0267
ジャンとミレイアは、世の中にあそこまでのクズが居るとは知らなかった様だ。リンデはもっと汚いものを見てきているからか、そこまで表情が動く事は無かった。
ディルは気にしていないし、俺達も気にしていない。むしろ、傭兵ギルドが動いていた事に安堵した。あんな事があったにも関わらず動かない組織なんて信用できないからな。
暗殺者として使いながら無責任に放置するなら、都合よく利用するだけだと思っていたが、ギリギリ及第点というところか。それでも遅すぎるとは思う。全く、内偵ぐらいしろよ。
「何ですかソレは!? そんな事が許されるんですか!? 女性にそんな毒を使わせるなんて、僕は許せません!!」
「ああ、全くもってジャンの言う通りだ。幾らなんでも許される事じゃないし、許してはいけない事だ!」
「かつては王族でも似た様な事はあったと聞いた事があります。女性が閨で暗殺する手段の1つとして、かつてはあったそうです。我が国で使われた事は1度も無いそうですが」
「まあ、色々納得出来ない事はあるだろうが、当事者ではない以上は言って良い事と悪い事があるからな。文句を言ったり復讐して良いのは被害者だけだぞ」
とにかくジャンとミレイアを抑えておく。2人とも幾分か冷静になったのか話を聞くようになったか……。気持ちは分かるが、ここで喚いても何も変わらないんだから落ち着け。
村の入り口で登録証を見せて村の中に入る。真っ直ぐ解体所へ行き査定を頼むと、ベグさんとジャロムさんがやって来た。俺は、アイテムバッグから獲物を出して並べていく。
「こちらは、ゴブリン4、コボルト3、フォレストウルフ4、オーク3、フォレストベア3です」
「こっちはレッドパンサーの邪生の脳と肉と骨と牙、フォレストベアの邪生、フォレストウルフの邪生だ。何かを作るのに革を使った様だな」
「レッドパンサーは帽子作りに使ったから仕方がないんだよ。他は問題ないだろう?」
「こちらは全て纏めて大銀貨3枚と銀貨10枚に大銅貨34枚です」
「ふむ。何の問題も無いな。こっちは金貨3枚と大銀貨15枚だな」
「それでお願いします」
その後受付へと行き、新人3人は大銀貨3枚と銀貨9枚に大銅貨54枚で受け取っていた。邪生に関しては、倒したのは俺なので全額俺でいいそうだ。まぁ、ありがたく受け取っておこう。
皆だって何もやっていない訳じゃなく、牽制したり威圧したりと活躍してる。ジャン達が戦ってる最中も微妙にサポートはしてるんだよな。だから受け取っても良いと思うんだが……。
3人の分配は終わったようなので、傭兵ギルドへと行く。俺達はともかく、3人は未だランク1だ。狩りを終えたらギルドに報告して、ランクを上げて貰わないといけない。
まあ、ランク1だから今回の狩りの結果で上がるとは思う。傭兵ギルドの扉を開けて中に入ると、多くの奴がこっちを見てきたが直ぐに目線を外した。俺達は猛獣じゃないぞ?。
ゆっくりとミュウさんの所の列に並んで待つ。前に2組居るだけなので、そんなに時間も掛からず順番が回ってくるだろう。新人3人を俺達の前に出して待っていると、順番が来た。
「はい、3人の登録証だけで良いんですね? 分かりました。それではお預かりしますので、少々お待ち下さい」
「……ランクは上がるかな? まだランク1だし、今日倒した魔物の事を考えるとランク2に上がると思うんだけど……」
「私は傭兵ギルドの事は詳しくないのだが、確か傭兵ギルドではランクよりも実力を尊ぶと聞いた事がある。ランクに拘る必要はあまりないんじゃないか?」
「私もそう聞きましたが、それってランク6より上の事ではありませんでしたか? 貴族と関わるのが嫌で、ランクを6以上に上げない実力者も多く居ると聞きました」
「ランク6……。まだまだ先だから、今は頑張ってランクを上げていく時期なんだろうね。ランク6になるのに何年ぐらい掛かるんだろう?」
「お前達なら長くても1年あればランク6までいくさ。俺がランク1から6になるのに1季節掛かってないからな。修行しながら狩りをしたって1年は掛からない」
「それは……。いや、それは幾らなんでも早過ぎないか? ランク1つ上げるのにどれだけ掛かるかは知らないが、1年と言うのが明らかに早い事は分かる」
「とはいえ、アルドさんの1季節よりは遅いのですから、別に良いのでは? それに、普通の傭兵は生活が成り立つようになるまでが長いのではありませんか?」
「そうだよ。普通の傭兵が生活を安定させるのに、大体1年ぐらい掛かる。それまではゴブリンを狩ったり、依頼をこなしたり。生活の為に色々するのが新人さ」
「それが終わって、狩りだけで生活していけるようになって1人前なのです。依頼をこなした事は記録に残りますが、傭兵は狩りの実力が全てですから頑張りなさい」
「実力が無ければ拠点としている村や町を守れないからよ。傭兵は元々、村や町に雇われて守る役目をしていたの。その頃の名残で、実力の無い者は信用もされないわ」
「お待たせしましたー。ジャンさん、ミレイアさん、リンデリアさんはランク2になりましたので、新しい登録証をお渡しします」
「「「お~~……」」」
新しいって言ったってランク2と書かれてるだけだ。とはいえ、自分の努力が認められた気分になるんだろうなー。そう考えると、ランクって本当に上手く出来てると思う。
荒くれ者の承認欲求を満たしてやっていると考えれば、傭兵になろうとする奴は居なくならないだろう。ただの力自慢や暴力バカを上手く使う為のシステムとして出来上がってる。
更に底辺からでも成り上がれるんだから、傭兵ギルドに加入する奴はいつの時代でも幾らでも居る。魔物がこの世に居る限り、おそらく傭兵という職業は無くならないだろう。
「新人のランク1をソードグリズリーと戦わせるって、いったいどういう事ですか? こんな危険な事、許される事じゃありませんよ!」
「最大限の安全は担保してるよ。それにいつかは戦う相手だ、それが遅いか早いかだけでしかない。そもそも6人がいつでもサポートに入れる状態で戦わせてるんだから、問題は無いさ」
「それはそうかもしれませんが、いつ死ぬかなんて誰にも分からないんですから、気を付けて下さい!」
ミュウさんから小言を頂戴したが、気にもせずギルドを出た。そもそも俺達には俺達のやり方がある。何より今までと同じやり方では、同じ様な実力の奴にしかならない。
俺は3人を、その程度の実力にするつもりはないんだ。どこまでランクを上げるかは3人の好きにすれば良いが、俺達の下に居る間はランク6で止めさせる。上げても鬱陶しいだけだ。
1人前だと俺が認めたら、後は好きに生きていけば良い。ただし、俺の下に居る間は制限させてもらう。まあ、制限と言ってもランクは6で止めるとか、勝手に依頼は受けないぐらいだ。
ゆっくりと宿に帰り、大銅貨11枚を支払って夕食を注文したら部屋に戻る。装備を外した後、送風機や冷房に魔石を入れて起動しておく。早速2匹が送風機の前に陣取った。
冷たい浄水を入れた水皿を2匹の前に置いてやり、こっちは小樽をテーブルに置いておく。置いておけば勝手に飲むだろう。多少涼しくなって、暑さがマシになったら食堂へ下りた。
「おかえり、皆。今日は随分暑いね。今年1番の暑さかもしれないよ。寝苦しいだろうから、今から憂鬱さ」
「ただいま。確かに今日は暑いね。夕方になっても涼しくならないって事は、夜も暑いって事だから憂鬱になる気持ちも分かるよ。アタシも暑いのは苦手だからねぇ……」
「ただいま。火の季節には何日か、夜も暑い日がありますからね。毎年の事とはいえ、嫌にもなります。夜が暑いと体力がなかなか回復しなくて困るんですよ、本当に」
この程度で暑いと言う上に、熱帯夜が何日かだけ……? 日本人からしたらイージーモード過ぎる。
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0267終了時点
大白金貨1枚
白金貨2枚
大金貨18枚
金貨65枚
大銀貨118枚
銀貨54枚
大銅貨157枚
銅貨2枚
ヒヒイロカネの矛
ヒヒイロカネの小太刀
剣熊の爪のサバイバルナイフ
アダマンタイトの十手
二角の角の戦斧
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
剣熊の骨の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
強打猪の革のジャケット
強打猪の革のズボン
真っ黒なブーツ
大型のアイテムバッグ




