0273
結局、どうしたら良いのか分からず困っているようなので、妙な連中が来たら迎撃すれば良いとアドバイスしておく。犯罪を仕事にするような連中に、容赦する必要なんぞ欠片も無い。
ファレンを狙っているのは先ほどの奴1人だけで、どうやら近くにはもう居ないようだ。村の中には居るかもしれないが、そこを心配したらキリが無い。まずは村に戻って反応を見てみるか。
5人組と一緒に村に帰り、解体所に行く。査定を頼むと、いつも通りベグさんとジャロムさんが来た。アイテムバッグからどんどんと獲物を取り出して地面に並べていく。
「これはまた……多いですね。その分ウチも儲かるとはいえ、なかなかに大変ですよコレは」
「そうだな。とはいえ、山の方の間引きをしてくれる者は多くはない。仕事はキッチリと熟さねばな」
「すまないねぇ……。とはいえ、今日1日の獲物がコレである以上は、どうしようもないんだけどね」
「こちらは、オーク9、ダッシュボーア3、ウィンドデイアー3ですね。全部で大銀貨45枚と銀貨21枚です」
「こちらは、ゴブリン10、コボルト7、レッドパンサー、オークとイエローボアとスマッシュボーアとウィンドディアーとソードグリズリーの邪生だ。全部で金貨12枚と大銀貨12枚に大銅貨72枚だ」
「それで頼むよ」
3人は大銀貨15枚と銀貨7枚ずつに分けたらしいが、こっちは金貨2枚と大銀貨2枚と大銅貨12枚に分けた。登録証と売却金と木札を受け取り、傭兵ギルドへと歩いて行く。
5人組の売却も終わっていたので、護衛がてら一緒に行ってやる。ギルドに着いたので中に入り、ミュウさんの所の列に並ぶ。少し待つと順番が回ってきたので、木札と登録証を出す。
「またですか? 新人にワインドディアーと戦わせるなんて……。もしもの事もあるので気をつけて下さい!」
「問題ないよ、ミュウ。この3人は自力で倒してるんだ。特にリンデは1対1で倒してる以上、文句のつけようは無い筈さ」
「勝てる相手と戦い、獲物を狩ってくる。傭兵としては普通の事ですし、特に咎められることではありませんよ」
「普通の傭兵と同じ事をしていたら、普通の傭兵にしかならないんだ。俺は3人を普通の傭兵にする気は無い。心配なのは分かるが、教育方法に口を出すのは筋違いだよ」
ここらで苦言を呈しておく必要はあるだろう。受付嬢の思う通りの傭兵になる必要なんて無い。そもそも傭兵は自由業であり、誰かに縛られる職業じゃないんだ。
それに、人によって上手くなる方法や、強くなる方法なんて違っていて当然で、一つの方法だけが全てじゃない。色んな人がいるように、色んな方法があって当たり前なんだ。
「ミュウ。才能のある奴は、普通の奴と同じ事をさせちゃ駄目なんだよ。それぞれの奴に合った方法があるんだ。普通の奴を育てる方法を使ったら、普通の奴になってしまうだろ?」
「折角の才能を潰す事になってしまうのさ。才能のある者には、凡人の教育をしはいけないんだ。それは才能を殺す事になってしまい、結果として不幸にしてしまう」
「10まで伸びる才能の持ち主を、3や4で腐らせてしまう事になるのよ。そんな事は誰の為にもならないわ。余計なお節介もあるのだと覚えておいた方が良いわね」
「教育というのは本当に大事だ。アルドも言っていたが、最初が間違っていたら、その後はずっと間違えたままになってしまう。3人はまだ新人だ、間違えさせる訳にはいかない」
「………」
「すみません、皆さん。前にも言っておいたんですが、どうにも納得出来ないらしく……。傭兵がどうするかは、傭兵の自由だと決められているんですけどね……」
「ヴェルの所為じゃないけどね。傭兵は受付嬢の命令を聞かなきゃいけない訳じゃないんだよ。……ミュウ、アンタいったい何様のつもりだい?」
「!? わ、私はそんなつもりじゃ……」
「さっきメルが言っていたでしょう? 貴女がやっているのは余計なお節介なんです。誰かの才能を腐らせる……貴女はその責任がとれるのですか?」
ミュウさんは俯いて黙ってしまった。才能が開花するかどうかは、その傭兵の一生を左右する。それぐらい重い事だ。その責任なんて誰もとれないだろう。
「まあ、反省してもらうとして……受付の業務はどうなってる? 強制依頼も達成してきたし、3人の狩りの結果も記録してもらいたいんだが?」
「はい、もう少しお待ち下さい。今は新人の方々の記録をしています……終わりました。それでは登録証をお返しします」
皆の登録証を受け取ると、強制依頼を達成した事が記録されていた。当たり前の事とはいえ、何かされている可能性は無い訳じゃない。ま、問題は無かったんで、さっさとギルドを出よう。
ジャンは実家に行って、今まで貯めていたお金を渡してくるらしい。その際に、家族にミレイアを紹介するそうだ。冷やかそうかと思ったが、真剣な2人を見て止めた。
やったら、永遠に恨まれ続けるかもしれない。そんな雰囲気を感じる。ミレイアの気合いを考えれば恨まれるのは当然か。ミレイアに力と気合いを抜くように言っておく。
気を張っている相手なんて接し辛いものだ。ミレイアは、今そういう雰囲気を出しているぞ。そうアドバイスをした後、「頑張れよ!」と言って送り出した。元子爵家令嬢だから大丈夫だろう。
俺は食料店に行き、小麦粉を銀貨1枚分買って帰る。小麦粉は【水魔法】で凍らせた後、アイテムバッグに入れておく。宿へと戻って大銅貨9枚を支払い夕食を注文する。2人は帰ってくるんだろうか?。
その後、部屋に戻って装備を外し、送風機と冷房に魔石をセットして起動する。2匹は直ぐに送風機の前に行き涼みはじめる。俺も椅子に座り、浄水の樽を出して凍る寸前まで冷やす。
キンキンに冷えた浄水を飲みながら、俺もゆっくりと涼む。暑さが少しマシになったので、一声掛けてから食堂へ行く。食堂には既にリンデがいて、夕食を食べていた。
俺達もカウンター席に座ると、直ぐに夕食が来たので食べ始める。皆で雑談しながら食事をし、終わってもジャンとミレイアは帰ってこなかった。今日は実家に彼女を泊めるのか……。
ジャンも避けられないとはいえ、大変だ。そんな話をしながら部屋へと戻る。部屋はそんなに冷えていなかったので、冷房の中の水を凍る寸前まで冷やしておいた。
皆は酒をチビチビ飲んだり、ジ○ンガで遊んだりしながらゆっくりと過ごす。それなりに部屋が冷えて涼しくなってきたので、皆も随分と気が楽になった様だ。
「ファレンを狙った神殿の暗部、確か<黒蛇>って言ったかねぇ……。シュラやアルメアは聞いた事があるかい? アタシは聞いた事が無いんだよ」
「私もありませんよ。本当に闇に潜っていた組織なのか、単にそう言い張っているだけなのか。どちらでもいいですし、興味もありませんね」
「私も聞いた事は無いよ。我々の組織は何百年とか、ハッキリ言えば聞き飽きた言葉さ。私達不老長寿からすれば、”だからどうした”で終わる話だからね」
「そういえば、前の王国の時代からあるって言っていたけれど、正直に言って怪しいわね。神殿の中に在るなら好き勝手に言えてしまうもの」
「確かにそうだな。神殿の中なんて、神殿の者しか調べられない。その<黒蛇>の連中だって、本当かどうかなど知らないだろう。由緒正しい怪しさだな」
「神殿の中に侵入する事は容易いんだが、俺達が確認したのは1人だけだしな。もっと多くの奴が狙ってるというなら動いてもいいんだが……」
奴等が本当に裏の組織なのか、それとも秘密結社ゴッコをしているだけの痛々しい連中なのかは、見極める必要があるだろう。5人組の寝泊りしている部屋を監視しておくか。
押し込みをしたりはしないだろうが、万が一という事も無いとは言い切れない。5人組に死んでほしいとまでは思わない以上、助けないと寝覚めが悪い。
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0273終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨18枚
金貨67枚
大銀貨120枚
銀貨53枚
大銅貨149枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ