いたい事は引っ込めた様だ。良かった、良かった。
ただし、5人組……と言うより、エルから妙な視線が飛んできてるが。
▽▽▽▽▽
0281終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨18枚
金貨70枚
大銀貨123枚
銀貨52枚
大銅貨391枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ