0268
俺からすると大した暑さでもない。体感で28度ぐらいの気温だ。夕方なのにあまり下がってないが、日中も32度くらいだった。これが今年1番の暑さとか、幾らなんでも温過ぎる。
この世界の、この国ではこんなものなんだろう。でも、茹だるような灼熱のサウナ地獄である日本の夏を知っている身としては、何とも言えなくなってくるな。
「水浴びをしてから寝るとか、何かしら涼しくなる事をした方が良いね。眠れないと明日が大変だから、今から色々やっておくべきだよ」
「やっぱり、そうだよねぇ……。水浴びはするとして、後はどうしよう? 窓を開けても風が入ってこないと涼しくならないし……」
皆も流石に余計な事は言わないらしい。送風機はあるが、あれには魔銅を使っている。魔道具は石や木でも作れなくはないが、魔力のロスが激しくなる。それで魔銅を使ったんだ。
本当なら魔銀を使いたかったんだが、無い以上は仕方がない。魔物の素材でも作れるが、それなりに強い魔物か邪生でないと魔道具の良い素材にはならないからなぁ。
とはいえ、強い魔物の素材は武具に使うべきだし、未だ新人3人の装備は揃ったとは言い辛い。特にジャン。ミレイアとリンデはソードグリズリーの素材で作ったが、ジャンはフォレストベアやダッシュボーアだ。
流石にジャンの防具の素材もソードグリズリーにしておきたい。アーマーベアの方が優秀な防具にはなるが、その為にダンジョンか吸血鬼の里に行くのもなぁ……。面倒だし、何か違うんだよな。
食事も終わったし、そろそろ部屋に戻るか。それぞれがバラバラになって部屋に戻って行く……? リンデがついてくるんだが、何かあったのか? 深刻そうじゃないから放っとこう。
「押し掛けてすみません。一人で飲んでても味気なかったので、皆さんと一緒に飲みたかったんです」
リンデがついてきたのは、酒が飲みたかったからか。まあ、好きにしなさい。1人暮らしを始めたばかりのようなものだから、寂しいんだろう。急に周りから人が居なくなったんだしな。
今まではどこに行くにしても、護衛だなんだと他人が居るのが当たり前だったんだ。そういう常識が突然変わったからな。自分で決めたとはいえ、いきなり慣れるのは流石に無理だ。
誰だってそうだが、いきなり環境が変われば慣れるまでに時間が掛かる。その事に王族かどうかは関係が無い。新しい環境に慣れるまでは注意して見てやる必要がある。
……ミレイア? アイツはそもそも掃き溜めとはいえ、騎士団の奴だ。そのうえ新しい環境に溺れてる。アレは放っといても何の問題も無い。何かあってもジャンが何とかするだろう。
俺は2匹の相手をしながら、ディルに【暗視】のコツを教える。ディルも随分慣れてきたようで、【暗視】はかなり使えるようになっている。次に教えるのは【天耳】だろうか?。
【天耳】は遠くの微かな音さえ聞こえるようになる技だ。当然、そこまで出来るようになるには長い鍛錬が必要になる。1日1日少しずつ努力していけば、やがて使い熟せるようになるだろう。
そう言っているのだが、飲兵衛には聞こえないみたいだ。スルーされたが、まぁしょうがない。ずっと修行では飽きてくるのは当然だからな。飲ませてやろう、日中は頑張ってたし。
そもそもディルだって、修行と言うより暇潰しをやってるようなものだからな。修行で暇が潰せるなら、それも良いだろう。浄化してやりながら、飲兵衛どもを見て心からそう思った。
才能があってセンスもあって、暇潰しで修行をする。どんな状況でも、どんな環境でも、強くなる奴ってこういう奴なんだと思う。努力の才能まで持ってるって反則過ぎない?。
「……アレはどうするんだ? 酔って良い気分になり涼しいから寝てしまったんだろうが、リンデが居る以上は無しだな……」
「別にいいんじゃないか? 酒飲んで寝た奴等が悪いって事で。【止音】を使って音を漏らさないようにすれば、問題ないと思う」
2匹も涼しくて眠ってしまったようなので、ディルを【房中術】と【喜昇】を使って撃沈させる。ゆっくりと浄化しながら綺麗にしていき、終わったので寝よう。
それじゃあ、おやすみなさい。
<異世界120日目>
おはようございます。やっと火の季節も折り返しです。それで、昨日女将さんが暑いと言ってたのか。今日から1年で1番暑い時期に入っていく訳だ。俺が下界に来て120日経ったんだなぁ。
まだ120日と言うべきか、もう120日と言うべきか……。まあ、感慨に耽るのは早過ぎるな。まだ半年も経っていないんだ。そろそろ起きて、気合い入れるか!。
椅子に座ってキンキンに冷えた浄水を作って飲む。悶絶しそうな程に冷たくしてしまったが、眠気は完全にブッ飛んだ。良いか悪いかは別にして、気合いが入ったのは間違いない。
「おはよう。ダリア、カエデ」
「ニャー」 「ガゥ」
2匹の水皿に冷たい浄水を入れてやると、直ぐに美味しそうに飲み始めた。室温は体感で22度くらいか? 冷え方が一定じゃないのかもしれないな。とはいえ、十分に涼しい。
ウチは女性が多いから、あまり冷やすと体に良くない。だからこそ、これ以上冷えるようにする気はないが、冷えるようにする事は出来る。ただ、魔石を含めてコストがなぁ……。
「「「「「チュッ! おはよう、皆」」」」」
「おはよう、皆」 「ニャ!」 「ガウッ!」
「あの子はまだ寝てるみたいだね。それにしても、またお酒で失敗したよ。ディルの顔を見るとスッキリしてるみたいだから、昨日はお酒を飲まないディルだけかぁ……」
「む!? それは卑怯なのではありませんか? 昨日の分も、朝から私達を抱くべきだと思います!」
「言いたい事はよく分かるけども……流石にその言い分は通らないと思うわ。そもそも泥酔するまで飲まなければ良かったと言われれば、返す言葉が無いのは私達の方よ?」
「それは……そうなんですけど……」
「流石にシュライアが言ってる事は自分勝手だよ? 泥酔して寝てしまった私達が悪いのだし、文句は言えない立場さ」
流石に自分勝手な事を言っている自覚はあるのか、シュラは矛を収めた。……まあ、アルメアが言った事が全てだ。したかったなら、勝手に寝なきゃよかったというだけだからな。分かりやすい。
浄水の樽を出して小樽に移し変え、焙煎した麦を入れた後【熟成】を少し使う。【冷却】でキンキンに冷やして飲んでみると、上手く麦茶の味になっていた。皆も好きに飲んでいく。
冷たい麦茶が美味しかったのか、シュラは機嫌が良くなっていた。涼しい部屋と冷たい麦茶、それだけ見ると日本と変わらないなと思ってしまう。不思議と望郷の念が湧かないが。
そうやってダラダラ過ごしているとリンデが起きてきた。ただし毛が跳ねまくっていて大変な事になっているが……。ダナはブラシを出してリンデの髪を整えてやりに行った。
「おあよ……います」
「おはよう。もう1度浄化してやるから、麦茶でも飲んでゆっくり目を覚ませばいいさ。コップに入れてやるから、一気にぐいっと飲むと良い」
皆は俺の狙いを理解したのか、ニヤニヤしながら見ている。まだ寝惚けているのか、俺の言う通りにぐいっと飲んでしまい絶叫を響かせた。キンキンに冷えてるから、当然の結果だな。
「うぅ……。朝から酷い目に遭いました。まさかあんなに冷たいなんて……普通は想像すらしませんよ。あんなに冷たい飲み物は生まれて初めてです」
「そうなのか? 確かにキンキンに冷やしているけど、王城だと誰かが【水魔法】で冷やしてくれるんじゃないのか?」
「そういった物は、お客様が来られた時だけです。暑い時期はお客様が来てくれないかと、よく思っていました。【水魔法】の中でも冷やす魔法は特に難しいですから……」
「何か勘違いしてる様だが、冷却系は別に難しくはないぞ? 他の【水魔法】の系統よりは、多少難しいというぐらいでしかない。魔力の直接操作が出来るならな」
「魔力と闘気の直接操作って、本当にどこにでも出てくるね。アルドが基本だと言う筈だよ。その基本が出来てないから、冷却系は難しいという事になってしまうんだろうさ」
何でもそうだが、基本が出来なきゃ応用に進んじゃいけない。
▽▽▽▽▽
0268終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨18枚
金貨65枚
大銀貨118枚
銀貨54枚
大銅貨157枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ