0276
<異世界121日目>
浄水の樽を取り出したら、凍る手前まで冷やしてゆっくりと飲む。部屋は涼しいが、色々やってきた疲れなんかが出てるのか、少し体が火照っているみたいだ。
浄化は丹念にしているし、体の中にもやっている。なので病気に感染したとかは無い。単に長く起きているし、ちょっと体が興奮状態なんだろう。落ち着いていれば治まる筈だ。
「おはよう。ダリア、カエデ」
「ニャー」 「グルゥ」
2匹とも今日は少し早く起きてきたな。俺が起きているからかな? 気配が動いていたから気になって起きたのかもしれない。大きな音は立ててないし、静かにしていたからなぁ……。
気配ぐらいしか考えられない。まあ、起きる時間だったんだろう。起こしてしまったのなら、俺が寝る時に一緒に寝ればいい。2匹の前に水皿を出して、冷えた浄水を入れてやる。
相も変わらず美味しそうに水を飲んでいる2匹の横で、俺はゆっくりと浄水を飲みながらボーッとしている。偶にはこんな時間があっても良いなと思う。
「「「「「チュッ! おはよう、皆」」」」」
「おはよう、皆」 「ニャー」 「ガウ」
「今日はどうするんだい? 最近暑いからねぇ、今日はゆっくり休みたいんだけど……」
「そうですね。あの子達も連日の暑さで体力も落ちているかもしれませんし、今日は休みで良いんじゃないですか?」
「そこまで休みを推してこなくても……今日はギルドの訓練場で修行をするか、休みにするか、どっちかにしようと考えてたんだよ」
「……あら? 考えて”た”。つまり修行でも休みでもないと言う事かしら?」
「違う、違う。どっちかにしようと思ってたんだけど、休みに決めたんだよ。……と言うより寝たいんだ。今はまだ眠たくはないけど、いつ眠気がやってくるか分からないしね」
「寝たいって……私達が寝た後に何かあったんだね? その所為でアルドは寝てないって事か。……もしかして、神殿の裏部隊の連中かな? 妙なのが居たし」
「アルメアの予想通りだよ。昨夜<黒蛇>の奴等がララを拉致して、ファレンを誘き出そうとしていたんだ。そこを強襲してララを救出してきたんだが……」
俺は皆に昨日の夜何があったかを、最初から1つずつ説明していく。神官長の部屋の話になった時に、全員の殺気と殺意が膨れ上がったのは仕方がない。普通の者はそうなる。
しかし、宿で殺気と殺意を撒き散らしても迷惑にしかならない。なので、必死に皆を宥めた。その甲斐あって、流石に皆も落ち着いた様だ。やれやれ、女将さんに文句を言われそうだな。
「しかし、そこまで神殿の内部が腐っていたとはな。どうりで浄神様が根切りにしろと仰られる筈だ。根元から断ち切らないと、もう直らないのだろうな」
「帝国の手が入ってるからと言っても、正さなきゃいけない事は、無理矢理にでも正さないといけないんだ。それが出来ないなら、そんな組織は滅んじまえば良いのさ!」
「全くです。自浄能力の無い組織など、犯罪組織とどこが違うのか教えて貰いたいですね。まあ、クズどもは必死に何かを喚くのでしょうが」
「流石に異常としか言えないわね。法に従うと言えば聞こえは良いけれど、何もしないのと変わらないと理解していないのかしら。大神殿長も同じ穴の狢よ」
「私も長く生きているけど、ここまで酷いのを聞いたのは何回も無いよ。多分3回目くらいか……。今の時代でもこんなバカな事をする奴が居るなんてね、信じられない程さ」
「まあ、クズが死んで浄神が小躍りしたくらいだしなぁ……。神様でも怒り心頭に発するような奴だから、死んで当然と言えるだろうな。生かしておいても被害者が増えるだけだ」
皆が口々に怒りをブチ撒けるほどのクズというのも、なかなかに凄いと思う。それよりも、帝国がそこかしこで暗躍してるぞ、この国。
いったい何処まで入り込まれてるんだよ。本当に、いい加減にしてほしい。
帝国は搦め手を使って、内部からこの国を支配するつもりだったんじゃないか? だから戦争をする気が無かったんだろう。そう考えた方が良いと思う。
「アルドの言う通りかもしれない。帝国が狙ってたのは、この国を乗っ取る事だろうさ。そっちの方が被害も出さず、無駄なお金も使わずに済むからね」
「今回は神殿でしたけど、神殿だって国政に口を出す事もありますからね。この国は裏側から支配される寸前だったのかもしれません」
「その流れを変えてしまったのがアルドね。最初は暗殺組織の壊滅だったけれど、そこから始まって気付いたら帝国の思惑は瓦解した……」
「帝国が主様を危険視して、殺害しようとするのも良く分かるね。帝国からすれば、たった1人に策を潰されたんだ。当事者達は激怒しただろうさ」
「アルドからすれば、最初の暗殺組織が欲を掻いたのが悪い。そう言って終わらせるだろう。策士、策に溺れる。その言葉が良く似合うのが、今の帝国だな」
皆も落ち着いたようなので、食堂に行き大銅貨9枚を支払って朝食を注文する。ジャンとミレイアは帰ってきていないので、支払う必要は無い。食べたければ自分達で金を払うだろう。
カウンター席でいつも通り待っていると、リンデが起きてきた。多少寝惚けている様だが、髪は跳ねていない程度には整えてきたらしい。ダナがブラシで整えてやっている。
「おはよ……います」
「おはよう。とりあえずキチンと目覚めるまで、ゆっくりしているといい。今日は休みだから、部屋に帰って寝ても構わないよ」
「おはよう、皆。今日の朝何かあったのかい? 何か恐ろしい感じが皆の部屋からしたんだけど」
「ああ、トーカは気にしなくていいよ。ちょっと胸糞悪い話があって、ソレを聞いたアタシ達が激怒しただけさ」
「激怒って……。そんな嫌な話だったのかい? ああ、うん。聞かない事にするよ」
そんな話をしていると、昨日の男の娘エルフが食堂に入ってきた。昨日の男の娘エルフはこちらに来て頭を下げた後、挨拶を始めた。名前は、フォルディアルデと言うらしい。
皆には当然伝えてあるので、コイツが始祖エルフになった事も知っている。おそらく先ほど言っていた名前は、森神から与えられた名前なんだろう。エルフっぽい名前じゃないし。
「アレ? アンタは確か……。そうだ! 小さい方のエルフの子じゃないか。昨日、ウチの部屋の一室で仕事をしてたんじゃなかったのかい?」
「そうなんですが……。ちょっと訳アリで、辞める事になりました。えーっと、宜しくお願いします」
「ああ、うん。聞いてるけども、俺達は傭兵だから狩りに連れていくぞ? 本当にいいのか? 生きる道は他にも沢山あると思うが……」
「はい。傭兵になった事はありませんが、狩りの手伝いなんかはした事があります。なので、戦う事はそれなりに出来ますし、浄化魔法も少しだけ使えます」
「まあ、しょうがないんじゃないかい? 頼まれたら断れないし、断ると行くところが無くなるだろうしね。流石にそれは可哀想だ。……ああ、アタシ達はアンタの身の上は聞いてるよ」
「そうだな。フォルと呼ばせてもらうが、これから宜しくな。とりあえず空いてる席に座るといい」
大銅貨をもう1枚支払い、フォルの朝食も注文する。……さて、フォルの身長は145センチほどだ。武具に関しては、今までで最小の物を作る事になるな。何か考えておくか。
朝食を食べたら部屋へと戻る。どうやらリンデも部屋に戻って寝るらしい。都合が良いので、今の内に話し合いをしておこう。フォルを部屋へと連れて行く。
部屋の椅子に座り浄水を飲みながら話しを始める。どうやら昨日の隊長っぽい奴が、フォルの<黒蛇>退団を伝えに行くらしい。フォルは夢の中で神官長が殺されたのは聞いたそうだ。
昨日の隊長っぽい奴にもそれを伝え、本当に死んでいたら現在のボスに退団を伝えてほしいと送り出してから来たらしい。こっちに関わってこないなら、何でもいいさ。
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0276終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨18枚
金貨67枚
大銀貨120枚
銀貨53枚
大銅貨139枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ